利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.28】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22HK0042

利用課題名 / Title

環境浄化のための新規な炭素系材料および関連材料の創製と評価

利用した実施機関 / Support Institute

北海道大学 / Hokkaido Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

電子分光,表面・界面・粒界制御/ Surface/interface/grain boundary control


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

高田 知哉

所属名 / Affiliation

公立千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

原子 藍花,岡本 恵太朗,漆舘 琉介,中川 翼,行澤 桃子

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

鈴木啓太

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術補助/Technical Assistance


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

HK-201:X線光電子分光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

多孔質炭素などの炭素系素材に表面修飾などの構造改変を施し、環境汚染物質の吸着・分解特性を向上させた材料の創製を目指す。作製した材料の構造を詳細に解析し、環境浄化特性と構造改変との関連について検討する。併せて、窒化炭素などの関連物質についても、同様に環境浄化特性と構造改変との関連を調べる。

実験 / Experimental

1. シランカップリング処理による多孔質炭素の表面修飾と硝酸イオン吸着への応用
細孔径が10〜150nmに制御された多孔質炭素を、アミノプロピルトリエトキシシランのエタノール溶液に加えて加熱し、アミノシラン基による表面修飾を行った。続いて、表面のアミノ基を塩酸塩化した。表面修飾前後での多孔質炭素の元素分析、化学結合状態分析をX線光電子分光測定(XPS)により行った。表面修飾前後の多孔質炭素を吸着剤として、水溶液中の硝酸イオン吸着を観察し、吸着容量に対する表面修飾の効果を調べた。


2.グラファイト状窒化炭素の光触媒反応性に対する電子線照射の効果
メラミンを空気中で加熱重合して得られたグラファイト状窒化炭素(g-C3N4)を樹脂製バッグに封入し、所定の線量での電子線照射を行った。照射前後のg-C3N4の元素分析、化学結合状態分析をX線光電子分光測定(XPS)により行った。照射前後のg-C3N4を、有機色素(ローダミンB)の水溶液に加えて酸素ガス存在下にて可視光照射を行い、可視光触媒反応による色素の分解(濃度低下)を追跡した。

結果と考察 / Results and Discussion

1. シランカップリング処理による多孔質炭素の表面修飾と硝酸イオン吸着への応用
XPSの結果より、アミノシラン塩酸塩により表面修飾されていることと、表面官能基の量が比表面積に依存することが確認できた。この表面修飾により、硝酸イオンの吸着容量が未修飾試料と比べて大きく増加し、アミノシラン塩酸塩修飾が吸着剤の特性向上に有効であることがわかった。この吸着容量も比表面積に依存し、比表面積が大きい(表面官能基の量が多い)ほど吸着容量も増加することが確認された。硝酸イオン吸着前後でのXPS測定結果から、吸着される硝酸イオンは塩化物イオンとのイオン交換により吸着剤表面に結合することが確かめられた。以上の知見は、新規な炭素系硝酸イオン吸着剤の開発の一助となるものと期待される。

2.グラファイト状窒化炭素の光触媒反応性に対する電子線照射の効果
電子線照射前後でのg-C3N4のXPS測定より、電子線照射に伴って環状構造中の窒素脱離やC-N結合の切断による欠陥生成が進行することがわかった。これに伴い、粒子の比表面積も影響を受けることが確かめられた。照射線量が大きいほど窒素脱離による欠陥生成は進行するが、比表面積は比較的低線量の照射では照射前に比べて増加する一方、大線量の照射では却って減少することがわかった。可視光触媒分解による色素の濃度変化の観察では、g-C3N4への電子線照射により光触媒反応速度が大きくなるが、過大な線量を照射すると反応速度が減少した。これらの結果は、電子線による欠陥生成により光触媒反応活性が向上する一方、可視光照射に対して有効な面積が減少することで全体としての光触媒反応性が低下する場合があることを示す。したがって、電子線によるg-C3N4の光触媒反応性改善に際しては最適な照射条件が存在することがわかる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究でのXPS測定に際してご協力をいただきました、北海道大学光電子分光分析研究室の鈴木啓太技術専門職員に感謝いたします。また、本研究での実験に含まれる細孔構造評価にてご協力をいただきました、北海道大学触媒科学研究所の福岡淳教授、下田周平技術専門職員に感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Aika Harako, Effects of the electron-beam-induced modification of g-C3N4 on its performance in photocatalytic organic dye decomposition, Chemical Physics Letters, 813, 140320(2023).
    DOI: 10.1016/j.cplett.2023.140320
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 行澤桃子, 下田周平, 鈴木啓太, 福岡淳, 高田知哉 "アミノシラン修飾メソポーラスカーボンによる硝酸イオン吸着回収", 化学系学協会北海道支部2023年冬季研究発表会(札幌), 令和5年1月24日
  2. 原子藍花, 下田周平, 鈴木啓太, 福岡淳, 高田知哉 "グラファイト状窒化炭素への電子線照射による構造変化と光触媒反応性との関係", 日本化学会第103春季年会(野田), 令和5年3月24日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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