利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.29】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0220

利用課題名 / Title

光電子分光および原子間力顕微鏡によるナノ空間材料の金属イオン収着特性評価

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

表面分析,レアメタル回収,資源循環,ナノカーボン/ Nano carbon,ナノ多孔体/ Nanoporuous material


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中谷 真人

所属名 / Affiliation

名古屋大学大学院工学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

尾上 順

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-207:X線光電子分光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

自動車の排ガス用触媒やエレクトロニクスに必要不可欠な白金族元素[パラジウム(Pd), ロジウム(Rh), ルテニウム(Ru)など]を廃棄物からリサイクルするために、溶液中金属イオンの分離精製で用いる高性能収着材の開発が急務である。本研究では、内部に幅約0.3nmの周期的内部ナノ空間を持つC60薄膜および電子線誘起C60ポリマー薄膜をPd、Rh、及びRuイオンが共存する水溶液に浸漬させた場合の収着特性について調べた。

実験 / Experimental

真空蒸着法によってC60薄膜(厚さ300 nm)をTa基板上へ形成し、エネルギー5 keVの電子線を150 h照射することで、C60ポリマー薄膜を形成した。収着実験のために、硝酸パラジウム[Pd(NO3)2]、硝酸ロジウム[Rh(NO3)3]、硝酸ニトロシルルテニウム[Ru(NO)NO3)3]をそれぞれ塩化カリウム(KCl)水溶液へ溶解させた濃度4 mMの各単成分イオン溶液およびこれらの混合溶液(Pd-Rh-Ru水溶液)を準備した。各溶液に100分間浸漬させたC60薄膜を純水洗浄および乾燥後にX線光電子分光(XPS;NU-207)およびエネルギー分散型X線分光(EDX)によって金属イオン収着量と収着種の化学形態を調べた。

結果と考察 / Results and Discussion

各単成分水溶液に浸漬させたC60ポリマー薄膜のEDX測定(検出深さ数 μm)の結果からCに対するPd、Rh、Ru、Kの各組成比を求め、これをイオン数密度[イオン数/単位格子(2.83 nm3)]に換算したところ、非常に小さい値(0および0.19個/単位格子)が得られた(Fig. 1aの赤棒)。一方、同一試料をXPS測定し(検出深さ約5 nm)、収着イオンに由来するPd3d、Rh3d、Ru3p、K2pの各ピークとC60ポリマー由来のC1sピークとの面積比に相対感度因子を考慮することでイオン数密度を算出したところ、EDX測定の結果よりも大きな値(2~5個/単位格子)が得られた(Fig.1aの青棒)。以上の結果は、Pd、Rh、RuイオンはC60ポリマー薄膜の表面近傍に収着され、薄膜内部へ拡散していないことを示唆する。また同一試料のXPS測定では、硝酸イオン(NO3)に由来するN1sピーク、塩化物イオン(Cl)に由来するCl2pピーク、及び金属酸化物に由来するO1sピークは全て観測されないことから、Pd、Rh、RuイオンはNO3やClとの錯体や金属酸化物を形成することなくC60薄膜表面に吸着していると考えられる。即ち、C60薄膜内部へのイオン拡散を阻害する原因としては、化合物形成によるサイズ増大の効果ではなく、イオン吸着による薄膜表面近傍の電位増加の影響が考えられる。さらに、浸漬溶液中にはPd、Rh、Ruイオンに比べ約100倍の濃度のKイオンが共存するにも関わらず、Kイオンの表面収着は確認されないことから(Fig. 1a)、C60ポリマー薄膜への金属イオン収着には元素選択性があるといえる。
 次に、混合溶液に浸漬させたC60ポリマー薄膜表面のイオン数密度をXPSで調べたところ(Fig.1b)、各単成分溶液へ浸漬させた場合に比べてRhイオン数密度のみが選択的に増加する傾向を示した。このような選択収着性はC60薄膜では確認できないため、電子線重合反応によって発現した機能であると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig 1. Density of Pd, Rh, Ru, and K ions in C60 polymer films after immersing into (a) Pd, Rh, Ru solutions and (b) Pd/Rh/Ru mixed solution. Ion density were evaluated by EDX (red) and XPS (blue).


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 中谷真人, 渡邉紘貴, 尾上 順, “プルシアンブルー薄膜の荷電状態制御によるロジウムイオン収着率の向上” ナノ学会第20回大会O−18, 令和4年5月21日
  2. 奥村光希, 中谷真人, 尾上 順, “フラーレン薄膜の電位制御によるロジウムイオン収着率の向上” ナノ学会第20回大会P3−14, 令和4年5月21日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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