利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.07.31】【最終更新日:2023.04.23】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22WS0023

利用課題名 / Title

厚いCr膜形成法の検討

利用した実施機関 / Support Institute

早稲田大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

Cr, イオンビームスパッタ, 真空蒸着, 高周波スパッタ,スパッタリング/Sputtering,蒸着・成膜/Evaporation and Deposition


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

清水 久史

所属名 / Affiliation

東京大学 マイクロ・ナノ多機能デバイス連携研究機構 北森グループ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

星野勝美

利用形態 / Support Type

(主 / Main)技術代行/Technology Substitution(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

WS-001:イオンビームスパッタ装置
WS-002:電子ビーム蒸着装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

マイクロ流路の基板には、石英ガラスが多用されている。石英ガラスに流路を作成するには、一般的には反応性イオンエッチング法(RIE: Reactive Ion Etching)が使われるが、深い流路作成には高選択比を期待できる金属膜マスクが使われる。 ここではCr膜を用いたが、数10umの加工となるとCr膜の厚さも1um以上と大きくなる。厚いCr膜は膜剥がれ、ひび割れが発生しやすくなることが知られており、成膜技術の選択が非常に重要である。今回、比較的多用されている高周波スパッタ、イオンビームスパッタ、真空蒸着の何の手法が厚膜Crの形成に適しているかの比較、検討を行った。

実験 / Experimental

成膜に用いた装置は、①電子ビーム蒸着装置(ANELVA EVC-1501), ②イオンビームスパッタ装置(伯東)、③ECRイオンビームスパッタ装置(エリオニクス EIS2300、NANOBIC所有)、および、④高周波マグネトロンスパッタ装置1(ANELVA SPC350), ⑤高周波マグネトロンスパッタ装置2(芝浦メカトロニクス CFS―4エP―LL NANOBIC所有)である。基板には石英ガラスを用いた。膜厚測定は触芯式段差計(KLAテンコール)で行い、 膜の剥がれ、ひび割れは目視により判断した。

結果と考察 / Results and Discussion

1.ECRイオンビームスパッタ装置(EIS2300):
Fig.1に500nm成膜直後の膜の状態を示す。激しい膜剥がれが生じており厚膜Crの形成には適用できない。成膜速度が他の方式に比較し2.6nm/minと小さく、成膜中に多くのガスを巻き込む事が原因と推定される。 また、同時に成膜できる基板数は他の方法に比較し少ない。
 2.カウフマン型イオンビームスパッタ装置:
Fig.2は1um成膜した直後の膜状態である。剥がれ、ヒビ割れもなく正常に成膜されている。成膜速度で約10nm/minで、ECRイオンビームスパッタ装置の約4倍である。しかしながら、2umの成膜では剥がれが発生した。 膜応力の影響である。 前記と同じくセットできる基板数も少なく、多数枚の処理には不利と言える。
 3.高周波スパッタ装置1(SPC350 ANELVA);
Fig.3に1.2um成膜直後の状態を示す。Arガス圧力0.4Pa、成膜速度9nm/minでホルダーを公転(5-10rpm)させて成膜した。 膜剥がれ、ヒビ割れともに見られない。この方法で少なくとも1.5umまで正常に成膜できることを確認している。しかし、2umを超えるとヒビ割れが入るようになる。 なお、この装置は複数基板の一括処理が可能である。
 4.高周波スパッタ装置2(芝浦メカトロニクス CFS―4エP―LL);  
成膜条件、成膜速度はガス圧力0.5Pa、成膜速度9nm/minと前記高周波スパッタ装置とほぼ同じである。基板ホルダーには複数枚の基板をセット出来、ホルダーを自転させて成膜する。この条件で1.2umまで成膜が出来ている。しかし、基板ホルダー中央部は使用可能な膜を形成できるが、周辺部にセットされた基板の膜にはひび割れが見られた。 Cr粒子の飛び込み方向が応力に影響しているようである。 適用範囲は1um以下と言える。
 5.電子ビーム蒸着装置(EVC-1501、ANELVA)
蒸着によるCrの成膜においても、1umの成膜は可能であった。しかし、 Fig.4に示すように、電子ビーム照射位置のCrが優先的に昇華するためソースに穴が空いてしまい、本装置では1um程度が限界である。より厚膜の形成には工夫が必要である。膜質的には、他の方法に比較し2桁程度高真空下で成膜できるため、ガスの巻き込みが少ない良質な膜形成の可能性がある。 自公転ホルダーを使用することで、1バッチで多数の基板に成膜可能である。
 ECRイオンビームスパッタ装置で顕著なように、膜の剥がれ、ひび割れには成膜速度が大きく影響していると言える。成膜に時間を要するため、膜に取り込まれるガスが多くなり応力が高まったと推定される。 同じイオンビームスパッタでも成膜速度が10nm/minと高くなれば改善されている。高周波スパッタ方式も概ね同じレベルと言える。
以上、各種方法で厚いCr膜の形成を目的に検討した結果をtable.1にまとめた。1.5um程度が1つの限界と思える。 これ以上の厚いCrを形成するには、例えばメッキ法などが有効と考える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


Fig.1 成膜直後のCr膜の 剥がれ



Fig.2 成膜直後 膜厚1um



Fig.3 成膜直後 1.2um



Fig.4 蒸着後のCrソース



Table.1 成膜方法の比較


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

検討に御協力頂いた早稲田大学ナノライフ創新研究機構の星野勝美先生、関口哲志先生に感謝いたします。
NANOBIC: かわさき新産業創造センター ナノ・マイクロ産学官共同研究施設


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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