利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22NU0020

利用課題名 / Title

引張圧縮試験後のマイクロニッケル単結晶の透過観察

利用した実施機関 / Support Institute

名古屋大学 / Nagoya Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

マイクロ,金属,疲労,その場観察,電子顕微鏡/Electron microscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

澄川 貴志

所属名 / Affiliation

京都大学

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

高橋可昌,キム ビョンウン,穴田悠樹

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

NU-101:反応科学超高圧走査透過電子顕微鏡システム


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

繰り返し負荷を受ける純金属では,マイクロサイズの転位組織が形成されることで,疲労き裂を生じる.近年では,多くの電子デバイスにおいてナノ~マイクロサイズの金属素子が使用されているが,これらの内部には寸法の観点から従来の疲労組織が形成し得ないため,特異な疲労転位構造を形成する可能性がある.そこで,疲労後のマイクロニッケル(Ni)中の転位組織の観察を行った.

実験 / Experimental

Ni多結晶板(純度:99.999%)に対して真空熱処理および電子線後方散乱回折による結晶情報の特定を行った後,集束イオンビーム(Focused ion beam: FIB)加工装置を用いて所望の結晶粒から単一すべり方位を有する単結晶試験片を作製した.試験片ゲージ部は正方形断面を有しており,一辺は5μmである.引張圧縮疲労試験は,専用の負荷装置を用い,走査型電子顕微鏡内において,変位振幅一定条件で実施した.試験後,反応科学超高圧電子顕微鏡(JEM-1000K RS)を用いて透過観察を実施した.

結果と考察 / Results and Discussion

試験片に与えた繰り返し変形は,1000回である.試験装置が具備するロードセルから得られた荷重値に対して,試験片の断面積およびすべり系のシュミット因子をもとに算出した飽和応力振幅は,約35 MPaであり,この値は,バルクNi単結晶の疲労き裂発生限界を与える振幅よりも低い振幅である.試験片表面には,突き出し/入り込みと呼ばれる微細な凹凸を生じた.
図1は,試験後の試験片に対してFIBを用いて薄片化を行い,反応科学超高圧電子顕微鏡を用いた観察から得られた暗視野像を示す.大きなすべりを生じた領域では,転位が壁状に集積しており,壁の伸びる方向はすべり方向に対してほぼ垂直であった.g・b解析および傾斜角を変えた観察を実施し,この転位が持つ性状や構造の様相を特定した.本観察により,マイクロサイズのNiでは,バルクとは大きく異なる疲労組織が形成されることを明らかにした.これは,表面からの鏡像力が強く作用したためと考えられる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig. 1 Dark field image of micro-sized Ni single crystal specimen after tension-compression fatigue testing.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本研究は,名古屋大学 荒井重勇特任准教授の協力のもとで観察を行い,JST CREST JPMJCR2092およびJSPS科研費 22K18754の助成を受けて実施したものである.ここに謝意を表する.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 穴田悠樹,高田聡志,安部正高,高橋可昌,澄川貴志,“引張圧縮負荷を受けるマイクロNi単結晶の疲労転位組織形成過程観察” 日本材料学会第8回材料WEEK(京都), 令和4年10月.
  2. T. Sumigawa, “Observation of fatigue dislocation structure in micro-sized Ni single crystal specimen” 2023 International Joint Symposium on Convergence Technology of Mechanical Engineering (online), 2.9.2023.
  3. T. Sumigawa and T. Kitamura, “Experimental Investigation of the Fatigue Behavior of Three-dimensionally Small Micro-sized Metals” Materials Structure & Micromechanics of Fracture (MSMF10) (Brno, Czech Republic), 9.12.2022.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る