【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.02】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU1014
利用課題名 / Title
生分解性ポリアミド誘導体薄膜の凝集状態と分解特性
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代バイオマテリアル/Next-generation biomaterials(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
走査プローブ顕微鏡/Scanning probe microscopy,生分解性材料/ Biodegradable material,ナノシート/ Nanosheet
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
田村 隼太
所属名 / Affiliation
九州大学大学院統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
田中 敬二
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
Polyamide 4 (PA4)は、主鎖骨格の隣接アミド基間の炭素数が4と少なく、高い加水分解性が期待されることから、環境負荷低減材料の一つとして着目されている。しかしながら、PA4の分解機構の詳細は、いまだ不明な点が多い。本研究では、PA4薄膜に着目し、水環境下における薄膜の表面ならびに内部の凝集状態が、分解挙動に及ぼす影響について理解することを目的とした。
実験 / Experimental
試料として、数平均分子量60k、分子量分布指標2.0、ガラス転移温度353 KのPA4を用いた。PA4薄膜は、スピンコート法に基づき疎水化Si基板上に作製し、373 および473 Kで12 h熱処理を施した(PA4-373, PA4-473)。403 K、相対湿度100%RHの高温・高湿度な条件下に24 h曝すことで、PA4薄膜の加速分解試験を行った。PA4薄膜の表面形態は、原子間力顕微鏡(AFM)観察に基づき評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
図1(a-f)は、湿熱処理を(a,
d) 0、(b, e) 24および(c, f) 42
h施した (a-c) PA4-373および (d-f)
PA4-473薄膜のAFM形状像である。図1(g, h)はそれぞれAFM形状像(b, e)における白線部分の断面プロファイルである。PA4-373およびPA4-473薄膜ともに高温高湿度な条件下で加水分解を促進させることで、試験時間24 hにおいて平滑な表面に凝集構造体が形成される様子が観察された。PA4-373およびPA4-473薄膜の24 h後における凝集構造体の高さは40
nm程度であった。凝集構造体の形成から、分子鎖の切断に起因する結晶化が示唆された。また、さらに湿熱処理を施すことで、凝集構造体の消失が観察された。凝集構造体の消失は分解されたPA4鎖の系外への流出を示していると予想される。
図2は、湿熱処理を(a, d)
0、(b, e) 24および(c, f) 42 h施した (a-c) PA4-373および (d-f) PA4-473薄膜のAFM形状像であり、図1をさらに局所的に観察したものである。初期状態においてラメラ晶と思われる線状の構造体が観察された。これらは湿熱処理24 h後まではその形態を保っている様子が観察されたが、48 h湿熱処理を施したPA4-373薄膜においてその形態は大きく変化しており、線状から球状の構造へと変化している様子が観察された。この結果は、凝集構造体が形成された箇所以外における表面全体で分子鎖の切断による結晶化が起きていることを示唆している。一方で、PA4-473薄膜においては湿熱処理24, 48 h後のどちらにおいても、PA4-373薄膜程の顕著な表面形態の変化は観察されなかった。これらの結果は、PA4薄膜の分解挙動は熱処理条件に依存することを示唆している。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1. (a-f) AFM height images for (a-c) PA4-373 and (d-f) PA4-473 films exposed to 100% relative humidity at 403K for (a, d) 0, (b, e) 24 and (c, f) 48 h. (g, h) Cross-sectional profiles along to white lines shown in (b, e).
図2. (a-f) AFM height images for (a-c) PA4-373 and (d-f) PA4-473 films exposed to 100% relative humidity at 403K for (a, d) 0, (b, e) 24 and (c, f) 48 h.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP18016)の結果得られたものです。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 田村隼太,目代晴紀,正木崇士,山田悟史,松野寿生,田中敬二,“水環境下におけるポリアミド4薄膜の分子鎖凝集状態と分解特性”,第71回高分子学会年次大会,令和4年5月
- 田村隼太,目代晴紀,正木崇士,田口浩然,菊池貴子,松野寿生,田中敬二,“ポリアミド4薄膜の凝集状態と海水分解特性”,第11回JACI/GSCシンポジウム,令和4年6月
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件