利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.31】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS5043

利用課題名 / Title

単結晶モデル光触媒のX線光電子分光による表面組成分析

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

内部利用(ARIM事業参画者以外)/Internal Use (by non ARIM members)

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials

キーワード / Keywords

ナノ計測, 表面分析, 半導体光触媒, 水素製造


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

大西 洋

所属名 / Affiliation

分子科学研究所 特別研究部門(クロアポ 大西G)

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

松井 恭平

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

伊木 志成子

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-213:X線光電子分光


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)微粒子は、アルミニウムカチオン(Al3+)をドーピングすることで、純水を量子収率96%で全分解する高活性な半導体光触媒材料である。申請者らはSrTiO3単結晶の(110),(111),(100)結晶基板にAl3+をドーピングして水分解光触媒モデルを構築し、表面反応のメカニズム解明を進めている。原子間力顕微鏡(AFM)による表面形状観察によって、ドーピングしていないSrTiO3(110)結晶を水中で紫外光照射すると結晶表面のエッチング(光腐食)が発生し、Al3+ドーピングによって光腐食が抑制されることを見いだした。AFMで観測した形状像は化学組成の情報をもたないので、エックス線光電子分光(設備ID:MS-213)によって光腐食後の表面組成を分析した。

実験 / Experimental

信光社から購入したSrTiO3(110)結晶(5 mm角)を大気中焼成し、塩酸でpH = 1に調整したFeCl3水溶液(濃度 10 mmol l-1)に浸漬して水銀キセノンランプ光を4時間照射して光腐食を発生させた。光照射によって深さ2 nm程度の溝が結晶面に生じたことをAFM計測で確認した。この結晶を水洗してScienta光電子分光装置に挿入し、単色化したAl Kaエックス線を励起源として光電子スペクトルを測定した。

結果と考察 / Results and Discussion

大気中で焼成したSrTiO3結晶は絶縁体である。光電子分光によって得られる結合エネルギーがチャージアップによってシフトすることを懸念したが、数eVのシフトにとどまったため、中和電子銃を用いることなくスペクトルを測定した。ワイドスキャンスペクトル(図1)にあらわれた元素はSr, Ti, O, Cのみであり、水溶液中のFe, ClがSrTiO3表面に堆積した兆候はみられなかった。SrTiO3結晶中で光励起された電子を溶液中に取り出して正孔を結晶中に残すことによってSrTiO3の光腐食を促進する酸化剤(犠牲試剤)として添加したFeCl3が、想定どおり結晶表面に堆積しないことを確認できた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. SrTiO3(110)結晶板をFeCl3水溶液(pH 1)中で水銀キセノンランプ光で4時間照射した後に測定したXPSワイドスキャンスペクトル.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

本施設利用は科学研究費基盤研究(A)人工光合成をめざす半導体光触媒:オペランド計測によるミリ秒反応化学の解明(22H00344)の支援をうけて実施した。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 松井恭平, 大西洋, "FeCl3水溶液中におけるSrTiO3光触媒基板の光腐食のAFM計測", 日本化学会第104春季年会, 令和6年3月20日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

印刷する
PAGE TOP
スマートフォン用ページで見る