利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT1166

利用課題名 / Title

金属および誘電体の高次高調波加工

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

レーザー加工,走査プローブ顕微鏡/Scanning probe microscopy,スパッタリング/Sputtering


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

岩崎 純史

所属名 / Affiliation

東京大学大学院理学系研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

本山 央人,山内 薫

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-711:LL式高密度汎用スパッタリング装置(2019)
UT-850:形状・膜厚・電気特性評価装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

レーザーによる微細加工は、半導体の小型化を実現するためには必要不可欠である。加工に使用するレーザーが短波長であるほど、集光サイズを小さくできること、化学結合が切りやすくなり加工における熱の影響を受けにくくなること、加工対象物の吸光度が高くなることから、微細加工への応用が期待されている。しかし、高次高調波ではパルスエネルギーを大きく出来無いという問題がある。そこで本研究では、これまで整備してきた近赤外フェムト秒レーザーの高次高調波の微細加工ビームラインにおいて、先にあげた高次高調波の利点を生かした新たな微細加工法の開発を行った。

実験 / Experimental

チタンサファイアレーザー(800 nm, 4 mJ, ∼40 fs, 1 kHz)をアルゴンガスに集光することで、30 nmの極端紫外領域の高次高調波を発生させた。高次高調波ビームをサブマイクロメートル径(横0.6ミクロン、縦0.9ミクロンの楕円形)に集光し金属薄膜に照射した。試料表面への照射パルス数は、10, 100, 1000ショットとした。また、照射した最大エネルギーは0.75 nJである。照射サンプルは、市販のシリコンウエハーを10 mm × 10 mmのサイズに裁断したうえで、直流マグネトロンスパッタリング装置(Shibaura mechatronics)によって金属を蒸着した。実験で使用した金属薄膜は,Au,Ag,Pt,Cu,Pd,Crの6種類であり、Au, Pd, Ptの場合には接着層として5 nmのCrをシリコンウエハー上に蒸着したうえで、目的金属を蒸着した。目標膜厚は100 nmとした。膜厚は検査装置DektakXT(Bruker)で確認し、加工結果は原子間力顕微鏡(Park Systems NX10:自研究室所有)を用いて観察した。

結果と考察 / Results and Discussion

本研究で得られた1000ショット加工結果をまとめて表1に示す。参考まで、この照射条件でシリコンに照射した場合も示している。これらは全て同じ照射条件で行った。表1に示した加工結果は元々の金属薄膜表面を基準にAFMで測定した山の高さ(正)、もしくは穴の深さ(負)を示している。Auでは大きな穴が得られており、その深さが-100 nmより深いことから、基板であるシリコンまで加工されていることがわかった。一方で、同じ11族で同程度の熱伝導率を持つCuでは250 nmの山が得られており、電子配置や熱伝導率のみで判断出来ないことがわかる。一方、同じ第2周期で10族のPtと11族のAuの加工結果を比べると、Ptは薄膜のみ加工されており、明確な違いが現れている。Auと比べてCuとPtは侵入長が長く、CuとPtは、より光を表面付近で入射光を吸収していることがわかる。ここで、侵入長とは、表面に入射した光強度が1/e (eはネイピア数)となる長さを表している。現在も結果について検討中であるが、Cuの場合は、10ショット加工でも山型が形成されていることから、侵入長が深く融点が低いため、ショットあたり大きな体積の金属が融解し変形の末、再度凝固して山型を形成していると考えられる。一方、Ptは侵入長がCuより浅く、融点が高いため、比較的少ない体積の融解した金属が表面付近に形成した結果、穴の周りに外輪山型の構造を形成していると考えられる。Auの場合は、さらに侵入長が浅く、また融点が低いため、表面付近の金属が取り除かれながら穴加工が進むとともに、その際にSiの融点を超える温度に達しているものと考えられる。 

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


表1 各金属の加工結果と熱伝導率、侵入長、および融点の比較


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は、文部科学省「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」(JPMXS0118068681)と日本学術振興会最先端研究基盤事業「コヒーレント光科学研究基盤の整備」,科研費(JP20H00371, JP21K14053),および科学技術振興機構COIプログラム「コヒーレントフォトン技術によるイノベーション拠点」の助成を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Hiroto Motoyama, Submicron structures created on Ni thin film by submicron focusing of femtosecond EUV light pulses, Applied Physics Express, 16, 016503(2023).
    DOI: https://doi.org/10.35848/1882-0786/acaebe
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Akihisa Ansai, Hiroto Motoyama, Atsushi Iwasaki, Hidekazu Mimura, Kaoru Yamanouchi,” Submicron structures created on metal thin films by submicron focusing of femtosecond EUV light pulses” March 23, 2023., 103rd CSJ Annual Meeting(2023), Noda Campus, Tokyo University of Science Chiba, Japan.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:1件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る