【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU0034
利用課題名 / Title
アルミニウム合金における析出物界面の半自発的剥離の高分解能観察
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)その他/Others
キーワード / Keywords
アルミニウム合金, 水素脆化, 析出物,電子顕微鏡/Electron microscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
平山 恭介
所属名 / Affiliation
京都大学 大学院工学研究科材料工学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KU-002:収差補正走査/透過電子顕微鏡
KU-014:Arイオン研磨装置群
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
これまでには我々は、Al-Zn-Mg合金の強化相である時効析出物粒子η相(MgZn2)の界面に水素が濃化することで界面の半自発的剥離が発現することを第一原理計算により明らかにしている。この析出物界面の剥離が、水素による擬へき開破壊のメカニズムであるということを間接的な実験結果より提案しているものの、実際に界面の剥離を直接観察するには至っていない。また、界面の剥離がどのようにミクロ損傷へと繋がっているかも不明である。そこで、本研究では、原子レベルでの観察が可能な収差補正付き電子顕微鏡を用いて界面剥離の直接観察を行い、ナノスケールの界面剥離と亀裂進展といったマクロスケールの水素脆化との繋がりを実験的に明らかにする。
実験 / Experimental
試料には、Al-4.1mass%Zn-1.8mass%Mg三元系合金を用いた。均質化処理および溶体化・時効処理を施した後、ワイヤーカット放電加工により、微小引張試験片への加工と水素チャージを同時に行った。引張試験を行った後の破断面の擬へき開破面の領域から集束イオンビーム(FIB)により薄膜試料を作製した。透過電子顕微鏡(TEM)観察の前にFIB加工によるダメージ層除去を目的としたイオンミリング(Fischione NanoMill Model1040)を施した。TEM観察には収差補正走査/透過電子顕微鏡(JEM-ARM200F)を用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
図1で示した引張試験後の破断面において水素の影響によって形成された擬へき開破面が観察された。その破面からサンプリングしTEM観察を行った結果が図2である。破面には破壊後に形成されたと考えられる酸化物層が存在しており、灰色の領域がAl母相、白い塊状の物体が析出物である。特定の方位から析出物を観察すると棒状もしくは球状に観察されるが、破面直下に棒状・球状とも異なる形態の析出物が観察されており、これらは元の母相との方位関係が崩れているためだと考えられる。また破面直下では破面から500nm離れた領域と比較して多数のナノボイドが観察されており(図3)、これらナノボイドが破面形成に寄与している可能性もあり、今後詳細な観察を行っていく予定である。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
図1 引張試験後の破断面.擬へき開破面(点線)
図2 破面直下のHAADF像.歪な形態の白色の析出物が観察される.
図2 破面直下のHAADF像.矢印で示した多数のナノボイドが観察される.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 平山恭介,土井実春,戸田裕之,藤原比呂,清水一行 ”Al-Zn-Mg合金の水素脆化メカニズムの透過型電子顕微鏡観察による実験的解析” 日本金属学会2023年春期(第172回)講演大会(東京)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件