利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0087

利用課題名 / Title

窒化ホウ素ナノチューブのミクロ構造観察

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

ナノマテリアル,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

Hirokane Yuji

所属名 / Affiliation

日立金属株式会社グローバル技術革新センター先端材料開発部

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

柴山 環樹,中川 祐貴

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-102:電界放射型分析電子顕微鏡
HK-101:ダブル球面収差補正走査透過型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の高温酸化雰囲気下における損傷メカニズムの解明を目的として、TEMおよびSTEMを用いて、熱処理前後で同一粒子を観察するための適切な方法、条件を見出し、その形態や化学組成の変化を確認した。

実験 / Experimental

全ての観察試料は副生成物を含むBNNTを溶媒に簡易的に分散したものを使用1.      STEM(Titan3)による事前観察ü   加速電圧:80kVü   観察内容:STEM観察(ABF-, HAADF-STEM)、STEM-EELS解析(B, C, N, O mapping)2.      加熱前後の同一粒子の観察条件検討TEM観察(加速電圧:200kV)観察内容:低倍観察①      通常グリッド使用ü   使用グリッド:Niインデックスグリッド(大気加熱(800℃、1時間)処理済み)、Ptグリッドü   試料加熱条件:800℃(10℃/min昇温、以下同じ)1時間保持 or 保持時間なし②      膜付きグリッド使用ü   使用グリッド:SiO2膜(膜厚8nm)付き、Si3N4膜(膜厚8nm)付きü   試料加熱条件(SiO2膜):800℃(保持時間なし)ü   試料加熱条件(Si3N4膜):600℃(30分保持)、追加で700℃(30分保持)、追加で800℃(保持時間なし)3.      STEM(Titan3)による観察(加熱前後比較)ü   加速電圧:80kVü   使用グリッド:Si3N4膜(膜厚8nm)付きü   試料加熱条件:700℃(30分保持)ü   観察内容STEM観察(ABF-, HAADF-STEM)、STEM-EELS解析(B, C, N, O mapping) 4.      高倍観察条件検討ü   使用TEM:STEM(JEM-2100)ü   加速電圧:200kVü   使用グリッド:孔開きSi3N4膜付きü   試料加熱条件:700℃(30分保持)、追加で700℃(30分保持)、追加で700℃(1時間保持)ü   観察内容:高倍観察、TEMモード使用 5.      STEM(Titan3)による観察(加熱前後比較)2回目ü   加速電圧:80kVü   使用グリッド:孔開きSi3N4膜付き ü   観察内容:STEM観察(ABF-, HAADF-STEM)、STEM-EELS解析(B, C, N, O mapping)

結果と考察 / Results and Discussion

1. STEM(Titan3)による事前観察 太さ数nmで数層のウォールを持つBNNTの高分解観察可能であることを確認 チューブに内部や外壁に付着するアモルファス状の不純物を確認 STEM-EELS分析の結果、これらの不純物の主成分が炭素であることが分かった合成時の副生成物や溶媒の吸着成分の電子線による炭化の可能性がある
2. 加熱前後の同一粒子の観察条件検討① 通常グリッド使用グリッドの種類(NiまたはPt)を問わず、加熱前後で同一箇所の観察は可能であったが、粒子の変形が大きく同一粒子の観察は困難であった。本試料は、副生成物としてホウ素粒子を含んでいる。大気中で加熱すると、このホウ素粒子が酸化され、さらに生じた酸化ホウ素が溶融し、その後室温まで冷却される過程で凝固が起こる。このような反応に伴い、グリッドに付着した粒子の位置が変化したと考えられる。
② 膜付きグリッド使用SiO2支持膜付きグリッドを用いて、加熱前後で同一粒子の観察に成功。熱処理によって多くのナノチューブがダメージを受けていることわかる。特に、不純物や、チューブが交差している部分では損傷が大きい。一方で、加熱温度に対して損傷が大きすぎる印象があり、SiO2と反応している可能性あり。加熱処理による支持膜との反応と温度依存性について調査するために、Si3N4支持膜付きグリッドを用いて、600℃、700℃、800℃の条件で加熱を行い、その前後で反応の様子を観察した。600℃の条件では、ナノチューブに目立った損傷は起こらなかった。700℃では、ナノチューブの中から破裂したように反応している箇所や途切れるように反応している箇所が観測された。800℃において、別の損傷が発生するふるまいは観察されなかった。また、SiO2膜を用いて800℃熱処理後で観察したときより、反応が少なかったことから、ナノチューブとSiO2との反応が示唆される。

3. STEM(Titan3)による観察(加熱前後比較)2の結果から、S3N4支持膜付きグリッドを用いて、700℃の加熱条件で観察を行った。しかし、加熱後消えたチューブが多く同一粒子の観察が困難であった。STEM-EELSマッピングの結果、B, C, Nのコントラストが観えず、加熱前はコントラストが観えなかったOが加熱後ではナノチューブから網目状にコントラストが付いていることが分かる。これは、ナノチューブが酸化し、酸化ホウ素融液の痕跡であると考えられる。同じ加熱条件の2の時より、激しい反応が起こっている。使用グリッドの膜が汚染、酸化されていた可能性が考えられる。また、支持膜付きグリッドでは、膜のバックグラウンドが大きくSTEMにおいても高倍の観察が難しいことが分かった。

4. 高倍観察条件検討ミクロな反応メカニズム解明のために、高倍観察条件を検討した。孔開きSi3N4膜付きグリッドを利用した。700℃で加熱時間を増やしていく中で、低倍では観察できなかったナノチューブの表面の凸凹になる様子が観察できた。また、加熱時間の増加によって破断するナノチューブもあった。Si3N4膜上よりも反応が少ない印象であり、Si3N4膜も反応に寄与する可能性があると考えられる。


5. STEM(Titan3)による観察(加熱前後比較)2回目4の観察条件(孔開きSi3N4膜付きグリッド使用、加熱条件:700℃、1時間保持)にてSTEM観察を行った。まず加熱前の観察結果として、1の観察結果よりナノチューブを覆うアモルファス成分が増えナノチューブが観察しづらくなっていた。この成分はC, Oを含むことが分かった。長時間(半年以上)溶媒に入れておくことで吸着が進行した可能性がある。加熱することで、この付着成分の量が減ることが観察された。一方で、ナノチューブのウォールに変化はなく、4で観察した熱処理によるナノチューブ表面の凹凸化がこの付着物成分の変化に由来するものであると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図 1 BNNTの高倍観察



図 2 不純物が付着したBNNT



図 3 加熱前後の同一箇所の観察結果



図 4 加熱処理前後の同一粒子の観察結果(SiO2支持膜付きグリッド)



図 5 加熱処理前後の同一粒子の観察結果(S3N4支持膜付きグリッド)



図 6 加熱前後のSTEM観察結果およびSTEM-EELSマッピング



図 7 孔開きSi3N4膜付きグリッドに試料を担持した様子



図 8 熱処理時間を増やしたときの同一粒子の高倍観察



図 9 加熱前後のSTEM観察像


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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