【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.14】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22NU0051
利用課題名 / Title
集束イオンビームを利用した金属材料の単結晶マイクロピラーの作製とその力学特性
利用した実施機関 / Support Institute
名古屋大学 / Nagoya Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
アルミニウム合金,フェライト鋼,単結晶,塑性変形,転位,電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
高田 尚記
所属名 / Affiliation
名古屋大学
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
朱 天斉,長子明弘,小橋 眞
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
樋口公孝
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
レーザ粉末床溶融結合(Laser Powder Bed Fusion: L-PBF)法は金属積層造形の最も一般的な方法であり,レーザ照射による局所溶融と急冷凝固により組織形成する。L-PBF法によるAl合金造形体は従来方法で製造したAl合金より高い強度を有し,その高強度化は顕著な加工硬化に起因する。しかしながら,加工硬化の促進要因は不明な点が残る。本研究で着目したマイクロピラー圧縮試験は,数μmサイズの単結晶試験片を作製可能である。したがって,結晶粒界の影響を排除し,Al合金造形体の強度及び変形に及ぼす結晶粒内部の組織因子の影響のみを抽出することができる。本研究ではAl-2.5Fe(mass%)合金のL-PBF法による積層造形体とそれに異なる温度で焼鈍した試料の表面から作製した単結晶マイクロピラーの圧縮試験を行い,強度と加工硬化に及ぼす結晶粒内部における組織因子の影響を調査した。
実験 / Experimental
属3Dプリンタ装置(3D systems ProX 200)を用いて,レーザ出力204 W,走査速度0.6 m/sの条件でAl-2.5Fe積層造形体を作製した。作製した試料を焼鈍(300 ℃,500 ℃)10時間した。この試料の表面に機械研磨,電解研磨を施した。供試材表面にビッカース圧痕を導入し,マイクロピラー試験片作製領域を特定した。EBSD解析を用いて結晶方位を解析し,圧縮方位を選定した。選定した結晶粒内に,集束イオンビーム(Focused Ion Beam: FIB)装置(JEM-9320FIB)を用いて直径約3μmの円柱状マイクロピラー試験片を複数作製した.圧縮試験には直径20 μmの平面圧子が装着された荷重制御型ダイナミック超微小硬度計(DUH-211S,㈱島津製作所製)を用いた.荷重負荷速度0.0050mN/s,初期ひずみ速度が約5.0×10-4 /sの条件でマイクロピラー試験片の圧縮試験を行った。圧縮後の試験片を観察し,試験片における活動すべり系を同定した。
結果と考察 / Results and Discussion
造形まま材と300℃焼鈍材において,微細に分散した数十nmのAl6 Fe相が観察された。
一方500℃焼鈍材では,比較的粗大な-Al13 Fe4 相が観察された。
Fig.1に造形まま材及び焼鈍材から作製した単結晶マイクロピラーの圧縮試験によって得られた真応力-真ひずみ曲線を示す。
造形まま材と300℃焼鈍材から作製したマイクロピラーは約210MPaで降伏した。
これは500℃焼鈍材から作製したマイクロピラーと比較して著しく高い。
Fig.2に圧縮後の単結晶マイクロピラー試験片のSEM像示す。
造形まま材,300℃焼鈍材から作製したマイクロピラー試験片(Fig.2(a),(b))は比較的均一に変形し,複数のすべり系が活動したと考えられる。
一方500℃焼鈍材から作製した単結晶試験片(Fig.2(c))は単一すべりの活動を示す明瞭なすべり線が観察された。
したがって,微細に分散したAl6 Fe相が複数のすべり系の活動を促進し,加工硬化に寄与すると考えられる。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 True stress-strain curves of single-crystal micropillars on the surface of as-fabricated and annealed samples.
Fig.2 SEM images showing the compressed single-crystal micropillars: (a) as-fabricated, (b) annealed at 300℃ for 10 h, (c) annealed at 500℃ for 10 h.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
マイクロピラー作製に必要なイオンビーム加工観察装置(NX-5000 ETHOS)の操作は,超高圧電子顕微鏡施設 技術職員 山本悠太氏,樋口公孝氏の補助を受けた.ここに特記して謝意を示す.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Tianqi Zhu, Strain Rate Sensitivity of Flow Stress Measured by Micropillar Compression Test for Single Crystals of 18Cr Ferritic Stainless Steel, ISIJ International, 60, 774-781(2020).
DOI: doi.org/10.2355/isijinternational.ISIJINT-2019-448
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- Tianqi Zhu, Naoki Takata, Makoto Kobashi, Masataka Yoshino, “Strain Rate Dependence of Flow Stress in Single-Crystal Micropillars of bcc FeCrNi Solid Solutions”, 2022 MRS fall meeting & exhibit(Boston,USA),2022年12月1日.
- ○朱 天斉、高田 尚記、小橋 眞、吉野 正崇,束村 基行、"Cr濃度の異なるFe-Cr 二元系合金単結晶マイクロピラーにおける塑性変形の熱活性化過程" 金属学会春期講演大会(東京大学),2023年3月10日.
- 〇長子 明弘、朱 天斉、上杉 真太郎、髙田 尚記、鈴木 飛鳥、小橋 眞、"Al-Fe合金積層造形体から作製した単結晶マイクロピラーの圧縮変形" 金属学会秋期講演大会(福岡工業大学),2022年9月22日.
- 〇長子 明弘、朱 天斉、上杉 真太郎、髙田 尚記、鈴木 飛鳥、小橋 眞、"Al-Fe合金積層造形体から作製した単結晶マイクロピラーの圧縮強度と加工硬化" 軽金属学会春期講演大会(オンライン開催),2022年5月28日.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件