【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.15】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0409
利用課題名 / Title
電池材料のイオン移動と構造に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
プローバー,二次電池/ Secondary battery
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
小林 俊介
所属名 / Affiliation
ファインセラミックスセンター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
小林俊介
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
リチウムイオン二次電池はモバイル端末から電気自動車に使用され、現代社会において必要不可欠な蓄電池である。 近年、低炭素社会実現へ向け、車載用蓄電池開発が重要課題であり、ガソリン車からの転換を実現するためには更なる高容量化や高速充放電特性の向上が必要となる。特に高速充放電を可能にする蓄電池としてLiイオンのみが動く全固体Liイオン二次電池の実用化が期待されている。全固体電池の実用化において、高いLiイオン伝導度を示す固体電解質の開発が重要となる。研究開発を促進するためには、電解質内部のLiイオン移動現象を結晶学的な視点から理解し、その動作原理や劣化挙動を基に設計指針を明確化していくことが重要となる。そこで、本研究では、固体電解質のLiイオン伝導度と構造の関係を明らかにし、電解質の開発指針を得ることを目的とした。
実験 / Experimental
環境制御マニュアルプローバーステーション(インピーダンス測定装置126096Wと極低温プローブステーションCRX-4K)を用いて、酸化物固体電解質のLiイオン伝導の測定手法の検討および200K~340Kの温度領域で測定を実施した。
結果と考察 / Results and Discussion
正確なイオン伝導を計測するため、計測システムの固有抵抗を確認した。インピーダンスアナライザ126096Wにおいて装置特有の抵抗成分が存在することを確認した。これは、高抵抗オプション1296の抵抗成分である。このことから、700Ω以下の抵抗を計測することは困難であることを確認した。また、15M以上の高周波数側ではプロバー等の影響により計測ができないことも確認した。これらの結果から、インピーダンス測定システム126096Wにてインピーダンス測定を実施した場合、正確なLiイオン伝導を算出するためには等価回路により装置固有の抵抗成分と固体電解質の抵抗成分を切り分け算出を行った。 次にサンプルの厚さ依存性の確認を実施した。その結果、試料厚さ依存性はなく、チタン酸ランタンリチウム(LLTO)酸化物固体電解質のLiイオン伝導度を測定ができることを確認した。この結果より、任意の厚さの試料を準備すればよいことを確認した。 これら検討した測定条件において、LLTO酸化物単結晶固体電解質(図1a)のインピーダンス測定を実施した。LLTO単結晶を10 ~ 100 μmの厚さに加工し、インピーダンス測定を実施した。複数の単結晶試料から測定を行った結果、Liイオン伝導度は室温付近において約0.6 ~ 4.0 mS/cmを示した。この結果は、計測箇所において大きく値が異なることを意味している。EBSDを用いた結晶方位解析の結果より、この測定値のばらつきは単結晶中に形成される結晶方位ドメインの形成状態に大きく依存していることを確認した。この時、最も大きなイオン伝導度を計測した箇所(試料厚13 μm、σbulk = 4.0 mS/cm、図1b)の結晶方位解析を実施した結果、測定方向に対して、リチウムイオンが流れる理想的な結晶方向に近いことを確認した。これまで知られていたよりも室温では約4倍、低温では約10倍も高いリチウムイオン伝導度を得ることに成功した成果である。一方で、この領域はLiイオン伝導パスとなるab面から約20°傾いている。この事実はより理想的な結晶方位からイオン伝導度を計測すれば、さらに高い伝導度を示すことを示唆している。 LLTOは大きな粒界抵抗や電気化学的な安定性への課題がありそのまま全固体電池へ用いることは難しい。しかし本結果は、LLTOの結晶構造に由来する伝導度が硫化物系固体電解質に匹敵する可能性を示唆している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1(a) LLTO単結晶写真。(b)リチウムイオン伝導度の温度依存性
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Shunsuke Kobayashi, Lithium Lanthanum Titanate Single Crystals: Dependence of Lithium-Ion Conductivity on Crystal Domain Orientation, Nano Letters, 22, 5516-5522(2022).
DOI: 10.1021/acs.nanolett.2c01655
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 口頭発表:小林俊介, 横江大作, 藤原靖幸, 川原一晃, 幾原雄一, 桑原彰秀, チタン酸リチウムランタン単結晶を用いた Li イオン伝導のドメイン依存性, 日本セラミックス協会 第35回秋季シンポジウム, 2022年9月14日
- 口頭発表:小林俊介, 横江大作, 藤原靖幸, 川原一晃, 幾. 雄一, 桑原彰秀, ペロブスカイト型酸化物LLTO単結晶を用いたLiイオン伝導と結晶ドメイン依存性, 第63回電池討論会, 2022年11月10日
- プレスリリース:従来の酸化物固体電解質で最高のリチウムイオン伝導を実現 ~次世代の酸化物系全固体電池の開発へ大きな期待~
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件