利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.28】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22SH0029

利用課題名 / Title

塗料用原材料並びに塗膜の表面解析

利用した実施機関 / Support Institute

信州大学 / Shinshu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

X線光電子分光(XPS(硬X線を含む))/ X-ray photoelectron spectroscopy


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

永井  彰典

所属名 / Affiliation

関西ペイント株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

SH-004:光電子分光装置
SH-006:飛行時間型二次イオン質量分析装置


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

塗料開発において、原材料および塗膜の表面状態は性能発現やトラブル解析において極めて重要である。当社では実施できない高度分析機器による表面解析の知見を蓄積したい。本年度は主に塗膜異常部の含窒素化合物の分析を行った。塗料において含窒素化合物は硬化剤や増粘剤として広く用いられるが、軽元素であるために分析手法が限られる。今回はXPSとTOF-SIMSによる検出を試みた。

実験 / Experimental

〇塗膜白斑部の含窒素化合物の分析
アルミ基板上に添加剤として含窒素化合物を含有するポリエステル樹脂塗料(クリヤー)を塗装し、180℃で硬化させた。沸水浸漬試験を行って塗膜上に白斑が生じさせ、これを試験片とし、XPSとTOF-SIMSによる評価を実施した。この白斑は含窒素化合物を添加しなければ発生しないため、白斑部と正常部でN元素の含有量に差があるものと予想された。当社においてEPMAでこれを評価したところ、Nが軽元素であるために感度が低く、また基盤のAl元素の高次線が重なるために、異常部と正常部でN含有量の違いは検出できなかった。

結果と考察 / Results and Discussion

 信州大学様からのご提案に基づき、白斑部と正常部でそれぞれを9回ずつXPS測定(N1s)を行った。正常部の結果を図1~図2、白斑部の結果を図3~図4に示す。またそのピーク面積を表1にまとめた。正常部は全ての測定ポイントで同様のピーク面積を示したのに対し、白斑部は4カ所で特にピーク面積が大きくなった。白斑部には添加剤である含窒素化合物が濃縮している可能性が高い。TOF-SIMSにおいても白斑部からはCN+,C3NO3+イオンが検出され、添加剤が局在化していることが裏付けられた。
 白斑は含窒素化合物の添加によって発生し、その部分にはその添加成分が多く検出されたことで、不具合発生の原因は添加剤と基体樹脂の相溶性不良であると推定される。改良方針として、基体樹脂成分の極性調整、低分子量化、溶剤組成の変更などを現在検討中である。
 成果として不良原因が特定できたと同時に、含窒素化合物を硬化剤や増粘剤として多用する塗料製品の開発において、軽元素を高感度で検出でき、深さ方向にも分解能を有するXPSの有用性を改めて確認することができた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1.白斑部(NG品)のN1s スペクトル(n=1~5)



図2.白斑部(NG品)のN1s スペクトル(n=6~9)



図3.正常部(OK品)のN1s スペクトル(n=1~5)



図4.白斑部(OK品)のN1s スペクトル(n=6~9)



表1.白斑部と正常部のN1sスペクトル面積


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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