利用報告書 / User's Report

【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22SH0028

利用課題名 / Title

真空紫外線処理を施した高分子樹脂表面の無電解めっき用触媒密着メカニズムの解析

利用した実施機関 / Support Institute

信州大学

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マルチマテリアル化技術・次世代高分子マテリアル/Multi-material technologies / Next-generation high-molecular materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

高分子材料,樹脂材料,無電解めっき,表面・界面,表面分析,電子分光,赤外・可視・紫外分光/Infrared and UV and visible light spectroscopy,異種材料接着・接合技術


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

有本 太郎

所属名 / Affiliation

ウシオ電機株式会社

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

竹元 史敏

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

SH-009:レーザラマン分光装置
SH-010:リモート対応型電子線マイクロアナライザー


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 次世代通信規格であるBeyond 5G/6Gデバイスや自動運転を目指す車載機器などの技術開発により,プリント配線基板に求められる電気信号の高周波化が進んでいる.従来の製造方法では基板と配線界面の凹凸に起因するアンカー効果によりその密着を得ていた.しかし,高周波帯域では,電気信号が導体表面に集中して流れる表皮効果の影響が顕著に表れるため,表面粗度に依存する伝送損失が新たな課題となっている.伝送損失を低減するために,基材と回路の間には,nmレベルの平坦性が求められており,従来の粗化による凹凸を利用したアンカー効果がなくても回路と基板の密着を得られるプロセスが要求されている.

 エキシマランプによる172nmの真空紫外光(Vacuum Ultra Violet:以下VUV)を用いた処理は,光化学反応を利用した表面改質方法であり,樹脂表面を粗化することなく官能基の導入が可能である.VUV処理をめっき前処理として導入することで,化学的な結合が形成され,基板と配線界面の平滑性を維持したまま回路形成が可能であるため,従来のアンカー効果に変わる次世代プリント基板製造プロセスとしての期待が高まっている.

 これまでの評価により,めっき前処理として樹脂表面にVUV処理を行うことで,めっき膜の密着強度に有効であることが確認されている.今回,VUV処理したサンプルが,無電解めっき液浸漬前の触媒付与工程の段階で樹脂表面にどのように触媒が担持されているを確認するため,レーザーラマン分光装置とEPMA装置を利用してマッピング分析を行った.

実験 / Experimental

 サンプルには厚み75 µmのシクロオレフィンポリマーを用いた.
通常,VUV処理 → コンディショナー → 触媒付与 → 活性化→ 無電解めっきの順番に行い,樹脂に対してめっき膜の成膜をおこなっているが今回は触媒の吸着状態を確認するため,VUV処理 → コンディショナー → 触媒付与 → 活性化 まで行い表面に金属化された触媒が担持されている状態のサンプルを用意した.なお同工程の触媒にはPdが使われている.また,サンプルへのVUV照射は,VUV照射装置(ウシオ電機社製)を用いて,乾燥空気をフローした雰囲気下で行った.
 
 EPMA測定用のサンプルにはチャージアップを避けるためにカーボンコーター(VC-100・真空デバイス)によりカーボンコーティングを施し,Pdについてマッピングを実施した.ラマンマッピング測定については,事前にVUV処理面(表面)と未処理面(裏面)に対してスポット測定し,表裏でピーク強度に差異の見られた630 cm-1付近および1250-1400 cm-1領域について,表面のラマンマッピングを実施した.なおマッピングには630 cm-1付近および1250-1400 cm-1領域の面積強度を用いた.20um平方のエリアを横縦20x20に分け,全400ポイントについてRaman測定を行いマップを作製した.

結果と考察 / Results and Discussion

 添付の図1にEPMAの測定結果を示す.マッピング画像よりPdは均一に分布しており,場所に依存する大きな変化は見られなかった.添付の図2にラマンマッピングの測定結果を示す.630 cm-1付近のピークはPdOに由来するピークだと考えられるがマップ図2(a)から場所に依存する大きな変化は見られなかった.また,1250-1400 cm-1領域のマップ図2(b)についても場所に依存する変化は見られなかった.したがってVUV処理したサンプルは,フィルム全体に均一に触媒であるPdが吸着できていると考えられる.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 EPMAマッピング



図2 (a) 630 cm-1付近のラマンマッピング



図2 (b) 1250 - 1400cm-1付近のラマンマッピング


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

測定を実施して頂いた信州大学 小畑美智子様,姜天水様に感謝いたします.


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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