利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.11.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0033

利用課題名 / Title

Al-Mg-Si合金中析出物形態の時効時間変化

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

アルミニウム基合金,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

高田 健

所属名 / Affiliation

大同大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

水野和也

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

荒井重勇

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-103:高分解能透過電子顕微鏡システム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

Al-Mg-Si合金では溶体化熱処理後の等温熱処理にて主にMgとSiで構成される準安定相析出物が形成され、当合金の強度はこれら析出物の大きさ、数密度、種類により決まる。
180℃で等温保持した場合針状の単斜晶の構造であるβ”と呼ばれる析出物が形成され、保持時間の延長にしたがいβ”析出物は棒状の六方晶もしくは斜方晶の構造であるβ’と呼ばれる析出物に変化する。この変化は溶解を伴わない構造変化と理解されている。また、180℃の等温保持中でのβ’析出物のオストワルド成長を示唆する強度測定の結果が得られている。本研究の目的は当合金中の等温保持中のβ’析出物のオストワルド成長を定量的に検証することである。検証に必要な析出物の大きさと数密度の定量値化は、TEM画像の機械学習による解析を通して行う。
今回、定量値化に必要な析出物形態のTEM画像の取得を行った。

実験 / Experimental

試料成分を表1に示す。株式会社UACJにて、この成分の合金を鋳造、均質化処理、板厚4mmまでの熱間圧延、板厚1mmまでの冷間圧延を行った。本実験では、冷間圧延材を550℃にて30分の大気熱処理、水焼入れ、オイルバス中での180℃にて24、48、72時間保持の熱処理を順に施した。熱処理材に機械研磨、φ3mmの円板試料の打ち抜き、硝酸メタノールを用いた電解研磨を順に実施することでTEM観察試料を作製した。TEM観察にはJEM−2100F/HKを使用した。加速電圧は200kVとし、結晶粒の方向に電子線を入射し、析出物像を取得した。

結果と考察 / Results and Discussion

 図1、2、3は、それぞれ24、48、72時間の時効材で得られたSTEM像である。180℃時効では、時効時間の増大に従い針状であるβ”析出物は棒状であるβ’析出物へと変化する。別途実施した力学解析により、24時間から72時間までの保持時間中にβ’析出物のオストワルド成長の可能性が示唆されている。β’析出物の長手方向は母相の方向に平行であるため、STEM像にはそれら析出物の長手方向の像とその断面を示す点の像が示されている。析出物の長手方向の形状のみに注目すれば、24時間から48時間の時効時間の増大に従い、棒状のβ’析出物の半径方向の増大が確認できる。しかし、その数密度の明瞭な差異は認識できない。48時間から72時間では、棒状析出物の半径はさらに増大していると判断できる。しかし、数密度の変化は依然確認できない。一方、点状の形状に注目すると、24時間から48時間ではその数密度の増大が、48時間から72時間ではその数密度の減少が確認される。以上より、時効時間48時間から72時間にかけて、棒状析出物の半径が増大する成長とその数密度が減少する可能性、すなわち、オストワルド成長の可能性が示された。今後、明確なオストワルド成長発現の検証を行うために、(1)多視野の観察を実施し、(2)機械学習ソフトによる析出物の形状を学習させ、(3)機械学習に基づき析出物の大きさと数密度の定量値化を行う。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


表1. 試料成分(mass%)



図1  24時間時効材のSTEM像



図2  48時間時効材のSTEM像



図3  72時間時効材のSTEM像


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究試料の提供いただいた株式会社UACJに感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 小原拓夢、江草凌太郎、高田健、荒井重勇, "Al-Mg-Si合金中への等温析出物の発達挙動" 2023日本金属学会秋期大会,令和5年9月20日
  2. 中嶋洋介、伊藤良太、久保則文、西舘光紀、高田健、荒井重勇、池田賢一、小川登志男, "画像解析を用いたアルミニウム中の転位のセル形成機構の調査", 2023日本金属学会秋期大会, 令和5年9月20日
  3. 小原拓夢、長谷川凱土、高田健、荒井重勇, "Al-Mg-Si合金における時効条件の等温析出への影響" 2023年度軽金属学会周期講演大会, 令和5年11月12日
  4. 水野和也, 岡島敏弘, 神谷和孝, イエザリ・ファビオ, 武藤俊介, 齊藤元貴, 渡辺海斗, 高田健, "Al-Mg-Si合金における等温時効生成物のDSC調査", 第32回 材料フォーラム TOKAI, オンライン開催, Nov. 29-30, 2022
  5. 渡辺海斗, 齊藤元貴, 武藤俊介, 水野和也, 佐野大和, 高田健, Iesari Fabio, 神谷和孝, 岡島敏浩, "低温時効したAl-Mg-Si合金中のクラスタ形成過程のマルチスケール分析", 日本金属学会2023年春期第172回講演大会(東京大学駒場キャンパス, 東京都立産業貿易センター), Mar. 7-10, 2023.
  6. 水野和也, 佐野大和, 高田健, 渡辺海斗, 齊藤元貴, 武藤俊介, Iesari Fabio, 神谷和孝, 岡島敏浩, "アルミニウム合金における等温析出挙動 - DSC測定", 日本金属学会2023年春期第172回講演大会, (東京大学駒場キャンパス, 東京都立産業貿易センター), Mar. 7-10, 2023.
  7. 齊藤元貴, 渡辺海斗, 武藤俊介, 水野和也, 佐野大和, 高田健, Iesari Fabio, 神谷和孝, 岡島敏浩, "アルミニウム合金における等温析出挙動 - STEM観察&EDS分析", 日本金属学会2023年春期第172回講演大会, (東京大学駒場キャンパス, 東京都立産業貿易センター), Mar. 7-10, 2023.
  8. 高田健, 水野和也, 佐野大和, 渡辺海斗, 齊藤元貴, 武藤俊介, Iesari Fabio, 神谷和孝, 岡島敏浩, "アルミニウム合金における等温析出挙動―SAXS測定", 日本金属学会2023年春期第172回講演大会, (東京大学駒場キャンパス, 東京都立産業貿易センター), Mar. 7-10, 2023.
  9. G. Saito, K. Watanabe, M. Ohtsuka, S. Muto, K. Mizuno, Y. Sano, K. Takata, F. Iesari, T. Okajima, "STEM Analysis of Precipitates Formed during Isothermal Aging in Al-Mg-Si Alloys," The 20th International Microscopy Congress (IMC20), (Busan Exhibition and Convention Center (BEXCO), Busan, Korea), Sep. 10-15, 2023.
  10. 齊藤元貴, 渡辺海斗, 大塚真弘, 武藤俊介, 水野和也, 佐野大和, 高田健, 岡島敏浩, "アルミニウム合金中の時効析出物のHAADF/ LAADF-STEM観察", 日本顕微鏡学会第79回学術講演会(くにびきメッセ), June 26-28, 2023.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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