利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.07.04】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23UT1040

利用課題名 / Title

ハイスループットでのがん細胞の電気物性評価システムの開発

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

MEMS/NEMSデバイス/ MEMS/NEMS device,バイオセンサ/ Biosensor,スパッタリング/ Sputtering,光学顕微鏡/ Optical microscope,電子線リソグラフィ/ EB lithography,膜加工・エッチング/ Film processing/etching


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

元祐 昌廣

所属名 / Affiliation

東京理科大学工学部機械工学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-716:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2024)
UT-510:自動フォトマスクエッチング装置AEP-3000S
UT-501:卓上アッシング装置
UT-500:高速大面積電子線描画装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

誘電率や導電率などの細胞の電気物性には個々の細胞の生理的活動,膜状態,内部イオンなどの疾患に関する情報が含まれるため,これらを詳しく調べることで病気の治療や創薬に役立てることができる,特にがん細胞では,がんの種類や薬剤耐性の状態を知ることができ,高度ながん診断やモニタリングのために欠かせない情報であるといえる.本研究では,図1に示す非接触かつラベルフリーで個々の細胞の電気物性の計測が可能なelectrorotationと呼ばれる手法における細胞操作作業を自動化する機構を新たに開発し,測定スループットを大幅に向上させた.図2に示すように、原理検証を数値シミュレーションで行い,実際に簡単・迅速に多数の細胞の電気特性を同時測定できるデバイスの開発を行った.本研究で作製したデバイスは,上層と下層に幅30μmのくし形電極が配置される三層構造であり,各電極に5V,200kHzの同位相の交流信号と,1.5V, 50kHz〜1MHzの位相をシフトさせた交流信号を合成した電圧を電極に印加することで,導入した細胞に誘電泳動力が作用して流路内の分析サイトに細胞が保持されつつ計測を行うことができるような機構を開発した.そして,移動中の細胞の回転運動を画像処理することにより個々の細胞の誘電率や導電率を導出することができる.

実験 / Experimental

実験で用いるデバイスは,東京大学ARIM微細加工部門の武田先端知ビルクリーンルームで所有の高速大面積電子線描画装置および関連リソグラフィー装置で作製したフォトマスクを用いて,LL式高密度汎用スパッタリング装置で成膜した金属薄膜をパターにニングすることで製作した.実験では,計測装置である光学顕微鏡とカメラの撮影条件に合わせて最適化するように,シリンジポンプの流量を7.5μL/hに設定した.測定対象細胞はHeLa細胞とした.細胞のトラッキング,画像解析は自作の画像処理アルゴリズムを適用した.

結果と考察 / Results and Discussion

実験では,流れありとなしの場合の両方について測定を実施した.測定時の画像を図3に示す.図3のように,同一画像内の多数の細胞を同時に解析することができ,その前処理として必要な測定値への操作は一切必要なく,自動的に細胞が配置される.結果として,どちらの測定においても,従来法と同等の測定値が得られた.これは,本研究で開発したデバイスの妥当性を示す結果が得られたと考えることができ,さらに,従来法と比較して測定スループットは100-200倍に向上している.本デバイスを用いてラベルフリーでの細胞電気物性評価の評価対象となる細胞数を大幅に増加させることできることが示され,交流電場を用いた誘電スペクトル評価の統計解析が実現される可能性を示唆することができた.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 ハイスループットの細胞アッセイデバイスの概念図



図2 電圧印加時の細胞周りの電場に関する数値シミュレーション



図3 多数細胞の同時測定の様子.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Kazuma Yoda, Continuous-flow electrorotation (cROT): improved throughput characterization for dielectric properties of cancer cells, Lab on a Chip, 23, 4986-4996(2023).
    DOI: 10.1039/D3LC00301A
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 関口 大裕, 依田 和真, 市川 賀康, 元祐 昌廣, 流れの中でのがん細胞の電気物性評価のためのROT (electrorotation) デバイスの開発, 日本機械学会2023年度年次大会 (2023/9/3-6, 東京).
  2. 関口 大裕, 依田 和真, 市川 賀康, 元祐 昌廣, がん細胞の電気物性評価のための細胞回転挙動の可視化計測, 第51回可視化情報シンポジウム (2023/8/8-10, 小樽).
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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