【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.05.13】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22UT0207
利用課題名 / Title
NanoSIMSによる隕石中の炭酸塩鉱物の年代測定
利用した実施機関 / Support Institute
東京大学 / Tokyo Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
隕石,質量分析/Mass spectrometry,質量分析/Mass spectrometry
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
藤谷 渉
所属名 / Affiliation
茨城大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
菅原慎吾,山口亮
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
竹内美由紀
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
非晶質炭酸塩を経て合成したMn, Cr添加ドロマイト(CaMg(CO3)2)に対して、東京大学の高空間分解能二次イオン質量分析計(NanoSIMS 50L)を用いて、Mn, Crの感度を評価した。また、その結果に基づいて天然ドロマイトのMn/Cr比をSIMSにより決定する手法を開発した。
実験 / Experimental
高濃度のNa2CO3水溶液とMn, Cr, Feを添加したCaCl, MgCl水溶液を混合することで非晶質のCa,Mg炭酸塩を得た(Sugawara et al., 2022)。非晶質炭酸塩は20 barのCO2雰囲気下で400度程度に加熱し、ドロマイトに結晶化させた。得られた試料は樹脂包埋して研磨し、SIMS用の分析試料とした。帯電を防止するため、試料の表面には炭素蒸着を行った。試料は事前に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、試料のMn, Cr, Fe含有量は電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)で事前に定量しておいた。以上は課題申請者および共同研究者の所属機関である茨城大学および国立極地研究所で行った。SIMS分析には東京大学の超微量元素計測システム (UT-306):NanoSIMS 50Lを利用した。電流値1 nA, ビーム径 5 μmに設定した16O-一次イオンビームを試料表面に照射し、44Ca+, 52Cr+, 53Cr+, 55Mn+, 57Fe+の各二次イオンを検出した。磁場を変化させて測定を行うことで、同じ検出器で52Cr+, 53Cr+, 55Mn+を計測した。測定時間はそれぞれ3秒、5秒、3秒で、磁場を変化させる際にwaiting timeを2秒設定した。44Ca+, 57Fe+は52Cr+と同時に、それぞれ異なる検出器で計測した。得られた55Mn+/52Cr+比と既知の55Mn/52Cr比を比較し、SIMSにおけるMn/Crの感度比を決定した。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig. 1に合成ドロマイト試料の反射電子像を示す。像の中心はSIMSによる分析痕であり、電流値1 nAの16O-ビームのとき5μm 程度のスポットで分析できていることを表している。Fig. 2は得られたMn/Crの感度比(RSF = SIMSにより得られた55Mn+/52Cr+と既知の55Mn/52Crとの比)をFe含有量の関数として示す。Mn/Cr感度比の値はFe含有量が0 mol%から5.6 mol%まで増加するにつれて約0.8から1.0まで変化することが明らかになった。今後は、隕石や小惑星リュウグウ試料に含まれているドロマイトの53Mn-53Cr年代測定(半減期370万年)にこの結果を応用していく。この年代測定法では、試料のMn/Cr比を定量する必要があるが、SIMSによる定量はこれまで困難であった。本研究による結果は、得られたMn/Cr感度比を用いればSIMSによりMn/Cr比を定量するのが可能であることを示す一方、未知試料のFe含有量も事前に定量しておく必要があることを示唆している。さらに、これまでの研究によるドロマイトの年代測定では、カンラン石(Mg2SiO4)やカルサイト(CaCO3)などを用いてMn/Cr感度比が評価されてきたが、その方法で得られた53Mn-53Cr年代には系統的な誤差を含んでいることが推測される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1. 合成ドロマイト試料の反射電子顕微鏡像。中心の穴はNanoSIMS 50Lの分析痕。
Fig. 2. Mn/Crの感度比(RSF)とFe含有量との関係
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献 S. Sugawara et al., ACS Omega, 7, (2022) 44670–44676.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Mn-Cr 年代測定に向けたMn-,Cr-,Fe-含有ドロマイトの合成と相対感度係数の評価
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件