【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.27】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22QS0014
利用課題名 / Title
PDF 解析によるPb 含有ペロブスカイト酸化物の負熱膨張関連相転移機構の解明
利用した実施機関 / Support Institute
量子科学技術研究開発機構 / QST
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
負熱膨張,電荷移動,短距離秩序,ペロブスカイト,X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
酒井 雄樹
所属名 / Affiliation
神奈川県立産業技術総合研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
小池剛大
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
町田晃彦
利用形態 / Support Type
(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
BiやPbといった元素は、典型元素で有りながら6s0及び6s2電子配置を取り、その間の6s1電子配置を取らないバレンススキッパーと呼ばれる電荷自由度を有する。また、6s2電子配置のBi3+, Pb2+では孤立電子対による立体化学効果により、6s0電子配置のBi5+, Pb4+では高価数イオンによる強いクーロン力により、局所構造を大きく歪ませる効果がある。BiやPbが持つこれらの特異的な性質は、PbTiO3で見られる優れた強誘電性や、温度誘起のBiとNi間の電荷移動に起因する、BiNiO3ベースのペロブスカイト型酸化物における巨大負熱膨張などへと応用されており、BiやPbを含むペロブスカイト型酸化物は、結晶化学といった基礎分野だけではなく、材料開発の分野でも注目されている。本研究では、Bi及びPb含有ペロブスカイトに対してPDF法による局所構造解析を温度可変で行い、その相転移機構の解明を目指した。
実験 / Experimental
【利用した装置】:高速2体分布関数計測装置
【実験方法】
試料をポリイミドキャピラリー試料セルに封入し全散乱プロファイルの測定を行う。ダイヤモンドアンビルセル回折計を用い、全散乱測定の検出器はピクセル分解能が高いイメージングプレートで測定を行う。リートベルト解析による平均構造の解析も同時に行えるように、試料-検出器距離を変化させて分解能の高いデータも取得する。温度制御下での測定は窒素吹付装置を用いて行う。また、標準試料としてNi、CeO₂等の測定も行い、バックグラウンドとして空のキャピラリーも測定する。
結果と考察 / Results and Discussion
BiとPbをAサイトに同時に含む、ペロブスカイト型酸化物Bi0.5Pb0.5FeO3は、001方向に沿ったFeO6八面体のチルトを有する、空間群I4/mcmの正方晶構造を平均構造として取るが、リートベルト解析から求めた異方性原子変位パラメーターからは、擬立方晶の100及び010方向の局所的な八面体のチルトの存在も示唆されている [参考文献]。Fig.1にBi0.5Pb0.5FeO3の300 KでのPDF解析結果を示す。10 Å以下の領域で平均構造からのズレが大きくなっていることから、Bi0.5Pb0.5FeO3における局所構造歪みの存在を、本研究により確認することができた。現在詳細な局所構造解析を進めている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Bi0.5Pb0.5FeO3の300 KでのPDF解析結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献S. Kihara et al., Inorg. Chem. 61, (2022) 12822–12827.
・科研費基盤研究S(JSPS)「革新的負熱膨張材料を用いた熱膨張制御」
・共同研究者:東京工業大学東正樹教授
・町田晃彦様(QST)に感謝します。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Takumi Nishikubo, Yuki Sakai, Kengo Oka, Masaichiro Mizumaki, Tetsu Watanuki, Takashi Mizokawa, Masaki Azuma, “Systematic charge distribution changes in Bi, Pb-3d transition metal perovskite oxides” HAXPES2022, 令和4年7月13日.
- Masaki Azuma,“Giant Negative Thermal Expansion Materials” New Energy Chemistry and Device Seminar 2022, 令和4年8月31日.
- 西久保 匠, 若崎 翔吾, 山本 樹, 酒井 雄樹, DAS Hena, 町田 晃彦, 綿貫 徹, 東 正樹, “ペロブスカイト PbMnO3の局所構造と電荷秩序状態の解明” 日本セラミックス協会第35回秋季シンポジウム, 令和4年9月14日.
- 酒井 雄樹, 西久保 匠, ダス ヘナ, 東 正樹, 水牧 仁一郎, 溝川 貴司, 町田 晃彦, 綿貫 徹, 沖本 洋一, “放射光を用いたペロブスカイト型酸化物Bi1-xPbxNiO3の負熱膨張メカニズムの解明” 日本セラミックス協会第35回秋季シンポジウム, 令和4年9月15日.
- Masaki Azuma, “Giant Negative Thermal Expansion Materials” International Workshop on Physics and Chemistry of Electronic Materials, 令和4年12月12日.
- 東 正樹, “巨大負熱膨張材料の高圧合成” 第9回愛媛大学先進超高圧科学研究拠点(PRIUS)シンポジウム, 令和5年2月28日.
- 劉 丘民, 西久保 匠, 酒井 雄樹, ヘナ ダス, 壬生 攻, 尾上 智子, 川上 隆照, 町田 晃彦, 綿貫 徹, 東 正樹, “PbFeO3の圧力誘起相転移” 日本セラミックス協会2023年年会, 令和5年3月9日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件