【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22HK0073
利用課題名 / Title
高温プロセスにおける塩化水素の二次的反応の機構解明に関する研究
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
電子分光,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
坪内 直人
所属名 / Affiliation
北海道大学工学研究院附属エネルギー・マテリアル融合領域研究センター
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
望月 友貴
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
石炭の熱分解・ガス化や鉄鉱石の焼結といった高温プロセスで発生するHClの一部は、炭素質残査や未燃炭素と反応して固相中に取り込まれる。それゆえ、これらのプロセスで生成する炭素物質中の塩素の化学形態は調べられており、一部は塩素化芳香族構造として存在することが示唆されている1)。これは、発生したHClと炭素の二次的反応の起こりを意味するが、炭素、特に反応に直接関与する表面活性サイトの役割は理解されていない。そこで、本研究では、フェノール樹脂から純炭素を調製し、HClとの反応に及ぼす酸素賦活や金属塩担持の影響を調べるとともに、生成塩素種の組成を解明して、塩素化芳香族の生成機構を明らかにすることを目的とした。
実験 / Experimental
フェノール樹脂をHe中950˚Cで1h加熱して炭素を調製し、これを20%O2/He中500˚Cで所定時間賦活した。金属塩担持では100min賦活した炭素(表面積:630m2/g)とK、Ca、Cu、Znの酢酸水溶液あるいはエタノール溶液を室温で混合した。担持量は金属ベースで0.4wt%である。炭素活性サイトの定量では、試料をHe中2˚C/minで昇温脱離(TPD)し、COとCO2をGCで分析した。HClと炭素の反応では、所定温度に保持した試料に100ppmHCl/N2を流通し、HClの濃度変化をIRで調べた。反応後、N2中で試料を急冷し、TPD法により脱離するHClを分析した。HCl反応後の表面塩素種の形態はXPS法で調べ、結合エネルギーはIn2O3のIn3d5/2(444.9eV)で補正した。
結果と考察 / Results and Discussion
高温プロセスにおけるHClの二次的反応を理解するため、炭素上に100ppmHCl/N2を主に500˚Cで流通した結果、炭素はHClと反応するが(図1)、その量は炭素活性サイト量が増加すると増大し、炭素にCu、Ca、Znを添加すると反応量は著しく増加した(図2)。Cu担持炭素のXPS測定より、生成した表面塩素種の多くは塩素化芳香族として存在し、その量は炭素単独下よりも多かった(図3)。以上より、HClはCu存在下では炭素サイトと容易に反応し、塩素化芳香族に変化することが明らかとなった。尚、炭素表面の含酸素官能基から生成した活性サイトをC()で示すと、そのサイトとHClの反応は以下のように表現できる。
C( )+HCl→C(HCl) (1)、2C( )+HCl→C(Cl)+C(H) (2)
C(HCl)は活性サイトに化学吸着したHClを表わし、(2)式はHClが解離して異なるサイトに取込まれることを意味する。これらが塩素化芳香族としてXPSで観測されたと思われる。Cu存在下では有機塩素の生成量が増加したが、これは、CuによりHClの解離が促進され(2)式が起こりやすくなったため、あるいは、生成した塩化銅がCl源として効率的に働いたためかもしれない。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 HClと炭素物質の反応挙動
図2 HCl反応量と活性サイト量の関係
図3 HCl反応後のCl2pXPSスペクトル
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
1) Tsubouchi, N.; Kasai, E.; Kawamoto, K.; Noda, H.; Nakazato, Y.; Ohtsuka, Y. Tetsu-to-Hagané 2005, 91, 751.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件