【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.27】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22QS0123
利用課題名 / Title
放射光を用いた一軸ひずみ下精密構造解析によるネマティック超伝導体CuxBi2Se3 の新奇な超伝導電子対形成機構の解明
利用した実施機関 / Support Institute
量子科学技術研究開発機構 / QST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation,トポロジカル量子物質/ Topological quantum matter,超伝導/ Superconductivity
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
川崎 慎司
所属名 / Affiliation
岡山大学学術研究院自然科学学域
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
佃菜桜,小林映斗,二田晴也
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
石井賢司
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
トポロジカル超伝導候補物質CuxBi2Se3の面内一軸ひずみ下での超伝導と結晶構造の関係を調べることを目的とする。この物質は結晶構造の面内六回対称を自発的に破る二回対称性を示す非従来型スピン三重項超伝導体である[1]。超伝導発現機構を調べる上で超伝導と結晶構造の関係を調べることが最も重要である。実際我々はCuxBi2Se3超伝導の一軸ひずみ応答を調べ、わずか0.02%の引張圧縮ひずみで超伝導が消失することを見出した[2]。
本研究は、SPring-8に自作のピエゾ駆動型一軸ひずみセル、ひずみ制御システム、及びCuxBi2Se3単結晶を持ち込み、放射光による面内一軸ひずみ下精密構造解析で結晶対称性と超伝導の関係を明らかにするのが目的である。今回は超伝導が発現する極低温ではなく、一軸ひずみ下精密構造解析の第一歩として室温でひずみ下放射光実験を行った。その結果、Cu0.2Bi2Se3の一軸ひずみ下構造解析に成功し、c及びb*軸長のひずみ依存性をそれぞれ得ることが出来た。
実験 / Experimental
【利用した装置】:共鳴非弾性X線散乱装置
【実験方法】
BL11XUに自作の一軸ひずみセル及びひずみ制御システムを持ち込み、室温においてCu0.2Bi2Se3単結晶にひずみを加えた状態(セルに通電した状態)で(1 0 L)や(1 1 L)反射のピークを測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.1にBL11XUに持ち込んだ自作の一軸ひずみセルと制御装置を示す。Cu0.2Bi2Se3単結晶(Tc=3.4 K, 1 mm×0.25 mm×0.08 mm)のc面が上になるようにセルに固定している。セルから伸びているケーブルはピエゾ素子駆動用の電源ケーブル及び、ひずみ量測定用平行平板コンデンサにつながる同軸ケーブルである。
与えられたビームタイムで室温においてc及びb*軸長のひずみ依存性(ひずみ量ε=±0.08%)を測定することが出来た。しかしながら得られたデータを精査した結果、室温ではこの物質がひずみに対して塑性変形を起こしていることがわかった。低温では弾性変形していたことから[1]、この物質の本質的なひずみ応答を知るには極低温での実験が必要である。室温で塑性変形を起こしてしまった原因としては、CuxBi2Se3のBi2Se3層間にインターカレートされたCuがファンデルワールス結合という弱い力で化学結合している物質固有の事情によると考えられる。
残念ながら今回の物質の測定では物理的に意味のある結果を得ることが出来なかったが、自作の装置をビームラインに持ち込み一軸ひずみ下精密構造解析を行うことに成功したことは本研究にとって大きな一歩と言える。本研究手法は、適切な物質系を選ぶことで今後の展開が大いに期待できるものと考えている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 BL11XUの四軸回折計に取り付けた自作の一軸ひずみセル(左)および制御装置(右)
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献
[1] K. Matano et al., Nat. Phys. 12, 852–854 (2016).
[2] 西垣颯, 川崎慎司ら,「トポロジカル超伝導体CuxBi2Se3の作製と物性測定IV」日本物理学会第77回年次大会, 2022年3月15日(15pT24-11).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件