利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.04.30】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22SH0009

利用課題名 / Title

新奇構造のカーボンの生成とその応用

利用した実施機関 / Support Institute

信州大学 / Shinshu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

光学顕微鏡/Optical microscopy,電子顕微鏡/Electron microscopy,ナノカーボン,ナノシート


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

押 田京一

所属名 / Affiliation

長野工業高等専門学校

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

滝沢 善洋

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

原 貴之

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

SH-001:ダブル球面収差補正付透過型電子顕微鏡


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 ピッチを熱処理することによりカーボンナノリボンが深く堆積したような特徴的な構造の炭素薄片が形成される。この特異な構造の炭素薄片の形成メカニズムを検討した。石炭系ピッチを熱処理することにより、大きく発泡した気孔壁面に、多くこの構造が形成されると考えられる。このような構造の炭素がどのように生成されるのか、各種顕微鏡で観察し、検討した。

実験 / Experimental

 実験用サンプルとして、コールタールピッチ(pitch C)1)と合成ピッチ(AR pitch)2)を使用した。また、一般的な石油ピッチAshland 240を比較サンプルとして使用した。ピッチを、窒素ガス雰囲気中で、昇温速度℃/s、保持時間15分、600℃で熱処理した。 実体顕微鏡を使用して、特異な構造が多く含まれると考えられる熱処理により発砲したARピッチの孔壁部分の薄片を分離抽出した。これらの試料の黒鉛化過程での変化を調べるため、アルゴンガス雰囲気下で1600~2800℃の範囲で熱処理した。試料を光学顕微鏡(OM)、走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微鏡(TEM)で観察し検討した。

結果と考察 / Results and Discussion

 1000°Cで熱処理したARピッチの特異な薄片のSEM像をFig.1に示す。薄片のサイズは幅30µm、長さ100µm以上で、薄く平らで滑らかな様子が観察される。薄片のエッジとクラックの状態により、炭素六角網面が観察面に対して垂直な状態(edge-on)3)となっていると推定される。TEM観察と画像処理により、このような薄片のすべての面がTEMの電子線に対して平行なedge-onであることがわかった。 これらのピッチの熱処理過程における質量変化とOMで組織・構造変化を追跡した結果、熱処理により流動性を帯びた試料中に揮発性物質が発生し、気体に満たされた空孔が徐々に大きく成長して行く。この過程で炭素六角網面が形成されるが、分子量の大きな先駆体のピッチ材料では、炭素六角網面が大きく成長して動きにくくなり、場所によっては炭素六角網のbasal面が空孔表面で垂直に配置する。このタイミングで組織が固まり、edge-onのみの特異な形状が残されたと考えられる。Fig.2にこの薄膜形成過程の模式図を示す。炭素六角網面は、basal面が空孔の表面に必ずしも沿っておらず、その配向は生成過程、表面の接している物質により決定される3)。各種顕微鏡観察により、炭素材料のミクロ組織はマクロ構造を反映していることが示唆された。これらの結果はTEM観察から推定された試料の構造を裏付けている。異なる種類の顕微鏡観察結果から、試料の構造が特定でき、本事業による装置の利用が大いに役立った。特異な構造の形成過程が解明され、今後の応用につなげたい。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 1000℃で熱処理したARピッチのSEM像



図2 特異な構造形成の模式図


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

1) K. Oshida, S. Bonnamy, Carbon, 40, 2699-2711 (2002).
2) I. Mochida I, Y. Korai Y, C-H. Ku, F. Watanabe, Y. Sakai, Carbon, 38, 305-328 (2000).
3) K. Jian, H-S. Shim, D. Tuhus-Dubrow, S. Bernstein, C. Woodward, M. Pfeffer, D. Steingart, T. Gournay, S. Sachsmann, G. Crawford, R. Hurt, Carbon, 41, 2073–2083 (2003).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 押田京一, 板屋智之, 滝沢善洋, 村田雅彦, Sylvie Bonnamy: 特異な形状の炭素薄片の顕微鏡観察による組織・構造解析, 第49回炭素材料学会年会, 3D04, 姫路市民会館 (2022.3).
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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