利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NM0018

利用課題名 / Title

グラフェンの格子ひずみの空間分布制御

利用した実施機関 / Support Institute

物質・材料研究機構 / NIMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

グラフェン、格子ひずみ、バンド構造制御


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

友利 ひかり

所属名 / Affiliation

筑波大学 数理物質系物理学域

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

楠川 将史

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

竹村 太郎,服部晋也

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NM-003:ラマン顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

グラフェンは卓抜した移動度を示すことから次世代エレクトロニクス材料としての可能性を有しているが、ゼロギャップ半導体であるという問題点がある。本研究では、グラフェンに空間的に変調する格子ひずみを導入することで、トポロジカル物性特有の疑似ベクトルポテンシャルを生成させ、これによりバンド構造を変調させることを目的とする。ラマン顕微鏡は、ひずみ量を見積もるために用いる。

実験 / Experimental

Si/SiO₂基板上に電子線リソグラフィーを用いてレジストHSQの凹凸構造(周期100nm)を作製し、その上にhBNに密着したグラフェンを転写することでグラフェンに周期ひずみを導入した。その後、ホールバー形状への加工、電極接続を行った。試料を希釈冷凍機で室温から0.1 Kまで冷却し、電気伝導特性を測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

凹凸構造上に転写したhBN/グラフェンに対してラマン分光・AFM測定を行った結果、ひずみ量は0.1%程度と見積もられ、目標値(数%)よりも小さな値になった。これはグラフェンに密着させたhBNが30層程度で厚かったためであると考えている。hBN/グラフェンの電気伝導率のゲート電圧依存では、hBNが無い試料と比較してV字状のカーブが先鋭化し、ディラック点がゲート電圧0Vに近づいた。これはhBNの密着によってグラフェン上の荷電不純物が減少したためである。hBNが無い場合に比べて移動度・平均自由行程に大幅な改善が見られ、平均自由行程は凹凸周期を超す値となった。さらに移動度の向上によって、4Kで明確な量子ホール効果が観測された。最小電気伝導率の温度依存では高温領域で熱活性型の振る舞いが見られ、伝導ギャップは14 meVとなった。一方、低温領域ではバリアブルレンジホッピングの振る舞いが見られた。伝導ギャップは凹凸構造のないhBN/グラフェンでも観測された。このことから、伝導ギャップの原因は、凹凸構造による周期ひずみではなく、hBNとの接触であると推察される。先行研究で、hBNに密着させたグラフェンにおいてモアレパターンに由来する周期的なひずみが生じてバンドギャップが生じることがすでに報告されている。伝導ギャップの値は、先行研究と同程度であった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献 [1] C. R. Woods et al. Nat. Phys. 10, 451–456 (2014).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 楠川 将史、神田 晶申、渡邊 賢司、谷口 尚、友利 ひかり:「グラフェンへの周期ひずみの導入手法の改良」、2022年第83回応用物理学会秋季学術講演会、2022年9月、東北大学、ポスター
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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