【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.04.25】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22TU0094
利用課題名 / Title
ALDを用いた酸化チタンナノチューブ薄膜への貴金属成膜 / Noble metal deposition on TiO2nanotube thin films using ALD
利用した実施機関 / Support Institute
東北大学 / Tohoku Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
ALD
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
但木 大介
所属名 / Affiliation
東北大学電気通信研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
阿部宏之
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
森山雅昭,菊田利行
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
TU-169:多元材料原子層堆積(ALD)装置
TU-211:プラズマクリーナー
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
開発中のガスセンサの感ガス部である酸化チタンナノチューブ薄膜に,原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)法で触媒となる白金微粒子を坦持し,感度や応答時間などのセンサ特性の向上を実現している。ALD法で白金を微粒子形状で坦持するためには,酸化チタンナノチューブ薄膜表表面が親水性でなければならないことがわかっている1)。酸化チタンナノチューブ薄膜表面の親水化処理の違い(方法や処理条件)による白金微粒子の坦持状態の違いを調べた結果を報告する。
実験 / Experimental
シリコン基板上にスパッタで成膜したチタン薄膜を陽極酸化して,膜厚1 µmの酸化チタンナノチューブ薄膜を形成した2)。親水処理条件ごとに,13枚の酸化チタンナノチューブ薄膜基板を用意した。
多元材料原子層堆積装置(テクノファインALK-600)のロードロック室内,及びプラズマクリーナー(ヤマト科学 PDC210)で酸素プラズマを発生させて,酸化チタンナノチューブ薄膜表面の親水化処理を行った。多元材料原子層堆積装置のロードロック室には,Fig. 1(a)に示すようなC型の電極が設置されている。この電極と基板ホルダー間にRF電力50 Wを印加し,酸素圧力50 Paで10分間,親水化処理した。また,プラズマクリーナーには,平行平板電極が設置されている。RIEモードに設定し,平行平板電極間にRF電力50 W,及び300 Wを印加し,酸素流量30 mL/min,及び60 mL/minで10分間,親水化処理した。プラズマクリーナーは,原子層堆積装置とは異なる部屋に設置されているため,親水化処理後,基板を樹脂製のケースに入れて運搬した。
親水化処理後,多元材料原子層堆積装置で,13枚の基板をFig. 1(b)に示すように基板ホルダー上に配置して,白金微粒子の坦持を行った。原料ガスには,トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)プラチナ(IV),反応ガスには,酸素を使用した。
白金微粒子の坦持状態の観察には,電気通信研究所 研究基盤技術センター 評価部の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM) 日立SU-8000を使用した。微粒子の坦持状態を定量的に解析するため,フリーソフトウエアのImage Jを用いて,粒子径分布や被覆率の導出を試みたが,酸化チタンナノチューブの穴や表面の凹凸によるコントラスの影響を受け,正確な導出ができなかった。そのため,本報告では,SEM像からの定性的な判断で考察を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
多元材料原子層堆積装置のロードロック室内で親水化処理を行った後に,処理チャンバー内で白金微粒子を坦持した酸化チタンナノチューブ薄膜のSEM像をFig. 2に示す。13枚の基板に白金微粒子の坦持を行ったが,Fig. 1(b)に示したAからEの位置での坦持結果のみ示した。黒いコントラストが酸化チタンナノチューブの穴で,白い粒子状のコントラストが白金微粒子である。SEM像から定性的に判断して,Fig.2 (a),(c),(e)では,ほぼ同じ粒径,密度で白金微粒子が坦持されているが,これらに比べて密度が(b)では疎(微粒子の表面被覆率が小さい)に,(d)では密(微粒子の表面被覆率が大きい)に白金微粒子が坦持されている。さらに,プラズマクリーナーを用いて,RF電力50 Wと300 Wで親水化処理を行った後に,多元材料原子層堆積装置の処理チャンバー内で,白金微粒子を同一条件で坦持した酸化チタンナノチューブ薄膜の走査電子顕微鏡像をFig. 3とFig. 4にそれぞれ示す。Fig. 2の結果と同様に,Fig. 3とFig. 4の(a),(c),(e)では,ほぼ同じ粒径,密度で白金微粒子が坦持されているが,これらに比べて密度が(b)では疎に,(d)では密に白金微粒子が坦持されている。Fig. 1(b)に示すように,Bの基板位置では,ロードロック室内のC型の電極が切れているため,B以外の基板位置よりも親水化処理の効果が少ないことが推測される。しかしながら,プラズマクリーナーで親水化処理した場合にも,同様の坦持結果であったことから,親水化処理の効果が原因ではないと考えられる。多元材料原子層堆積装置では,白金の原料ガスが,基板Dの位置から導入される。原料ガスが導入される基板Dの近傍では,原料ガスの濃度が高く,反応が促進され,ガスの導入位置から離れている基板Bの位置よりも微粒子の密度が大きくなったと考えられる。プロセス条件の1つである原料ガス暴露時間を長くして坦持が行われるチャンバー内での原料ガス濃度を均一にすれば,微粒子の密度が均一になると考えられる。また,今回の実験での3つの親水化処理条件では,SEM像から判断して,白金微粒子の坦持状態に違いが見られなかった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1 Photograph of C shape electrode and substrate holder in load lock of ALD equipment (a) and schematic diagram of the position of substrates (b).
Fig. 2 SEM images of titanium oxide nanotube thin film surface hydrophilized by O2 plasma in load lock chamber of ALD equipment.
Fig. 3 SEM images of titanium oxide nanotube thin film surface hydrophilized by O2 plasma at plasma dry cleaner equipment. The condition of O2 plasma is RF power of 50 W and oxygen flow rate of 30 mL/min.
Fig. 4 SEM images of titanium oxide nanotube thin film surface hydrophilized by O2 plasma at plasma dry cleaner equipment. The condition of O2 plasma is RF power of 300 W and oxygen flow rate of 60 mL/min.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献1) Han-Bo-Ram Lee et al., Chem. Mater. 24, (2012) 4051−4059. 10.1021/cm3014978
・参考文献2) H. Abe et al., Sensors & Actuators: B. Chemical 321, (2020) 128525. 10.1016/j.snb.2020.128525
・本研究においてご助言・技術的支援を賜りました、マイクロシステム融合研究開発センターの戸津健太郎教授、
森山雅昭准教授,菊田利行様に厚く御礼申し上げます。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Kazuki Iwata, Application of neural network based regression model to gas concentration analysis of TiO2 nanotube-type gas sensors, Sensors and Actuators B: Chemical, 361, 131732(2022).
DOI: 10.1016/j.snb.2022.131732
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- D. Tadaki, K. Iwata, H. Abe, T. Ma, A. Hirano-Iwata, Y. Kimura, S. Suda, M. Niwano, “Development of a highly sensitive gas sensor using TiO<sub>2</sub>-nanotube film.” 13th International Workshop on Nanostructures & Nanoelectronics (IWNN-13), March 8, 2023.
- ナノ材料と人工知能を利用した高精度の一酸化炭素センサを開発~ヒトの呼気による肺疾患の検査・早期診断への応用が加速~,東北大学・宮城県産業技術総合センター・チェスト株式会社,2022年5月12日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件