利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.24】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS1082

利用課題名 / Title

二酸化炭素還元を指向した銅錯体の合成と構造解析

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion

キーワード / Keywords

二酸化炭素還元,脱炭素,触媒,金属錯体,X線回折/ X-ray diffraction,資源代替技術/ Resource alternative technology,資源循環技術/ Resource circulation technology


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

永田 央

所属名 / Affiliation

名城大学理工学部

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

岡野芳則

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-205:単結晶X線回折(CCD-1)
MS-206:単結晶X線回折(CCD-2)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

本研究では、二酸化炭素を還元して有機化合物を得るため、その触媒となる金属錯体を合成し、構造・反応性について追求するものである。前年度後期の施設利用で、ピリジン系多座配位子を持つ銅錯体について興味深い挙動が見られたため、今年度も継続して研究を進めている。

実験 / Experimental

【所属機関で実施】(1) 2,2’-ビピリジンの6-位、6’-位にそれぞれピリジルチオ基を結合した配位子(BPySBPy)を用いて、銅(I), 銅(II)錯体をそれぞれ合成した。銅(I)錯体はテトラキスアセトニトリル銅(I)塩、銅(II)は過塩素酸銅(II)を用いた。(2) N上にアルキル基を持つジピコリルアミン誘導体を合成し、塩化銅(II)・過塩素酸銅(II)の1:1混合物と反応させて、塩化物イオンが1つ配位した錯体の過塩素酸塩を合成した。(3) これらの錯体の単結晶を蒸気拡散法で得た。【支援機関で実施】 分子科学研究所機器センターの Rigaku MERCURY CCD-1/CCD-2 装置を用いて、-100℃で単結晶X線構造解析測定を行った。X線は 50 mV/100 mA の MoKα線を用い、CCDの露光は10〜15秒とした。解析にはCrystalStructure ソフトウェアおよび SHELX ソフトウェアを用いた。

結果と考察 / Results and Discussion

(1) BPySBPyと過塩素酸銅(II)から得た錯体は2023年度も合成・構造解析を試みたが、良質のデータが得られなかった。今回は、結晶作成時にテトラフルオロホウ酸ナトリウムを共存させて単結晶を作成したところ、結晶性が改善できた。ただし、結晶の対アニオンはテトラフルオロホウ酸ではなく過塩素酸イオンであり、単位格子も2023年度に得たものと同一であったため、同一組成・同一構造であることがわかった。R値は7.9%であり、あまり良いデータとは言えないが、これ以上の改善は難しいと判断し、この構造で論文発表を準備している。一方、BPySBPy とテトラキスアセトニトリル銅(I)塩から得た錯体は、R値4.9%と良好な結果が得られた。これらの2つの錯体の構造を比較した(図1)。どちらの錯体も歪んだ四面体構造を持っており、硫黄を含む6員環キレートの立体配座が銅の配位構造に強く影響を与えていることが示唆される。 (2) N-アルキルジピコリルアミン(アルキル=t-ブチル、i-プロピル、n-プロピル)の銅(II)1塩化物錯体・過塩素酸塩は、塩化物イオンが1個配位した平面4配位構造で、アキシャル位に過塩素酸イオンが弱く配位していることがわかった(図2(a))。また、2個の塩化物イオンが配位した5配位の錯体は、t-ブチル基を持つものについては2023年度に構造決定できていたが、今年度は残りの2つのアルキル基のものについて構造決定できた(図2(b))。これらの構造は、所属機関で実施した溶液中の電気化学挙動ともよい一致が見られた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1.BPySBPy銅錯体の構造。(a)銅(I)錯体、(b)銅(II)錯体。



図2.N-i-プロピルジピコリルアミン銅(II)錯体の構造。(a)1塩化物錯体の過塩素酸塩、(b)2塩化物錯体。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

装置利用にあたりご指導・ご協力いただいた、分子科学研究所の岡野芳則氏および機器センターの職員各位に感謝いたします。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. Yumiko Kitamura and Toshi Nagata, "Synthesis of Copper Complexes of Dipicolylamines with Various Degrees of Steric Hindrance and Their Electrochemical Behaviors," the 104th CSJ Annual Meeting, March 20, 2024.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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