利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.21】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0032

利用課題名 / Title

AB2型水素吸蔵合金の水素化・CO2転化反応のin-situ TEM観察予備実験

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

水素吸蔵合金、メタン化反応,電子顕微鏡/Electron microscopy,水素貯蔵/ Hydrogen storage,エネルギー貯蔵/ Energy storage


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中川 鉄水

所属名 / Affiliation

琉球大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

武藤俊介

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

荒井重勇

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

われわれはこれまで水素吸蔵合金を二酸化炭素・水素混合ガス中で加熱すると、COや炭化水素を生成する反応を発見した。しかし同反応は反応率が低いため、反応メカニズムを解明し、反応効率・速度を改善する必要がある。現在のところ二酸化炭素が合金表面に存在すると酸化膜が形成され、水素雰囲気中では表面が還元されることが明らかになっている。本研究では、炭化水素合成反応中の合金表面をTEM観察により視覚的に追いながら放出されたガスを同時に分析することにより、同反応のメカニズムを微視的な観点から解き明かすことを目的とする。今回は上記の予備実験として、ブランク測定とZrCr2 について様々な温度・圧力条件で水素・CO2 混合ガスを流しながらTEM観察およびMS測定することで、観測に最適なCO2転化反応条件を模索する。

実験 / Experimental

In-situTEMは反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡(JEM1000K RS 日本電子)を用い、以下の手順で表面観察・電子回折測定・EELS測定を行った。ガス測定はMS(JEM1500GC 日本電子)を用いた。本研究では以下の実験を行った。①ブランク測定窒化シリコン膜ウィンドウのみを加熱ステージに乗せ、TEM中で400℃・1時間加熱して吸着ガスを追い出した。その後室温に戻し、H2 -CO2 ガス(H2 :CO2 =4:1、Neガス75%でバランス)を流通させながら全圧1000Pa前後(水素分圧20Pa)に保ち、MSで観測しながら100℃、200℃、300℃、400℃へ段階的に昇温し、発生ガスを確認した。400℃の観察終了後は、300℃、200℃、100℃、室温へ降温し、同様にMS測定を行った。②温度別CO2 転化反応測定
ZrCr2 を窒化シリコン膜ウィンドウに乗せ、加熱ステージを用いてTEMへ導入した。TEM内では試料を活性化(真空中で400 ℃・1時間保持)した後に表面観察・電子回折線・EELS測定を行い、ブランク測定と同様の条件でガス加圧および昇温と降温を行いながらMS測定を行った。各温度では上記に加え、表面観察・電子回折測定・EELS測定を行った。③400℃でのCO2 転化反応測定新たにZrCr2 試料を用いて③と同様の実験を行ったが、段階的に温度を上げるのではなく400℃まで一気に温度を上げてガスの生成をMSで観測し、その時の表面観察・電子回折測定・EELS測定を行った。その後、室温に戻した後に表面観察・電子回折測定・EELS測定を行い、再度400℃への昇温と室温への降温を行い同様の観察を行った。

結果と考察 / Results and Discussion

室温での混合ガス気流後EELSにおいてZrのM3 殻とM2 殻とCrのL3 殻とL2 殻のピークが活性化後に比べて酸化方向にシフトしていたこと、OのK殻のピークが出現したことから、酸化膜の生成が示唆された。また、Low-lossにおいて、10eV付近に水素のプラズモンと思われるピークが出現した。昇温後、ZrとCrのピークシフトは確認されなかった、10eV付近のピークは400℃昇温後に消失した。回折像は各段階と活性化後の面間隔を比較したが変化は見られなかった。今回の実験で用いたZrCr2 は室温では0.93 kPaにプラトー圧(水素吸蔵・放出が活発に進行する圧力)を持つ。本実験で用いた混合ガス雰囲気下の水素分圧ではプラトー圧以下となることから、水素化物固溶体となり、面間隔の変化やEELSのピークシフトが非常に小さかったと考えられる。TEM像から酸化膜の厚さを測定したが、約2nmから変化は見られなかった。MS測定においては、m/z=15(CH4 のフラグメント)の200~400℃昇温後にグラフの上昇が確認され、ブランク測定時のグラフの動きと同期していなかったことから、CH4 の生成が示唆された。m/z=28(N2 、COのフラグメント)は200~400℃昇温直後からシグナルの上昇が確認され、m/z=14 (N2 のフラグメント)のピーク上昇と一致していなかったこと、ブランク測定時のグラフの動きと同期していなかったことから、COの生成が示唆された。また、グラフの上昇幅はm/z=15は温度が上がるごとに小さくなり、m/z=28は温度が上がるごとに大きくなった。また、同時にH2 Oの生成も確認された。その他の発見としては、どの温度でも水素圧とMSの水素シグナルが逆相関(加圧で低下、減圧で上昇)したことから、加温していても水素吸蔵・放出を行っていることがわかった。以上から、本実験ではCO2 転化反応は進行しているが量が少ないためMSでの観測にはさらなる条件最適化が必要と思われる。最適条件は室温で水素を吸わせて急激に温度を上げることが良いと思われるが、更に水素吸蔵圧が低い材料(例えばZrMnVなど)を用いて観察する必要があると考えられる。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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