利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT5007

利用課題名 / Title

細胞組織内のイオン分布に関する研究

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

植村 寿公

所属名 / Affiliation

大阪大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

藤井剛

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-506:超伝導蛍光X線検出器付走査型電子顕微鏡 (SC-SEM)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 現在、再生医療分野においてオルガノイド研究が注目を集めている。再生医療が幹細胞などから特殊な培養技術を用いて臓器を作製し、ヒトの疾患箇所に移植して修復するのに対して、オルガノイドは幹細胞などからミニチュア臓器を作製し、基礎研究や創薬技術、再生医療への応用に役立てようとするものである。再生医療、オルガノイドにおいて大きな問題の一つは、作製した臓器の品質を3次元的に評価する技術が、従来の光学技術に依存しており、臓器は多くは不透明であるが故に、従来の光学的検出技術には限界がある点である。電子顕微鏡技術、特に3Heを用いた超電導検出器により電子線照射により派生する特性X線の検出技術は、従来の光学的検出技術の限界を超え、新たな情報をもたらす可能性が高い。  今回、我々は大阪大学医学研究科が有するヒトiPS細胞由来の心筋スフェロイド(一種のオルガノイド)に焦点をあて、AISTの超電導電子顕微鏡装置(超伝導蛍光X線検出器付走査型電子顕微鏡 (SC-SEM) )を用いた測定と組み合わせることにより、どのような生物学的に有用な情報を得ることができるかを検討する。それをもとに、iPS細胞が未分化な状態から、どのような過程を経て、拍動する心筋に分化していくかを観察する。

実験 / Experimental

 iPS細胞は、京大山中伸弥教授が作製した未分化253G1細胞株から、中胚葉への分化を経て、心筋組織に分化(3次元培養法により作製された心筋スフェロイド、主に25日間培養を続けたもの)を生物試料として用いた。心筋スフェロイドを採取後、急速凍結法により凍結し、クライオスタットを用いて8μm厚切片を作製し、SC-SEMを用いて観察した。切片上、どの部位が心筋に分化しているか、などの情報を得るために、心筋マーカーであるトロポニンT,アルファアクチニン、ビメンチンなどの抗体を用いた免疫染色や毛細血管を染めるトマトレクチンなどを用いて染色した。

結果と考察 / Results and Discussion

 iPS細胞253G1細胞株から心筋への分化培養を25日行って作製した心筋スフェロイドを急速凍結法(ヘキサン、ドライアイス法)により凍結後、ライカクライオスタットを用いて凍結切片を作製しシリコン基板上に張り付けた。同時に、凍結切片をスライドグラスに張り付け、固定の後、トロポニンT,アルファアクチニン染色を行い、心筋部位を特定し、SC-SEMでの観察により、Zn,Cu,Fe,P,S,Naなど生体に重要な役割を果たすイオンが観察可能であることが分かった。心筋スフェロイドは肉眼でも分かる程度に拍動する。すなわち、エネルギー消費、代謝の極めて高い臓器であると言える。そのエネルギー供給の根源はミトコンドリア中に存在するATP(アデノシン三リン酸)のADP(アデノシン二リン酸)への分解による。今後、作製した心筋スフェロイド中の心筋組織に存在するミトコンドリア中のATP、ADPを観察できると考えられる。心筋組織中の拍動する部位(サルコメア)ができる工程は十分明らかでなく、次のステップとして、心筋スフェロイドにおける分化過程において、Pの特性X線を観察することによりミトコンドリアの発現過程の観察により、心筋分化のメカニズムを探ることができると考えている。同時に他のイオンの観察結果をもとに、更なるSC-SEMのアプリケーションを探っていきたい。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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