【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU0039
利用課題名 / Title
アルミナ担持Pdナノ粒子の原子スケール3D構造解析
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion
キーワード / Keywords
環境浄化,電子顕微鏡/Electron microscopy,燃料電池/ Fuel cell,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大山 順也
所属名 / Affiliation
熊本大学大学院先端科学研究部
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
岩井宏興
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
工藤昌輝,山本知一
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
担持金属触媒は工業プロセスや環境浄化といった種々の化学変換に用いられる材料であり,より高効率な触媒の開発には3次元構造の正確な解析とその制御が不可欠である.しかし,複雑系である担持金属触媒は,原子スケールでの表面構造はもちろんバルク構造でさえ正確に記述できていない.近年,トモグラフィー技術の発展によりナノ粒子を原子スケールで可視化することが可能となっており,ナノ粒子の特性に影響を与える構造歪みやその分布,構造欠陥などが明らかになりつつある.これは担持金属ナノ粒子の原子構造を解明するうえでも強力な手法となり得る.ナノ粒子を再構築する際,得られたSTEM像からカーボン支持膜あるいは真空由来のコントラストを除去する必要があるが,このコントラストは粒子像と比べてほとんど均一であるため局所平均を用いて差し引かれる.一方で担持ナノ粒子の場合は,得られるSTEM像には不均一な担体由来のコントラストが含まれ,これを除去する必要がある.そこで本研究では,アルミナ担持Pdナノ粒子のHAADF-STEM像を取得し,種々の画像処理手法を検討することで担体を含む背景コントラストとPdナノ粒子との分離を試みた.この像を基に3次元再構築を行い,Pdナノ粒子の原子構造を可視化した.
実験 / Experimental
2 wt% Pd/θ-Al2O3は湿式含浸法により調製したのち,800 °Cで10時間焼成,続いて,500 °Cで1時間H2還元処理を施した.Pd/θ-Al2O3のHAADF-STEM像はJEM-ARM200CFを用いて得た.試料ステージを−74°から+55°まで傾斜しながら73枚撮影した.また,同じ観察条件でθ-Al2O3のみの像も撮影し,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による画像補完に使用した.CNNによる学習ではθ-Al2O3像558枚を使用し,学習回数は150,000回とした.得られた学習モデルよりPd/θ-Al2O3像からPdナノ粒子のみのコントラストを抽出した.これを3D再構築し,Pdナノ粒子中のPd原子位置を決定した
結果と考察 / Results and Discussion
調製したPd/θ-Al2O3をHAADF-STEMで観察すると,10 nm程度のPdナノ粒子が見られた.それぞれの傾斜角で得たHAADF-STEM像についてCNNを使った背景予測によってPdナノ粒子のみのコントラストを抽出し3D再構築をすると,24,833個のPd原子が再構築された.Pdナノ粒子の3D構造は,面心立方格子構造を有しており,金属ナノ粒子のモデルとしてよく用いられる切頂八面体様の形状を有していたが,バルクの原子配列には歪みがあり,さらに,モデル構造のような明確なファセットやエッジは見られなかった.一方,担体コントラストを除去せず同様の手順で再構築すると30,827個のPd原子が再構築され,傾斜軸方向から見ると元のHAADF-STEM像に見られる以上の大きな原子配列の乱れが観察された.これらはAl2O3に由来するものであり,担体コントラスト除去の妥当性が示された.各原子を中心とする20 Å立方中に存在する全原子について第一配位距離の平均と分散度を求め,再構築したPdナノ粒子中の第一配位距離の平均および分散の分布を評価した.その結果,ナノ粒子中の原子配列の乱れを可視化することができた.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究はJSPS科研費20H02524の助成を受けた。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 第131回触媒討論会,口頭発表(B3講演),岩井宏興, 芳田嘉志, 町田正人, 工藤昌輝, 山本知一, 大山順也
- 公益社団法⼈日本顕微鏡学会第 65 回シンポジウム,ポスター発表,アルミナ担持Pdナノ粒子の原子スケール3次元構造の可視化,岩井宏興, 芳田嘉志, 町田正人, 工藤昌輝, 山本知一, 大山順也
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件