利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22WS0025

利用課題名 / Title

マイクロ流路作製におけるリソグラフィー条件の検討

利用した実施機関 / Support Institute

早稲田大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

レーザー直接描画, AZ P4620,リソグラフィ/Lithography


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

清水 久史

所属名 / Affiliation

東京大学 マイクロ・ナノ多機能デバイス連携研究機構 北森グループ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

加藤篤,坂口千佳,関口哲志

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

WS-010:集束イオン/電子ビーム加工観察装置
WS-012:電界放出型 走査電子顕微鏡
WS-016:レーザー直接描画装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

マイクロ流路は化学分析のみならず、化学合成、PCR検査など広く展開が期待されている。流路製作においては、10umを超える深い凹部が形成された基板へのアライメント露光が要求される場合があるが、2つの大きな問題がある。 1つは前記凹部(特に角部)のカバーレッジを十分に確保するレジスト塗布工程の確立、2つ目が大きな段差下部を確実に露光現像する条件の適正化である。ここでは、これらの問題に対し厚膜用レジストのスピン塗布、および、レーザー直接描画法の有効性を検討した。

実験 / Experimental

厚膜用レジストとしては、今回の凹部の深さ約10umを考慮し、膜厚5-10umのレジスト層を形成可能なAZP4620レジストを用いた。スピン塗布した後、集束イオン/電子ビーム加工装置による断面観察法でカバーレッジ状態の観察を行った。厚膜レジストをスピン塗布すると基板周辺部で著しく膜が厚くなり、コンタクト露光方式には不利となる。ここでは、非接触で露光が可能なレーザー直接描画装置を用いた。段差の上部と下部とで大きな膜厚差(特に下部は膜厚が大)が生ずるが、この膜厚差を考慮した露光量およびデフォーカス値の適正化を検討した。現像はNMD3で浸漬3min、現像後の形状は、電界放射型走査電子顕微鏡を用いて行った。

結果と考察 / Results and Discussion

カバーレッジの改善:FIG.1はレジスト塗布後の断面SEM像である。段差は約10umである。平坦部膜厚で(a)はTSMRレジスト、2um、(b)はAZP4620、6.5umをスピン塗布した場合である。
(a)塗布膜厚が2umの場合には、段差角部のレジスト膜厚が0.1um程度と著しく小さくなり、十分にカバーできていない。これに対し(b)6.5umでは、角部膜厚が2.5-3umとなり大きく改善されている。しかし、凹部全体が厚いレジストで埋められており、露光条件の見直しが必要である事が分かる。
レーザー描画条件の適正化:一般に広く使われているコンタクト露光装置では、露光量がパターン形状を決める主要因子である。一方、レーザー直接描画装置はレーザー光を集光させて露光するため、デフォーカス値がパターンの形状に大きく影響する。つまり、露光量とデフォーカス値から最適解を求める必要がある。
Fig.2に現像後のレジスト残渣の様子を示す。観察個所はレジストが最も厚くなる凹部である。平坦基板を用いた事前の検討では、膜厚6.5umのレジストの適正露光条件は800mJ/cm2 デフォーカスDF値 0であった。なお、DF値0とは、レジスト表面にフォーカスが合っていることを示す。
 初めに、ほぼ事前検討と同じ条件1000mJ/cm2 デフォーカスDF値 0で露光したが、凹部に著しいレジスト残渣が見られ、露光不足であった。 (a)は平坦部適正露光量の約2倍で露光した場合であるが、やはりレジスト残渣が見られる。この原因として、レーザー光が凹部の厚いレジストの底部にフォーカスされないために、露光量不足となっているためと考えられる。凹部の底面にフォーカス位置を調整し露光した結果を(b)に示す。レジスト残渣は見られず正常に露光されている。なお、図中の斑点はレジスト残りではない。凹部以外はフォーカスがずれるが、レジスト膜厚が小さく、かつ、露光量が高い事もありレジスト残渣は生じなかった。
以上、AZP4620によりカバーレッジを改善し、レーザー直接描画条件を適正化した事で、10umを超える大きな段差を跨いでのパターン形成が可能になった。
今回検討に用いたレーザー直接描画装置MLA150は、DMD方式であるため高速描画が可能で、また、非常に容易に高精度なアライメントができる。一方、大きな段差部のカバーには厚膜レジストが使われるが、取り扱いは難しい。段差部をカバーし易いスプレーコータ法が有効と考える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


FIG.1 厚膜用レジストAZP4620によるカバーレッジの改善 (FIB-SEM断面像)



Fig.2 レーザー直接描画露光おける露光量とDF値のレジスト残渣への影響(現像NMD3 3min) (a-1),(b)は光顕像、(a-2)SEM像


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本検討に御協力頂いた早稲田大学ナノライフ創新研究機構の加藤篤先生、関口哲志先生、坂口千佳先生に感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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