【公開日:2023.08.01】【最終更新日:2023.05.26】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
22KU0031
利用課題名 / Title
フェライト系耐熱鋼の析出物観察
利用した実施機関 / Support Institute
九州大学 / Kyushu Univ.
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)計測・分析/Advanced Characterization(副 / Sub)-
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials(副 / Sub)その他/Others
キーワード / Keywords
鉄鋼材料/ Steel materials,透過型電子顕微鏡/ Transmission electron microscopy,走査型透過電子顕微鏡/ Scanning transmission electron microscopy,,電子顕微鏡/Electron microscopy
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
大阿見 祥子
所属名 / Affiliation
コベルコ溶接テクノ株式会社
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
岡部俊明(コベルコ溶接テクノ株式会社),小山田宏美(株式会社神戸製鋼所),高内英亮(株式会社神戸製鋼所)
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
工藤昌輝
利用形態 / Support Type
(主 / Main)技術補助/Technical Assistance(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
KU-002:収差補正走査/透過電子顕微鏡
KU-009:ハイコントラスト補助電子顕微鏡
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
フェライト系耐熱鋼は、オーステナイト系耐熱鋼と比較して熱膨張係数が小さいことや、V、Nbの添加などによって優れたクリープ破断強度を有するという特徴がある。
本研究では、クリープ性能が異なる2種のフェライト系耐熱鋼のサブマージアーク溶接金属A、Bについて、クリープ性能に影響を及ぼすとされている微細な析出物に着目し、TEMを用いて観察した。
実験 / Experimental
溶接金属A、Bはともに2.25Cr-1Mo-V鋼であるが、溶接時の熱履歴に違いがあり、溶接金属Aの方がクリープ性能は良好である。いずれの溶接金属においても、溶接後に705 ℃で32時間の溶接後熱処理を行い、その後、TEM観察用の抽出レプリカ試料を採取した。析出物の観察には、収差補正走査/透過電子顕微鏡JEM-ARM200Fを用いた。
結果と考察 / Results and Discussion
溶接金属A、Bの粒界析出物の観察結果を、Fig.1に示す。溶接金属A、Bに共通して、大角粒界と思われる箇所には円相当径が約200
nmの粗大な析出物と、約20nmの微細な析出物が存在していた。XEDS結果によると、粗大析出物はCr、微細析出物はVが主体であった。本供試材における析出相を確認するために、熱力学計算ソフト(Thermo-Calc、データベース:TCFE7)にて計算した結果を、Fig.2に示す。Fig.2より、先述の粗大析出物はCr23C6、微細析出物は(Mo,V)Cもしくは(Mo,V)2Cであると考えられる。微細析出物の同定には、追加調査が必要である。
次に、粒内析出物の観察結果をFig.3に示す。粒内には、アスペクト比が異なる、円形と線形の析出物が認められた。XEDS結果によると、いずれもVとMoが7:3の割合である析出物であり、粒界析出物と同様に、(Mo,V)Cもしくは(Mo,V)2Cであると推察される。円形析出物の円相当径は約20nmであり、線形析出物の長さは約28nmであった。VCは板状であるとされており(1)、線形析出物は板状のVCの厚みを観察していると考えられる。
溶接金属A、Bはクリープ性能に有意差が見られるにも関わらず、析出物のサイズおよび組成はほぼ同じであった。クリープ破断は、高温長時間、応力が加えられた状態となることで、析出物の粗大化、転位組織の回復により徐々に基底クリープ強度に変化していく過程で生じると考えられている。転位運動の抑制効果がある微細析出物が多いほどクリープ性能が向上することが予想され、本供試材は析出物の数密度などに違いがあることが示唆される。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 粒界析出物の観察結果 (a)溶接金属AのBF-TEM像および(b) XEDS結果
Fig.1 粒界析出物の観察結果 (c)溶接金属BのBF-TEM像および(d)XEDS結果
Fig.2 熱力学計算ソフトによる析出相の平衡状態計算結果
Fig.3 粒内析出物の観察結果 (a)溶接金属AのBF-TEM像および(b) XEDS結果
Fig.3 粒内析出物の観察結果 (c)溶接金属BのBF-TEM像および(d) XEDS結果
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
(1) S. Yamazaki and H. K. D. H. Bhadeshia : Mater. Sci. Technol., p.1335(2003).
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件