利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.04.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22TU0145

利用課題名 / Title

細胞バイオメカニクス研究用デバイスの開発 / Development of microdevices for cellular biomechanics study

利用した実施機関 / Support Institute

東北大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials

キーワード / Keywords

細胞バイオメカニクス、細胞牽引力,リソグラフィ/Lithography,MEMSデバイス/ MEMS device,バイオセンサ/ Biosensor


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

大橋 俊朗

所属名 / Affiliation

北海道大学大学院工学研究院

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

大橋俊朗

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

戸津健太郎, 八重樫光志朗

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

TU-057:レーザ描画装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

膵臓腺癌(PDAC)とは膵臓癌の90%を占める癌である.膵臓癌は膵臓という臓器の特性上,超音波検査ですら発見が難しいため,早期発見が難しく血液検査でも有用な検査方法は存在しない.さらに,膵臓癌はリンパ管や血管を通じて他の臓器への転移がおこりやすい.膵臓癌は遺伝子変異が多く有用な抗がん剤も少ない上,治療したとしても一部癌が残っていれば再発する可能性も高い.今現在,膵臓癌のついての治療法は膵臓癌の進行度によって異なる方法が行われている.PDACの患者の平均生存期間は12カ月未満であり,5年以上生存する確率は10%以下である.膵臓癌の正確な原因は不明で様々な危険因子によって引き起こされていると考えられており,遺伝的・環境的要因としては年齢,性別,民族性,血液型,などがあり生活的要因としては,喫煙,食生活,飲酒,肥満,膵炎などがあげられる.PDACは、難治であり件数も増えていることからこれから先,社会的・経済的にも大きな負担となると考えられる.そこで,本研究では難治である膵臓腺癌由来細胞(PANC-1 cells)の治療法を確立させることや早期発見に資するためPANC-1の力学特性を明らかにすることを目的とし,マイクロピラー基質を用いてPANC-1の細胞牽引力を計測した.

実験 / Experimental

レーザ描画装置(Heidelberg Instruments、DWL2000CE)を用いてフォトマスクを作製した後、フォトマスクを通じて紫外線を露光することでフォトレジストにパターンを転写し現像工程を経てネガティブレジストによるモールドを作製した(図1).PDMSにより型抜きを2回行うことでマイクロピラー基質(マイクロピラーの直径は3 µm,高さは8µm程度)を完成させた.細胞をマイクロピラー基質上に培養すると,マイクロピラーは細胞牽引力(細胞が基質に対して発生する力)によってたわみ,この撓みを計測することで細胞牽引力を推定するものである.

結果と考察 / Results and Discussion

作製されたマイクロピラーは形が円柱型ではなくテーパ柱型であったため、有限要素法解析を用いてマイクロピラーのヤング率を計算しその値を用いて細胞牽引力を推定した.正常組織のヤング率に近いバネ定数を有するマイクロピラーとしてk2(131.32 nN/m)を用い,がん組織のヤング率に近いばね定数を有するマイクロピラーとしてk1(58.46 nN/m)用いて比較した結果を図2に示す.よりばね定数が大きいマイクロピラーを用いた場合,細胞牽引力も大きくなった.正常組織を模倣したマイクロピラーを用いた細胞牽引力が大きくなった理由として考えられるのは,マイクロピラーの基質のばね定数が大きいほど,細胞の移動速度が大きくなり細胞牽引力も大きくなったと考えられる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 マイクロピラー基質の作製方法[1]



図2 マイクロピラー基質上の細胞牽引力


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・参考文献 [1] Tan, J.L., et al., 2003. Cells lying on a bed of microneedles: an approach to isolate mechanical force. Proceedings of National Academy of Science of the United States of America 100, 1484–1489.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 菊地陸太,大橋俊朗,Silvia Marino,Diana Massa, “ヒト膵臓腺癌由来細胞の牽引力とヤング率計測” ,日本機械学会北海道支部第60回講演会, 令和5年3月4日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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