【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.31】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23MS3001
利用課題名 / Title
がん細胞特異的結合分子探索効率を向上させるマイクロ流路デバイスの開発
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)加工・デバイスプロセス/Nanofabrication
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)その他/Others(副 / Sub)-
キーワード / Keywords
マイクロ流路, 細胞培養, 細胞均一分散
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
神永 真帆
所属名 / Affiliation
豊田工業高等専門学校機械工学科
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本研究では,マイクロ流路デバイスに細胞を均一に導入する手法の開発に取り組んでいる.マイクロ流路デバイスはサンプル消費量と,生物実験に必要な労力の大幅な低減を実現する可能性を秘めている.しかし,流路のスケールが小さいために細胞の均一な導入ができず,実験の効率や再現性が低減するという課題がある.そこで,新たな細胞均一導入手法を開発し,高効率かつ再現性の高いマイクロ流路デバイス開発への貢献を目指している.今年度は,三角形や菱形など,様々な形状の鋳型を新たに製作し,実験を行った.小さなMPAや角のあるMPAはPDMSが鋳型から剝がれにくくなってしまったため,デバイスの製作が困難であった.このような,形状によるデバイス製作の難易度やバルーンの膨らみ方,細胞分散に違いが見られたことから,細胞均一分散に適していないピラーがあるということが分かった.
実験 / Experimental
マイクロ流路デバイスは,フォトリソグラフィによって製作した鋳型を,PDMS(Polydimethylsiloxane,SILPOTTM 184W/C, The Dow Chemical Company)で型取り,流路層とバルーン層,薄膜の3部品を接合することで製作した.フォトリソグラフィによる鋳型作製までを分子科学研究所装置開発室で行い,そこで製作した鋳型を豊田工業高等専門学校に持ち帰り,デバイス製作および実験を行った. 実験では,バルーンを加圧した状態でデバイスに細胞懸濁液を導入し,細胞の分散が可能であるかを調査した.さらに,バルーンの圧力を大気圧に戻し,水流により細胞を回収した.実験に使用するMPAとバルーンの幅は,それぞれ1500 µm,900 µmとし,細胞は凝集が起こりやすいU-87MG細胞を使用した. 初めに,デバイスを精製水に沈め,-0.0 8MPaに減圧して脱気した.次に,37 ℃の細胞培養液を流路内に導入し,洗浄と気泡の除去を行った.バルーンはエアコンプレッサ,エアレギュレータ,電磁弁を用いて0.2 MPaの空圧を印加した.バルーンが膨らんだ状態で,シリンジポンプを用いて流量10 µL/min細胞懸濁液を流路に導入した.
結果と考察 / Results and Discussion
Figure 1より,丸型MPAでは3.65 % ~7.29 % と流路を占める細胞の割合に差はあるものの割合の大小が偏っておらず,範囲0~200 µm から範囲1800~2000 µm まで満遍なく細胞が分散している.また,Figure 2において細胞がMPAを通過した後で流路全体に均一に分散していることからも細胞均一分散が良好に行えたといえる.一方で,Figure 3より,三角形MPAでは細胞が範囲1000 µm ~2000 µm にかけて集中していることが分かる.また,Figure 4より,バルーンによって細胞が流路の端へ偏って流れてしまっていることから,細胞分散が均一に行えていないといえる. 三角形MPAを持つデバイスでは細胞を均一に分散させることができなかった.三角形MPAは丸型MPAより流路を占めるMPAの面積が小さく, バルーンの広がる面積が広くなる.したがって,バルーンが過度に膨らみ 細胞の通過できる隙間が狭くなったと考える. また,三角形などの角のあるピラーを持つMPAや小さすぎるピラーを持つMPAは硬化したPDMSを鋳型から剥離する際にピラーが折れてしまった可能性が高い.MPAが欠損してしまうことで,上述したようにバルーンの広がる面積が広く,バルーンが過度に膨らんでしまうため,細胞を均一に分散させることができないと考えられる.
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Figure1.Experimental results of round micropillar array device
Figure 2.Cell flow in a round micropillar array device
Figure 3.Experimental results of triangular micropillar array device
Figure 4.Cell flow in a triangular micropillar array device
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 津田篤志,津曲香奈,丹羽慶次郎,神永真帆, 「マイクロ流の内におけるロスの少ない細胞均一分散構造の開発」,ロボティクス・メカトロニクス講演会2023, 2A1-E20 (2023)
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件