利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.13】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22UT0218

利用課題名 / Title

環境遮蔽コーティング材料のNanoSIMS分析

利用した実施機関 / Support Institute

東京大学 / Tokyo Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)その他/Others

キーワード / Keywords

セラミックス, アルミナ, 環境遮蔽コーティング,質量分析/Mass spectrometry,放射光/Synchrotron radiation,電子顕微鏡/Electron microscopy,光学顕微鏡/Optical microscopy,X線回折/X-ray diffraction,放射光/Synchrotron radiation,中性子回折/Neutron diffraction,燃料電池/ Fuel cell,ナノ多孔体/ Nanoporuous material


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

松平 恒昭

所属名 / Affiliation

一般財団法人ファインセラミックスセンター

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

北岡諭

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

竹内美由紀

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

UT-306:超微量元素計測システム(SIMS)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

Alを含む耐熱合金は優れた耐酸化性を発現するが、それは、表面にアルミナスケールが形成され、これが酸化に対する保護膜として機能するからである。このアルミナスケールは、膜厚方向に急峻な酸素ポテンシャル勾配 (dµO)に曝されており、このdµOに従って粒界を介してOとAlとが相互拡散することによりスケールが成長することが知られているが、詳細な物質移動機構は明らかではない。そこで、酸化保護モデル膜としてアルミナ膜を用いた酸素透過試験を実施し、スケール内部における物質移動機構の解明に取り組んでいる。その結果、dµO印加時におけるアルミナ多結晶の高酸素分圧側(PO2(hi))表面近傍の酸化物イオンの粒界拡散は、 dµOがない場合と比べて大幅に抑制されることが明らかとなった。しかし、ランダムな結晶方位を有する多結晶ウェハ表面近傍断面の限られた領域のSIMS-18O分布を用いて、dµO印加による酸化物イオンの移動抑制効果を詳細に解析するのは困難である。本研究では、18O2を用いて高温の大きなdµO下にΣ31アルミナ双晶膜を所定時間曝すことにより、PO2(hi)表面粒界近傍の粒界を介した酸化物イオンとAlイオンの移動や、それに伴う粒界周辺の構造変化に及ぼすdµOの影響を明らかにすることを目的とした。

実験 / Experimental

アルミナ双晶膜(Σ31, 厚さ:100 µm)を作製の上、膜表面を化学機械研磨により平滑化した。そして、膜厚方向にdµO(PO2(hi)=104Pa, PO2(lo)=100~10-8Pa)を印加した状態でPO2(hi)側から18O2を1600 ℃で4 h供給した。また、dµOを印加しない条件として、両表面にそれぞれ18O2および16O2を供給することによって両表面のPO2を104 Paに保持の上、1600 ℃で4 h処理した試料も作製した。ここで、酸素を透過させる粒界面が、(0001)表面に対して垂直になるように配置した。処理後、膜断面の18O分布をNanoSIMS分析により計測した。

結果と考察 / Results and Discussion

アルミナ双晶膜において膜内全域の18O分布を評価した結果、dµO印加によりPO2(hi)表面近傍において、多結晶膜と同様に、酸化物イオンの拡散が強く抑制されることが検証された。また、PO2(hi)表面の粒界が表面に対して垂直方向に左右に大きく移動することを示唆する結果が得られた。この原因は、PO2(hi)表面に滞留するAl空孔が表面粒界において吸収・消滅する際に,粒界の移動を伴うためと推察された。以上の知見は、アルミナ保護膜の構造安定化や、焼結や高温変形等の促進に、非平衡で存在するAl空孔濃度の制御が重要であることを示唆する。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

謝辞:本研究の一部は、JSPS科研費新学術領域研究「機能コア科学」(JP19H05792)の支援を受けて実施したものである。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 松平恒昭,小川貴史,北岡諭,竹内美由紀, 馮斌, 柴田直哉, 幾原雄一,” 高温酸素ポテンシャル勾配下におけるアルミナの結晶粒界と双晶界面を介した物質移動の比較”, 日本セラミックス協会 第35回秋季シンポジウム(ハイブリッド),令和4年9月15日.
  2. 北岡諭,松平恒昭,小川貴史,竹内美由紀, 馮斌, 柴田直哉, 幾原雄一,” 高温酸素ポテンシャル勾配下におけるアルミナ中の物質移動に及ぼす粒界構造の影響”, 日本金属学会 2022年秋期第171回講演大会,令和4年9月22日.
  3. S. Kitaoka, T. Matsudaira, T. Ogawa, M. Takeuchi, N. Shibata, Y. Ikuhara, ”The Effects of Yttrium Segregated at Grain Boundaries on Mass Transfer in Polycrystalline Alumina under Oxygen Potential Gradients at High Temperatures”, ISHOC-2022 (International Symposium on High-temperature Oxidation and Corrosion 2022), 2022/10/16.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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