【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22MS5007
利用課題名 / Title
分子と対称性を用いた新奇機能性の創出
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
キラル構造体、自己組織化、超伝導
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
佐藤 拓朗
所属名 / Affiliation
自然科学研究機構分子科学研究所協奏分子システム研究センター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
鍋井 庸次,中島 良太,相澤 洋紀,Malatong Ruttapol,Urban Adrian Joe,山本 浩史
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
MS-202:低真空分析走査電子顕微鏡
MS-210:オペランド多目的X線回析
MS-219:SQUID(MPMS-XL7)
MS-228:紫外・可視・近赤外分光光度計
MS-230:円二色性分散
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本課題は、対称性と結合した新奇な伝導現象を検出し、そのミクロな起源の解明を目指したものである。特に、近年注目を集めているキラルな対称性に注目し、キラル構造体を電子が通過した際に生じる自発的な巨大スピン偏極現象(CISS効果)の実験的な観測に取り組んだ。CISS効果を高効率に検出するためには試料条件の最適化が必須であり、利用申請した装置を用いて、作成したキラル有機結晶や自己組織化キラル単分子膜の構造や膜質の評価を行った。
実験 / Experimental
具体的な対象物は、キラルな空間群に属する有機半導体・有機伝導体や、電極基板上に形成した自己組織化キラル単分子膜や、Physical Vapor Deposition(PVD)法で作成したらせん超分子など、多岐に渡る。CISS効果は主に伝導測定によって検証するが、その測定の前段階として、作成した試料が所望の構造を持ち、特に単一なキラリティーを有しているかどうかを確認することが重要である。X線による波数空間情報、SEMによる実空間情報、光学測定による励起や吸収の情報などを通じて、対象物の基礎物性を詳細に確認した。
結果と考察 / Results and Discussion
キラルな空間群に属する有機半導体・有機伝導体として、ペリレンジイミド(PDI)分子結晶、k-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2に着目し、自己組織化キラル単分子膜としては、らせん構造を持つペプチドや、キラリティの外部スイッチングが可能な分子モーターを用いた。これらの系を対象に、X線の単結晶評価や反射率測定から、バルクとしての構造解析や膜質の解析を行い、予想通りの構造や膜厚が得られたことを確認した。加えて、CD測定からは、単一のキラリティーを形成していることを効率的に判断することができた。他にも、CISS効果の測定で使用する磁性電極に関して、SQUIDで事前に磁場応答を明らかにしたことで、その後の伝導度測定結果の解釈がスムーズに進展した。現在も引き続き実験が進行しているが、特にk-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2に関しては、低温で超伝導とキラリティーが結合した巨大CISS効果を観測することに成功し、下記論文リスト[1]として発表した。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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R. Nakajima, Giant spin polarization and a pair of antiparallel spins in a chiral superconductor, Nature, 613, 479-484(2023).
DOI: 10.1038/s41586-022-05589-x
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- [1] 相澤 洋紀, 佐藤 拓朗, 米倉 功治, 眞木-米倉 沙織, 濱口 祐, 高場 圭章, 湊 丈俊, 山本 浩史, "PVD法で成長するCo(Ⅱ)フタロシアニン螺旋超分子の磁性基板を用いたキラル分割",第70回応用物理学会春季学術講演会(上智大学四谷キャンパス),2023年3月17日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件