利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22AT0373

利用課題名 / Title

酸化物薄膜から基板へのNb元素の拡散層の評価

利用した実施機関 / Support Institute

産業技術総合研究所 / AIST

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

ペロブスカイト型酸化物SrNbO3,パルスレーザー堆積法(PLD),高移動度層


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

片山 裕美子

所属名 / Affiliation

東京大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

上野 和紀

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

AT-038:二次イオン質量分析装置(D-SIMS)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 ペロブスカイト型酸化物SrNbO3は、パルスレーザー堆積法(PLD)などを用いて基板の上に準安定に成長させることができる。SrNbO3薄膜はSrTiO3やKTaO3基板上に成膜すると、特有の高移動度層が出現する[1]。本研究では、この高移動度層についてNbの薄膜から基板への拡散という観点で評価を行った。

実験 / Experimental

 PLD法を用いて、背圧~10-7 Torr、900℃の条件下で、SrTiO3 (STO)、KTaO3 (STO)、LSAT基板(いずれも(001)配向)上に2~5 nmの膜厚でSrNbO3薄膜を作製した。得られた試料について、PPMSを用いて抵抗の温度依存性、Hall測定を行った。【NPF038】二次イオン質量分析装置(D-SIMS) を用いて、Nbおよび基板が含有する元素について、薄膜表面から深さ方向の濃度を測定した。参照試料としてSrTiO3:0.5%Nb基板を用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

 抵抗Rの温度依存性測定より、残留抵抗比(RRR=R(2K)/R(300K))は、LSAT上の試料で~1、STO上で~103、KTO上で、~10であった。STO, KTO上に成膜下試料は、2Kの移動度μがぞれぞれμ>103 cm2V-1s-1, μ>50 cm2V-1s-1となった。これらの高い移動度は、SrNbO3の移動度(μ~0.45 cm2V-1s-1@2 K)では説明ができない。Figure 1に各試料の表面から深さ方向の元素濃度を示す。STO, LSAT上試料では基板表面から内部へNb濃度が一定となるまでに25 nm(LSAT), 30 nm(STO)程度Nb濃度が緩やかに減少する様子が観測された。バルクのSTO:NbはNb濃度~1019 cm-3で移動度が104 cm2V-1s-1程度となることが知られる[2]。このことからSTOで少なくとも数十nmの伝導層が形成されることが分かった。KTO基板を用いた試料では、Nbカウントが一定となった深さでもカウント数が102 cpsと高くなった。これはマススペクトルよりKTO基板由来のK2O(94 amu)のピークの裾を93Nbとしてカウントしているためと確認された。
 以上の結果からSrNbO3薄膜の評価においてはNb拡散による基板のドーピングについて考慮する必要があることが確認された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1 D-SIMS results of SrNbO3 thin film sample on (a)STO, (b)KTO, (c)LSAT substrates. Gray 


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献:
[1] 大熊等, 第82回応用物理学会秋季学術講演会, 13a-S203-2, (2021).など
[2] O.Tufte, et.al., Phys. Rev. 155 796-802 (1967).
謝辞:
本研究は、JSPS科研費JP 22K14001の助成を受けたものです。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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