利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0061

利用課題名 / Title

層状ペロブスカイト酸化物強誘電体の局所構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

強誘電体材料・デバイス,電子顕微鏡/Electron microscopy,電子回折/Electron diffraction,セラミックスデバイス/ Ceramic device,スピン制御/ Spin control,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

藤田 晃司

所属名 / Affiliation

京都大学 大学院工学研究科 材料化学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

川崎 龍志,Wei YI

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

大多 亮

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-101:ダブル球面収差補正走査透過型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

近年、Ruddlesden−Popper (RP) 相やDion−Jacobson (DJ) 相のようなペロブスカイト関連層状酸化物において、酸素八面体の回転や傾斜によって結晶構造の反転対称性が破れ、圧電性や強誘電性が発現することが理論と実験の両面から示されている。特に、酸素八面体の回転と傾斜に基づく二種類の構造歪みにより副次的にカチオンの極性変位が生じ強誘電性が発現する場合、強誘電相転移を駆動する主秩序変数は非極性構造歪み (酸素八面体の回転と傾斜) に関するパラメーターであり、電気分極は従秩序変数となる。このような強誘電体はハイブリッド間接型強誘電体と呼ばれ、最近研究が盛んに行われている。本研究では、新規強誘電体の探索ため、n = 2 RP型La2SrSc2O7の構造-特性相関を調べた。

実験 / Experimental

La2SrSc2O7は通常の高温固相反応法を用いて作製した。得られた試料に対して放射光X線回折 (SXRD) と粉末中性子回折 (NPD) 測定を行った。回折データに対してRietveld解析を行い、結晶構造を精密化した。結晶構造の反転対称性の破れを観察するため、光源としてNd: YAGピコ秒パルスレーザー (λ = 1064 nm) を用いて、光第二高調波発生 (SHG) を測定した。加えて、走査型透過電子顕微鏡 (STEM) 観察を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

既報ではLa2SrSc2O7は室温で中心対称構造 (空間群Fmmm) をもつと報告されていたが[1]、最近の構造解析では極性構造の可能性が示唆されている[2]。今回、室温でのSXRDパターンとNPDパターンの指数付けと消滅則から、空間群はFmmmとは異なり、直方晶系のA21am (非中心対称、極性) かAmam (中心対称、非極性) のどちらかに絞られた。加えて、室温でSHGが観測されたことから、室温相の結晶構造はA21amに属すると決定された。構造精密化の結果、RP型構造のペロブスカイト層と岩塩層にはともにLa3+とSr2+が存在していることがわかった。このようなAサイトカチオンのランダム分布は、STEMの高角環状暗視(HAADF)像と元素マッピングからも確認された。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 [110]入射の高角環状暗視野STEM像 (左) とエネルギー分散型X線分析装置 (EDS) マッピング (右)。図にはLa2SrSc2O7の結晶構造の模式図を表す。橙色と水色/黄色の球はそれぞれScとLa/Sr原子を示す。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

【参考文献】[1] Y. A. Titov et al., Dopov. Nats. Akad. Ukr., 155 (2009); [2] A. R. Sharits (2016). [Doctoral dissertation, Ohio State University].
【謝辞】本研究の一部は、文部科学省委託事業ナノテクノロジープラットフォーム課題として北海道大学 微細構造解析プラットフォームの支援を受けて実施されました。HAADF-STEM観察では北海道大学超高圧電子顕微鏡室の大多亮氏に多大なる支援を受けました。ここに深く感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 川崎龍志、Zhang Yang、Yi Wei、藤田晃司、赤松寛文、鳥居周輝 「ルドルスデン-ポッパー型スカンジウム酸化物における強誘電性」日本セラミックス協会 2023年年会(口頭発表)2023年3月
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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