利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT1071

利用課題名 / Title

時間反転対称性の破れた反強磁性体における創発物性の開拓

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

蒸着・成膜/Evaporation and Deposition,リソグラフィ/Lithography,EB,トポロジカル量子物質,スピン制御,スピントロニクス,量子効果


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

関 真一郎

所属名 / Affiliation

東京大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

高木里奈,吉持遥人,荒木那巨,池田直樹,接待裕生

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

水島彩子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-505:レーザー直接描画装置 DWL66+2018
UT-700:4インチ高真空EB蒸着装置
UT-850:形状・膜厚・電気特性評価装置群


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究では、系の対称性やトポロジーといった幾何学的な性質に基づいた物質設計を通じて、革新的なエレクトロニクス・スピントロニクス機能を実現することを目指している。現在、ベリー曲率を介して生じる仮想的な磁場に起因した非自明な異常ホール効果を示す反強磁性体が注目を集めている。その中でキラルな空間群に属する反強磁性体CoNb3S6が巨大な異常ホール効果を有することが報告されている[1]。更に、我々はNbをTaに置換した反強磁性体CoTa3S6も巨大な異常ホール効果を有することを発見した[2]。これらの物質は時間反転対称性と空間反転対称性が同時に破れた系であるため、より幅広い物性現象が期待される。その一つは、順方向と逆方向の電流が異なる伝導度を示す非相反電気伝導である。非相反電気抵抗は電流に比例して現れ、一般にその大きさは小さい。したがって実験的な観測のためには、印加する電流密度を大きくするためのデバイス作製が必要である。

実験 / Experimental

レーザー直接描画装置(DWL66+)と4インチ高真空EB蒸着装置(NSP II)を利用し、熱酸化処理されたシリコン基板上にホール抵抗測定用の金電極パターンを作製した。

結果と考察 / Results and Discussion

作製した基板上にFIBを用いて切り出したCoTa3S6単結晶試料を載せ、タングステンを用いて試料と金電極との配線を行った(図1)。試料を超伝導マグネットに入れ、AC電流源を用いて試料の[001]方向に交流電流(f=111Hz)を印加し、ロックインアンプおよびプリアンプを用いて同じ[001]方向の交流電圧(2f=222Hz)を測定した。その結果、反強磁性秩序温度以下で時間・空間反転対称性の破れに起因した非相反電気伝導の観測に成功し、2つの時間反転ドメインはゼロ磁場において逆符号の非相反性を示すことを明らかにした。これらの成果は、非相反電気抵抗を利用することで反強磁性ドメインを電気的に検出できることを示している。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1:シリコン基板上に作成した金電極に配線したCoTa3S6試料の写真


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] N. J. Ghimire et al., Nature Comm. 9, 3280 (2018).
[2] H. Takagi et al., Nature Physics accepted.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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