【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU0014
利用課題名 / Title
電子顕微鏡を用いた接着界面の構造評価
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/Electron microscopy,走査プローブ顕微鏡/Scanning probe microscopy,イオンミリング/Ion milling,集束イオンビーム/Focused ion beam,光学顕微鏡/Optical microscopy,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,X線回折/X-ray diffraction,電子回折/Electron diffraction,電子分光,異種材料接着・接合技術/ Dissimilar material adhesion/bonding technology,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
王 胖胖
所属名 / Affiliation
九州先端科学技術研究所ISITマテリアルズ・オープンラボ
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
吉原大輔,久保園達也,山田 淳
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
福永 裕美
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KU-002:収差補正走査/透過電子顕微鏡
KU-003:マイクロカロリーメーター高エネルギー分解能元素分析装置
KU-004:広電圧超高感度原子分解能電子顕微鏡
KU-009:ハイコントラスト補助電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
異種材料界面の接着・破壊挙動に対する接着界面のナノ~マイクロスケール構造依存性についての理解は未だ不十分な状況下にある。本研究課題では、電子顕微鏡による接着・破壊挙動のナノスケールでの動的・静的観察により接着・破壊メカニズムを精微に解析することを目的とする。昨年度に続き、透過型電子顕微鏡の中で、試料を引張りながら破断プロセスのin-situ観察を行った。特に、エポキシ樹脂/シリカナノ粒子(フィラー)接着界面の破断挙動に及ぼす電子ビーム照射の影響を調べた。
実験 / Experimental
エポキシ樹脂の主剤として水素化ビスフェノールA ジグリシジルエーテル(HDGEBA)を、また、硬化剤として1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)(CBMA)を用いた。フェニルシランでコートした平均粒径50 nm のシリカナノ粒子をフィラーとして用いた。HDGEBA とCBMA はエポキシとアミンの化学量論比2:1(mol)で混合した。シリカナノ粒子の添加量はエポキシ混合物の3 wt%とした。エポキシ樹脂は、窒素雰囲気下295 K で24 時間予備硬化した後、373 K で24 時間本硬化を行った。 電子ビーム照射用試料として、先ず、エポキシ反応液とシリカナノ粒子の混合液をガラス板上に塗布し、上記の硬化条件で硬化した後、厚さ約250 μm のダンベル試験片を作製した。この試験片を市販の電子ビーム照射装置(加速電圧300 kV、電子線量率100 kGy/s~500 kGy/s)で照射し、引張強度を評価した。 一方、透過型電子顕微鏡(TEM)内における引張試験用の厚さ約150 nm の薄膜試料は、ウルトラミクロトーム法で作製し、引張試験用カートリッジにある幅20 μm のスリット上に載せ、真空乾燥後、TEM 内で引張試験を行った。加速電圧(80 kV~200 kV)で加速された電子ビームで照射し、それぞれの照射条件下で薄膜試料の引張による力学的変化の状況を観察した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1 に、電子ビーム照射前後のダンベル型バルク試験片の写真と引張試験結果を示す。大気中、電子線量率500 kGy/s の条件下で薄膜を5 分間連続照射した。照射後、試料の色が無色透明から黄褐色に変化した。ダンベル試験片の引張試験結果の応力-変位曲線から、シリカナノ粒子の添加により試験片の機械強度が向上したことがわかった。電子ビームを照射すると、機械強度はさらに向上し、コンポジット材料の力学特性改善について、マトリクスと含有フィラーの接着界面の化学組成や力学特性等に影響を及ぼすと考えられる。 次いで、ウルトラミクロトーム法で作製したコンポジット薄膜試料をTEMの中で引張りながら、マトリックス/ナノ粒子接着界面のin-situ観察を行った。図2に、TEM 内における薄膜試料の引張試験において、観察倍率が2500 倍、10000 倍、50000 倍の条件下で薄膜試料内に進展するき裂先端の形状のTEM 像を示す。電子顕微鏡の加速電圧は200 kV で、電子ビームは一番小さいサイズのSpot Size No.5 を使用した。低倍率(2500 倍)と中倍率(10000 倍)あるいは電子ビーム照射強度が低い場合は、き裂先端が鋭い形のまま進展した。観察倍率が高く(50000 倍)なると電子ビーム照射強度が高くなるが、この場合にはき裂先端の形状が丸くなり、進展が遅くなった。さらに引張ると、き裂先端に新たなき裂の出現も観察された。バルク試験片の引張試験と同様に、TEM 内の電子ビーム照射により、薄膜試料が破壊されにくくなる傾向が示唆された。すなわち、電子ビーム照射によりコンポジット試料の力学強度が向上したものと推察される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 ダンベル試験片の電子ビーム照射前後の写真および引張試験結果
図2 異なる観察倍率下で観察したナノコンポジット薄膜の引張試験のTEM 像。TEM 像の右上に経過時間(分:秒)を示す。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究は、JST未来社会創造事業JPMJMI18A2の支援を受けたものです。エポキシ樹脂を提供して頂いた新日本理化株式会社、シリカナノ粒子を提供して頂いた株式会社アドマテックスに心より感謝致します。TEM観察は、文部科学省マテリアル先端リサーチインフラ課題として九州大学超顕微解析研究センターのご支援、および福岡市産学連携交流センター分析機器室のご支援を受けて実施されました。技術サポートして頂いた九州大学超顕微解析研究センターの福永裕美学術研究員に深く感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 王胖胖, 青木美佳, 久保園達也, 吉原大輔, 春藤淳臣, 山本智, 田中敬二, 山田淳, "エポキシ樹脂/シリカナノ粒子接着界面挙動に及ぼす 電子ビーム照射の影響", 日本接着学会第60回年次大会(オンライン), 令和4年6月24日
- 王胖胖, 青木美佳, 久保園達也, 吉原大輔, 春藤淳臣, 山本智, 田中敬二, 山田淳, ”ナノコンポジット薄膜の亀裂挙動に及ぼす含有シリカナノフィラー会合の効果”, 第59回化学関連支部合同九州大会(北九州), 令和4年7月2日
- 山本 智, 青木裕之, 小椎尾 謙, 小林卓也, 竹中幹人, 中嶋 健, 西野 孝, 初井宇記, 堀内 伸, 山田 淳, 吉澤一成, 田中敬二, ”接着界面における構造・物性の先端解析”, 接着の技術誌, 令和5年2月1日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件