【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.29】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NU0237
利用課題名 / Title
導電性高分子デバイスの作製と評価
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
膜加工・エッチング,高分子薄膜,熱電変換,ホール効果,膜加工・エッチング/Film processing and Etching
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田中 久暁
所属名 / Affiliation
名古屋大学大学院工学研究科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
伊藤駿一郎,劉峻峰
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub),技術相談/Technical Consultation
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
NU-211:フェムト秒レーザー加工分析システム
NU-206:電子線露光装置
NU-231:マスクレス露光装置
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本課題では、フレキシブルな電子材料として注目される導電性高分子の電気化学ドープ膜を対象に、電荷輸送や熱電変換特性の解明に取り組んだ。導電性高分子の薄膜では、構造秩序の高い結晶領域と、アモルファス的な境界領域が混在するため、電荷輸送経路における局所構造を反映した複雑な電荷輸送特性を示す。本研究では、電気化学的なキャリアドーピングと薄膜のHall効果測定、ゼーベック効果測定を組み合わせ、高分子ドープ膜の電荷輸送特性を調べた。そのためには薄膜トランジスタ(TFT)素子の電極形状に合わせた高分子膜の精密な成型加工が必要であり、本課題では名古屋大学先端研にあるフェムト秒レーザー加工システムを用いて加工を行った。
実験 / Experimental
本研究では、基板上にフォトリソグラフィー、あるいはメタルマスクを用いて電極パターンを形成し、その上に導電性高分子(PBTTT)薄膜を塗布法により製膜した。製膜した高分子膜に対し、名古屋大学先端研にあるフェムト秒レーザー加工分析システム(UFL-Hybrid)を用いて精密な加工を施した。高分子膜の加工後、イオン液体[DEME][TFSI]の薄膜を高分子膜上部に形成し、サイドゲート型の電気化学トランジスタ構造を作製した。
結果と考察 / Results and Discussion
Fig.1に、Hallバーを形成したSiO2絶縁膜上に塗布した高分子膜のレーザー加工後の写真を示す。塗布直後の高分子膜は電極上も含めた素子全面に製膜されており、正確な4端子伝導度、Hall効果測定を行うことはできない。そのため、本研究ではレーザー加工によりソース(S)-ドレイン(D)電極間のチャネル領域をレーザーにより精密に加工し、4端子電気伝導率やHall効果を正確に測定できるようにした。
高分子のレーザー加工後、電解質膜を上部に形成し、電気化学トランジスタ構造を作成した。本研究では電気化学ドーピングによる高濃度のキャリア注入を行った後、さらに、SiO2絶縁膜を利用した電界効果ドーピングを行い、電界効果ドーピングに伴う微小な電気伝導率の変化を観測することで電気化学ドープ膜の移動度を決定し、電気化学ドープ濃度を定量的に決定した。この手法により求めた電気化学ドープ濃度は、同一素子のHall効果測定から求まったキャリア濃度に比べて顕著に小さかった。このようなキャリア濃度の不一致は磁場によるローレンツ力を受けない局在キャリアの寄与により説明できる。本研究で用いたPBTTTドープ膜においては、非局在的な伝導電子の寄与に加え、180 Kの比較的高温領域から局在キャリアの寄与が明確に見られ、低温ではその寄与はさらに増大した。
上記の測定から明らかになった局在キャリアの寄与は、電気化学ドープ膜のゼーベック係数の温度依存性からも示唆された。本研究では、Fig.2に示すように、金電極をon-chip型のヒータとして薄膜に温度差を誘起し、様々な電気化学ドープ濃度において熱起電力を測定し、ゼーベック係数の温度依存性を低温まで測定した。その結果、ゼーベック係数は金属に特有な温度Tに比例する振る舞いのみでは説明できず、低温では局在的なキャリアの寄与が顕著に表れ、温度上昇につれて熱励起的に金属状態が形成されるモデルで再現された。この結果は、局在キャリアの寄与が低温でより顕著になるHall効果測定の結果とも符合する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig. 1. 高分子薄膜のレーザー加工パターン
Fig. 2. ゼーベック係数測定用のサイドゲート型電気化学トランジスタの写真と、高分子(PBTTT)、イオン液体([DEME][TFSI]の化学構造。チャネル内の高分子膜はレーザー加工により成形。
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
なし。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- (1) 劉峻峰,伊藤駿一郎,田中久暁,竹延大志,"導電性高分子 PBTTTへの電気化学ドーピング:キャリア移動度"第70回応用物理学会春季学術講演会(東京),令和5年3月15日
- (2) 伊藤駿一郎,金橋魁利,田中久暁,陳斌杰,太田裕道,竹延大志,"導電性高分子 PBTTTへの電気化学ドーピング:熱電特性"第70回応用物理学会春季学術講演会(東京),令和5年3月15日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件