【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22HK0051
利用課題名 / Title
特殊環境下に最適な防錆剤の研究
利用した実施機関 / Support Institute
北海道大学 / Hokkaido Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
X線回折/X-ray diffraction,電子分光,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大谷 恭平
所属名 / Affiliation
福島研究開発部門 廃炉環境国際共同研究センター 炉内状況把握ディビジョン 特殊環境腐食研究グループ
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
吉田すずか,鈴木啓太,坂入正敏
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
循環用配管等における淡水中の炭素鋼の腐食は設備保全の観点から重要な課題である.炭素鋼の腐食速度は主に溶存酸素濃度や塩化物イオン濃度等に依存すると考えられており,これらの影響を抑制する腐食抑制剤(インヒビター)が開発されてきた.モリブデン酸ナトリウム(Mo酸二Na)は酸素を含む中性溶液中で有効な毒性の低い酸化型インヒビターとして報告されているが,塩化物イオン存在下では腐食抑制に多量の添加を要するため環境負荷や保全費用の観点から使用量を低減する必要がある.これまでの利用者らの研究から排水基準が無く毒性の低いAlイオンはMo酸二Naの腐食抑制効果を向上できると考えられるが,これまでにAlイオンとMo酸二Naにより形成した炭素鋼表面の皮膜に関する研究は報告されていない.そこで、北海道大学光電子分光研究室の光電子分光分析装置(XPS)を用いて炭素鋼表面に形成した保護皮膜の分析を実施した。
実験 / Experimental
実験方法:NaCl溶液にインヒビターである乳酸AlとMo酸二Naを混合して添加した溶液に炭素鋼試験片を2時間浸漬して分析用試料とした。乳酸AlとMo酸二Naの混合比率はモル比で1:1、3:1、1:0の3種類で実施した。XPSを用いて表面皮膜のワイドスペクトルを取得した後、深さ方向のデプスプロファイルを測定した。
結果と考察 / Results and Discussion
利用者の所属機関において実施した炭素鋼試験片の観察および浸漬腐食試験により算出した腐食減量より、乳酸AlとMo酸二Naを3:1の割合で添加した溶液は添加していない溶液に比べて腐食速度が抑制されていることは明らかになっていた。そこで、北海道大学光電子分光研究室のXPSによる表面ワイドスペクトル測定より、最表面にはAl、Mo、O、Cが存在していることを示すピークが検出されたが、素地炭素鋼由来のFeのピークは検出されなかった。そのため、保護皮膜は鉄を十分に覆い隠している可能性が考えられる。そこで、次に深さ方向のデプスプロファイルを測定した。デプスプロファイルの結果より、炭素鋼表面にはFeを含まずAlおよびMoからなる厚さおよそ100 nmの酸化物もしくは水酸化物被膜が形成していることが明らかになった。また乳酸AlとMo酸二Naを1:1もしくは1:0のモル比で混合添加した溶液の腐食速度は3:1のケースに比べて速く、XPSのデプスプロファイルの結果から3:1の場合と異なり表面からFeを含んでいることが明らかとなった。そのため、1:1と1:0の溶液では3:1に比べると素地のFeが検出されるような保護性の低い被膜が形成していたことが明らかになった。以上より、3:1の比率の溶液において被膜は炭素鋼にもともと存在する酸化物被膜がNaCl溶液中で破壊される前に表面にAlおよびMoからなる被膜が形成していると考えられ、このような保護被膜が形成することに起因して腐食抑制効果を発揮したと考えられる。以上より、XPSを用いた分析により表面に形成している保護皮膜の組成や素地炭素鋼の溶出について明らかになり、乳酸AlおよびMo酸二Naにより炭素鋼の腐食速度が抑制される理由を解明することができた。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Corrosion mechanisms of Carbon Steel in the Simulated Air/Solution Interface
- マイクロメートルオーダーで制御された流動液膜下における炭素鋼の腐食挙動
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件