利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.24】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22QS0112

利用課題名 / Title

グラフェンを直接成長させたサファイア基板上でのGaNリモートエピタキシーのリアルタイムX線回折

利用した実施機関 / Support Institute

量子科学技術研究開発機構 / QST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

結晶成長,X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation,原子薄膜,表面・界面・粒界制御,高周波デバイス,パワーエレクトロニクス


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

日比野 浩樹

所属名 / Affiliation

関西学院大学工学部物質工学課程

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

川合良知,梅本浩貴,小田昂到,横澤翔太,石田湧麻,野島翼

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

佐々木拓生

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

QS-113:表面X線回折計


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

リモートエピタキシーは、グラフェンで覆われた基板上に、薄膜を基板に対してエピタキシャル成長させる手法で、薄膜を基板から剥離可能という特長を有する。GaNのリモートエピタキシーが可能となれば、GaN薄膜を剥離した後、基板を再利用することで、GaNウェハコストを低減できることに加えて、剥離GaN薄膜を用いてフレキシブルデバイス等の新たな応用を開拓できる。このため、産業的に大きなインパクトを有する。GaNのリモートエピタキシー基板に、比較的廉価で、大口径化も進んでいるサファイアは有望であり、これまで主にグラフェンを転写したサファイアが基板として用いられてきた。しかし、転写過程で不可避的に導入されるグラフェンの汚染や破損は、GaN薄膜の結晶性向上への障害となりうる。そこで、本研究課題では、化学気相成長(CVD)法によりグラフェンを直接成長させたサファイアを基板に用い、GaN薄膜の成長初期過程を放射光その場X線回折(XRD)により詳細に解析した。

実験 / Experimental

【利用した装置】:表面X線回折計
【実験方法】
SPring-8のビームライン11XUに設置されたRFプラズマ分子線エピタキシー(RF-MBE)装置とX線回折計が一体化したMBE-XRDシステムを実験に用いた。グラフェンを直接CVD成長させたc面サファイア基板上に、基板温度790℃でGaNを結晶成長させながらXRDパターンを連続的に測定し、その後、試料を面内回転させながらXRDパターンを測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

Fig. 1は、GaN成長中にGaNの(101)回折点の付近で取得したXRDパターンから求めたGaN回折位置の膜厚依存性である。80 nm成長後のGaN薄膜が完全に格子緩和していると仮定して、各膜厚での回折点位置(h0l)を求めた。GaNを直接サファイア上に成長させた際の格子歪を調べた論文によると、GaN膜厚が0から15 nmに増える間に、面内格子定数が0.264から0.319 nmに変化したことが報告されている[1]。一方、グラフェンで覆われたサファイア表面上では、成長の最初期であってもGaNの面内歪みは0.2%程度で、ほぼ無歪みであることがわかる。Fig. 2は、成長後に測定したGaN(101)回折強度の面内回転角依存性であり、60°の間隔で強い回折が現れる。サファイアからの回折点の位置も考慮すると、GaN薄膜がサファイアに対して30°回転してリモートエピタキシャル成長したことがわかる。また、グラフェンを転写したサファイア上にAlNバッファー層を介して成長させたGaN薄膜に対して測定したXRD強度の面内回転角依存性には、ピーク強度の20%程度の角度に依らないバックグラウンドが見られた。一方、Fig. 2のバックグラウンドはピーク値の0.1%程度であり、直接成長させたグラフェンを用いることで、リモートエピタキシャル薄膜の配向性を向上できることが明らかになった。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Dependence of the XRD spot positions of GaN on the GaN thickness.



Fig. 2 Dependence of the GaN (101) XRD intensity on the in-plane rotation angle.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

[1] Y.-Y. Liu, J. Zhu, W.-B. Luo, L.-Z. Hao, Y. Zhang, and Y.-R. Li, Chin. Phys. 20, 108102 (2011).
また、QSTの大和田謙二氏、ハリーズ・ジェームズ氏、嶋田恵朋氏の実験支援に感謝する。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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