利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22WS0094

利用課題名 / Title

表面増強ラマン分光法を用いた氷の摺動界面における摩擦と化学構造の解析

利用した実施機関 / Support Institute

早稲田大学 / Waseda Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

成膜, 形状・形態観察,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,ALD


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

吉田 立樹

所属名 / Affiliation

早稲田大学 先進理工学研究科 応用化学専攻

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

澤木昴

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

野崎義人,齋藤美紀子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

WS-004:原子層堆積装置
WS-020: 顕微ラマン分光装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

水や氷による潤滑は,濡れたあるいは凍結した路面におけるタイヤの摩擦に関わる重要な因子であり,学術的、技術的に注目されている.これらの潤滑についての報告は機械物性に関するものが多く,ナノメートルオーダーの隙間における,界面近傍の水・氷の化学構造は明らかになっていない.表面増強ラマン散乱 (SERS)では界面の情報を高感度・高空間分解能で測定できるため,氷摺動界面における化学構造と摩擦の関係についてSERSで解析を行った.Atomic layer deposition (ALD)によりセンサ表面に3 nm程度のアルミナ膜をコーティングすることで,摺動による銀ナノ粒子の剥離を防ぐプラズモンセンサが作製され,SERS解析に使用した.

実験 / Experimental

ペルチェ素子の上に水滴を滴下した基板を置き,その上にプラズモンセンサを接触させ,センサと基板に挟まった水/氷のSERS解析を行った.ピエゾステージを用いてフォーカス位置を移動させ,この水/氷の深さ方向のSERS測定を行った.プラズモンセンサは,ラマン散乱光をAu, Ag等の金属ナノ粒子表面近傍の局在プラズモンにより増強するセンサのことを指す.このプラズモンセンサの表面を,摩擦等による金属ナノ粒子の剥離を防ぐために,アルミナを膜厚2 nm, 3 nmでALDコーティングした.

結果と考察 / Results and Discussion

昇温によりアモルファス氷のピークの低波数シフトと摩擦係数の低下が確認され(図1),氷摺動界面での水素結合強度の低下が起こったことが分かった.これによって氷摺動界面での剪断力が低下したことで摩擦係数が低下したと考えられた.また,氷表面にかかる荷重の増大によりアモルファス氷ピークの幅の拡大と摩擦係数の低下が確認された.ラマンスペクトルのピークの幅は化学結合の乱れの度合いを表すので,荷重上昇により氷摺動界面の化学構造の乱れが増大したことで氷摺動界面の剪断力が低下し,荷重上昇によって摩擦係数が低下したと考えられた.一方,基板にクオーツを使用すると,荷重を上昇させても氷の結晶性が維持される結果が得られた.以上の結果から,氷の摩擦は表面における水素結合強度,化学構造の乱れ,近接する基板との相互作用といったナノレベルの化学構造に影響されることが分かり,氷摺動界面の化学構造と摩擦の関係についての基礎的な知見が得られた.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 昇温による氷のラマンシフトと摩擦係数の変化


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

・共同研究者:株式会社ブリヂストン 山口健 様
・ARIMにおいてALD成膜装置を使用


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. トライボロジー会議2022 春 東京
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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