【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU0032
利用課題名 / Title
InP系コアシェル型ナノ結晶の励起子素過程に及ぼす界面ポテンシャルの影響
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions
キーワード / Keywords
電子顕微鏡/Electron microscopy,ナノ粒子/ Nanoparticles
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
江口 大地
所属名 / Affiliation
関西学院大学理学研究科化学専攻
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
前野 宏志
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
半導体ナノ結晶 (NCs) とは、光励起後に生成する励起子を微小空間に閉じ込め、量子サイズ効果が発現する物質群のことである。量子サイズ効果のために、NCsは粒径に応じた電子構造を有している。コアシェル半導体ナノ結晶 (c/s NCs) とは、コアとなる半導体ナノ結晶から異種半導体がエピタキシャル成長したナノ結晶のことであり、その物性はエピタキシャル成長させる半導体に支配される。このナノ結晶では、半導体間のバンド構造により、光励起後に生じる励起子が空間的に局在するType I構造、電子と正孔が空間的に分離するType II構造があり、前者はLED、後者は太陽電池への応用が期待されている。これまで、異種半導体界面でのポテンシャル障壁は、c/s NCsの励起子の振る舞いに影響を与えることがCdSe系コアシェルNCsでは報告されているが [1]、InP系c/s NCsでは未解明な点が残されている。本研究では、InP NCsをコアとし、コアとポテンシャル障壁が異なる種々c/s NCsを合成し、ポテンシャル障壁が及ぼす励起子素過程の影響を明らかにすることが目的である。
実験 / Experimental
ホットインジェクション法によりコアとなるInP NCsを合成し [2]、そこに対してシェルをエピタキシャル成長させた。合成したNCsの構造解析は、透過型電子顕微鏡、粉末X線回折、顕微ラマン分光法、定常光の吸収と発光スペクトルにより行った。励起子素過程の解析はフェムト秒過渡吸収分光測定により行った。シェルが合金化しているZnSexS1-xはコア界面からシェル表面にかけて組成が連続的に変化し、コアとの界面近傍ではSeの割合が高く、シェル表面にかけてSの割合が高くなっている。このZnSexS1-xシェル内部でのカルコゲナイド (SeやS) の空間分布を明らかにすべく、広電圧超高感度原子分解能電子顕微鏡 (JEM-ARM200CF) でEDS分析を行った。
結果と考察 / Results and Discussion
定常光の吸収と発光スペクトルより、InPコアに比べて、シェルを形成させると励起子吸収と極大発光波長の長波長シフトが観測された。これは、コアに閉じ込められた電子や正孔の波動関数がシェル側に染み出したためである。また、発光量子収率も上昇しており、コア表面の欠陥を抑制し、シェルがエピタキシャル成長したことが分かった。シェルがZnSexS1-xであるc/s NCsでは、シェル形成過程で励起子吸収や極大発光波長が一度短波長側にシフトし、その後長波長側にシフトしている。これは、シェル内部で合金化が進行していることを示唆している。JEM-ARM200FにてEDS分析を行った結果、コア界面付近ではSeの割合が高く、シェル表面付近ではSの割合が高いことが分かった (Figure)。フェムト秒過渡吸収分光測定の結果、シェルがZnSexS1-xであるc/s NCsではシェルがZnSであるNCsに比べてオージェ再結合の時定数が10倍程度伸びていることが分かり、InP系c/s NCsにおいても界面のポテンシャル障壁が励起子素過程に影響を与えることが分かった。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Figure. (a) HAADF-STEM image and (b) EDS line scanning profiles of InP/ZnSexS1-x/ZnS NCs
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
本研究の一部は、文部科学省マテリアル先端リサーチ事業課題 (課題番号JPMXP1222KU0032) として九州大学の支援を受けて実施された。
[1] Wu,
K.; Lim, J.; Klimov, V. I., Superposition Principle in Auger Recombination of
Charged and Neutral Multicarrier States in Semiconductor Quantum Dots. ACS Nano 2017, 11 (8), 8437-8447.
[2] Jo,
J.-H.; Jo, D.-Y.; Lee, S.-H.; Yoon, S.-Y.; Lim, H.-B.; Lee, B.-J.; Do, Y. R.;
Yang, H., InP-Based Quantum Dots Having an InP Core, Composition-Gradient ZnSeS
Inner Shell, and ZnS Outer Shell with Sharp, Bright Emissivity, and Blue
Absorptivity for Display Devices. ACS
Appl. Nano Mater. 2020, 3 (2), 1972-1980.
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 稲田一輝, 江口大地, 玉井尚登, "InP系コアシェル量子ドットにおける励起子素過程の界面ポテンシャル依存性" 第16回分子科学討論会 (横浜), 2022年9月19日~22日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件