【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.27】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22WS0026
利用課題名 / Title
アクシオン探査用超伝導転移端型カロリメータの吸収体Fe成膜
利用した実施機関 / Support Institute
早稲田大学 / Waseda Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
精密めっき
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
八木 雄大
所属名 / Affiliation
東京大学大学院 理学系研究科 宇宙科学研究所
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
齋藤美紀子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub),機器利用/Equipment Utilization
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
アクシオンは宇宙の物質の約85%を占める暗黒物質の有力な候補であり、その存在が理論的に予測される。とくに太陽から飛来するアクシオンを地上で初観測するために、X線極低温熱検出器であるTransition edge sensor (TES) 型マイクロカロリメータの応用を行っている。アクシオンを止める役割を担う吸収体には、コンバーターも兼ねて57Feを用いる。57Feは大変高価なため、効率的な成膜を行う必要があり、パターン部分のみに成膜可能な電解析出法を採用した。吸収体で止めたアクシオンのエネルギーの損失を少なく、検出器であるTESに輸送するためには、Feの高い熱伝導率が求められる。しかしながら、純粋なFeの加工は商業、研究において未開拓である。そのため我々は純粋なFe成膜の条件出しを行い、平坦な膜で密度の高く、かつ、~10 umの膜厚の制御を目指している。
実験 / Experimental
電解析出法を用いて、鉄粉末を溶かした溶液中で電気化学反応により、マイクロパターンにFeを析出させる。鉄粉末には、同位体純度の低い酸化鉄で条件出しを行った後、純度の高い酸化鉄を用いて条件をさらにつめていく。パターン部に析出させるために、電極の役割を担うシード層を電子ビーム蒸着装置で成膜し、ダイシングソー
を用いて35mm角にカットする。この35mm角の状態でフォトレジストによるパターニングを行い、精密めっき装置群を用いて成膜を行う。成膜後のシード層の除去作業の際に、Fe膜が剥がれてしまうこともあるため、密着度が高いFe膜を作る必要がある。
最終的な観測用のTransition edge sensor型マイクロカロリメータ (TESカロリメータ) では57Feが必要であるが大変高価であるため、条件出しでは比較的安価な56Feを用いる。57Feでの成膜を目標にし、少量のFe粉末で成膜できることが望ましい。これまで高濃度 (0.1 mol/L) での成膜は成功しており、より低濃度での成膜条件の確立を目指している。本年度は56Fe同位体が高純度で入っている酸化鉄 (III) 粉末を用いて、tab. 1のような条件で0.01, 0.02 mol/Lの溶液を作成し、電解析出を行った。使用した粉末量は高々0.5 gである。
結果と考察 / Results and Discussion
30回以上の成膜実験の末、きれいに成膜できたものの成膜条件と測定膜厚をtab. 2に示す。-40 mA、15minという同じような成膜条件であっても、pHや温度、濃度、もしくは他の要因のわずかな違いによって、1 um程度の膜厚の差が生じていることが分かる。また、同じ電流値であっても、時間に対して線形に膜厚が大きくなるわけではなく、電解集中が起こり膜厚が極端に大きくなる場合もあった。
膜厚制御が困難であったもののfig. 1に示すような試験観測に向けた64素子の56Fe吸収体付きTESカロリメータの製作に初めて成功した。素子を拡大したものをfig. 2に示した。比較的きれいな膜面を持っている。膜厚は目標の~10 umに到達していないが、~3 um厚の膜の条件は徐々に確立されてきた。今後は~10 um厚で密着度の高い膜を成膜する条件の確立に向けて製作試験を行っていく。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Tab. 1 CONDITIONS FOR IRON (III) OXIDE SOLUTION AT CONCENTRATIONS OF 0.01 MOL/L AND 0.02 MOL/L
Tab. 2 ELECTROPLATING CONDITIONS AND DEPOSITED IRON THICKNESSES.
Fig. 1 Our fabricated chip, “JAXA105 Ax1,” with a Japanese 500-yen coin. The chip size is 35 mm square. The center section has a 64-pixel TES array with iron absorbers, and the up and down sections have a 12-pixel TES array.
Fig. 2 An element of “JAXA105 Ax1” with the iron absorber. The TES and iron absorber size was 180 μm square and 100 μm square, respectively. The distance between the TES and absorber is 100 μm.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
参考文献 [1] Y.Yagi et al., IEEE Trans. on Appl. Ssupercond., (2023) in press.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
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Y. Yagi, Performance of TES X-Ray Microcalorimeters Designed for 14.4-keV Solar Axion Search, Journal of Low Temperature Physics, 211, 255-264(2023).
DOI: 10.1007/s10909-023-02942-w
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 1. Yuta Yagi, Tasuku Hayashi, Keita Tanaka, Rikuta Miyagawa, Ryo Ota, Noriko Y. Yamasaki, Kazuhisa Mitsuda, Nao Yoshida, Mikiko Saito, Takayuki Homma, Mori Shohei, and Naoko Iyomoto, DM3 - Deep insights and Multiple strategies for Deciphering the Mystery of Dark Matter, "Dark Matter Search by Innovative Spectrometer: A Trial for Solar Axion Search by Specified Microcalorimeter ", 理化学研究所 神戸キャンパス, 15-17 Sep. 2022.
- 2. Yuta Yagi, Tasuku Hayashi, Keita Tanaka, Rikuta Miyagawa, Ryo Ota, Noriko Y. Yamasaki, Kazuhisa Mitsuda, Nao Yoshida, Mikiko Saito, Takayuki Homma, Shohei Mori, and Naoko Iyomoto, Applied Superconductivity Conference 2022, "Development of TES Microcalorimeters Designed for 14.4-keV Solar Axion Search", Honolulu, Hawaii, US, 23-28 Oct. 2022.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件