利用報告書 / User's Reports


【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

22KU0101

利用課題名 / Title

シリコンの粒界構造の観察

利用した実施機関 / Support Institute

九州大学 / Kyushu Univ.

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed

キーワード / Keywords

電子顕微鏡/Electron microscopy,集束イオンビーム/Focused ion beam


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

大野 裕

所属名 / Affiliation

東北大学 金属材料研究所 材料設計研究部 材料照射工学研究部門

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

波多聰,斉藤光

利用形態 / Support Type

(主 / Main)共同研究/Joint Research(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

KU-010:三次元原子分解能透過電子顕微鏡
KU-013:キセノンプラズマ集束イオンビーム加工・走査電子顕微鏡複合機


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

太陽電池に応用されるシリコン擬単結晶は、種結晶を用いたキャスト法で非常に安価に生産できる一方で、単結晶に比べ電池特性が劣るトレードオフの関係にある。粒界で発生する転位クラスターによるキャリアの捕獲・散乱が劣化の主要因のため、転位クラスターの発現過程を理解・制御し安価で電池特性に優れた擬単結晶を創製することが求められる。結晶成長過程で粒界エネルギーがほぼゼロのΣ3{111}傾角粒界が偶発的に導入され、その粒界と他の粒界の相互作用で高次の傾角粒界が形成されるにつれ、転位クラスターの形成頻度が高くなることが知られている。粒界を挟む2つの結晶面が鏡映対象となる対称傾角粒界がエネルギー的に安定であることが理論的に示唆されているが、最近、現実の結晶中ではそこから曲がった非対称な傾角粒界が頻繁に導入され、それらが転位の発生源となることが分かってきた。本研究では、非対称傾角粒界の形成過程と構造安定性を評価して非対称傾角粒界の形成機構を明らかにし、非対称傾角粒界形成の抑制につなげたい。

実験 / Experimental

ここでは、シリコン結晶の成長過程で最もよく形成される非対称傾角粒界であるΣ9{111}/{115}傾角粒界を研究対象とする。表面活性化接合法(超高真空中でのアルゴン原子の照射により基板表面に活性層(シリコンの場合はアモルファス層)を導入して、基板同士を押し付けて化学結合を形成)で2枚のシリコンウエハを接合すると、接合面に厚さ5nm程度のアモルファス層が形成できる。{111}基板と{115}基板を接合して界面がアモルファスのΣ9{111}/{115}粒界を作成し、東北大でのGaイオン線によるFIB加工により粒界を含むSTEM用薄膜試料を作成し、加熱によって再結晶化させて結晶性の界面が形成される過程を3次元原子分解能透過電子顕微鏡(KU-010)を用いた原子分解能高温電子顕微鏡法により観察した。

結果と考察 / Results and Discussion

接合法で作成したSi{111}/{115}界面を1000℃以上の高温で加熱すると、キャスト成長法で形成されるΣ9{111}/{115}非対称傾角粒界と類似な再構成構造が形成された。その場加熱実験によって、再結晶化は各基板の結晶/アモルファス界面より進行し、固相エピタキシャル成長により結晶化が進むことが示された。約600℃の低温では各基板の原子配列を保持したまま再結晶化した準安定な界面構造(界面エネルギーEGB~0.6J/m2)が形成され、再構成構造は形成されなかった。より高温で大きな原子変位を伴うボンドスイッチが生じ、安定な再構成構造に変化すると思われる。残念ながら、Gaイオン線でFIB加工した試料では、加工中に混入したGaの影響で600℃より高温での観察が困難であることが分かった。そこで、キセノンプラズマ加工・走査電子顕微鏡複合機(KU-013)を用いたArイオン線によるFIB加工により、Ga不純物の除去を進めた。まだ不完全なデータしか得られていないが、大きな原子変位の発生が期待される1000度でのその場観察実験の目途が立った。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. シリコン中のΣ9{111}/{115}非対称傾角粒界の形成過程の観察 大野裕, 斉藤光, 梁剣波, 重川直輝, 井上耕治, 永井康介, 波多聰 第51回結晶成長国内会議
  2. 転位発生源となるシリコン非対称傾角粒界の形成過程 大野裕, 斉藤光, 梁剣波, 横井達矢, 松永克志, 重川直輝, 井上耕治, 永井康介, 波多聰 第70回応用物理学会春季学術講演会
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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