【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.23】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TT0024
利用課題名 / Title
ナノカーボン材料の成長メカニズムに関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
豊田工業大学 / Toyota Tech.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者)/Internal Use (by ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
Langmuir-Blodgett法,LB法,Tip Enhanced Raman Spectroscopy,TERS,Graphene Oxide,GO,電子顕微鏡/Electron microscopy,走査プローブ顕微鏡/Scanning probe microscopy,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大塚 丞
所属名 / Affiliation
豊田工業大学工学部先端工学基礎学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TT-001:スパッタ(金属、絶縁体)蒸着装置
TT-009:シリコン専用の各種熱処理(酸化、拡散)装置一式
TT-013:ダイシング装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
課題
一般に作製されるGOシートのサイズは小さく、大面積の使途作製は困難グラフェンやGOは欠陥のサイズ・分布により電子移動度や熱伝導度などの特性が変化するため、特性制御・デバイス応用には欠陥のナノオーダーでの評価が必要
目的
LB法(Langmuir-Blodgett法)によりGO(Graphene Oxide)単層シートを作製し、TERS(Tip Enhamced Raman Spectroscopy)を用いて欠陥の分布を観察
実験 / Experimental
LB法によるGO単層膜作製(Fig. 1)
①1mg/mlのGO溶液を調整し、TBAOHを入れたものと入れていないものを作製[1]
②GOを剥離するために超音波処理、フレークサイズを均一化するために遠心分離、GOが水面上に迅速に広がるようにするためにメタノールを添加した。
③作製したGO分散液を100μl水面に滴下し、LB法(バリヤー圧縮速度:20 mm/min、基板引き上げ速度:2 mm/min)でSiO2/Si基板とそれにAuを蒸着した基板にGO単層膜を作製
④層数判定のためにSiO2/Si面をAFM測定、Au面をTERS測定
結果と考察 / Results and Discussion
TBAOHによるGOの剥離(Fig. 2)
GO溶液にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TetrabutylammoniumHydroxide:TBAOH)溶液を混合することでTBAOHが溶液中に存在する多層GOの層間に侵入し、GOシートの剥離を助けるとともにTBA+イオンのN原子がGOの有するOH基と相互作用することによりGOを被覆する。これによりGOシートは正の電荷を帯びるため、シート同士のクーロン相互作用によりナノシート底面の水素結合を阻害することでシート同士の重なりを防ぐことができる。実際にTBAOHを混合することで単層膜が形成されていることがわかる。
GOのLB膜作製
GO分散液を水面上に滴下し、バリアを圧縮して表面圧を測定した。分子占有面s系が100cm2になった時に急激に表面圧が上昇し、水面上に浮かんだGO分子が凝集し膜を作る様子が観察できた(Fig. 3)。表面圧を高くすることで分子の自己組織化が進み、GOシートが作製された。
AFM測定
作製したGOの層数を判定するためにAFM測定をした。AFM像(Fig. 4a)からエッジ部分が重なっているものの、ラインプロンファイル(Fig. 4b)からGO膜の厚さは約1nmであることがわかる。GOの厚さは1nm程度であるので、得られた膜は単層になっていることがわかる。
TERS測定
測定用の探針には、AFM用の探針を加熱炉に入れSiO2膜を形成した後に、銀を蒸着し、KAuCl4溶液中に浸漬し、Au-Ag合金化させたものを用いた。
測定条件は、レーザー波長638nm、レーザー強度0.8mW、走査範囲2×2μm、画素数40×40ptsで行った。
グラフェン材料においては、欠陥由来のDピークが1270cm-1付近に、グラフェンにおけるメインのピークでありsp2結合カーボンの平面構造を反映するGピークが1580cm-1付近に、2つのフォノンの格子振動過程に由来する2Dピークが2700cm-1付近に観測される。
グラフ(Fig. 5)から、1340cm-1、1610cm-1、2670cm-1、2950 cm-1に増強されたピークが確認できる。これは順に Dピーク、Gピーク、2Dピーク、C-H 結合由来のピークであると考えられる。典型的な3つのピークのほかに、C-H由来のピークが増強して観察された理由として、グラフェンの酸化工程で導入されたカルボキシ基などの酸素官能基が、室内の光に当たることで一部還元され、C-H 結合のピークとして検出されたのではないかと考えられる。
続いてマッピング測定を行った。Dピーク、Gピーク、2Dピークそれぞれマッピングを行った。この図(Fig. 6)より、AFM像と一致するGOの形状が観察できた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 GO分散液の作成方法
Fig. 2 TBAOHによるGOの剥離効果
Fig.3 表面圧ー分子占有面積曲線
Fig. 4 (a)GO膜のAFM像 (b)ラインプロファイル
Fig. 5 GOのLLB膜のTERS測定(左)GOのAFM像と測定点(右)ラマンスペクトル
Fig. 6 GO膜のTERSマッピング像
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献:[1] J. W. Kim, et al., ACS Nano, 7,9,8082-8088(2013).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件