【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.24】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23MS1049
利用課題名 / Title
遷移金属で置換したゼオライト粒子の磁気特性の解明
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed(副 / Sub)次世代ナノスケールマテリアル/Next-generation nanoscale materials
キーワード / Keywords
ゼオライト, 遷移金属, イオン交換, 磁場配向,センサ/ Sensor,ナノ多孔体/ Nanoporuous material
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)
松田 元秀
所属名 / Affiliation
熊本大学大学院先端科学研究部
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
志田 賢二
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
藤原 基靖,宮島 瑞樹,伊木 志成子
利用形態 / Support Type
(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
本採択課題は高度なガス分離膜や高感度化学センサーへの応用を目的としたゼオライト配向膜の作製に関する研究である。我々の研究室では、結晶の磁気異方性という物理的性質を利用したゼオライトの磁場配向プロセスを開発している。通常、ゼオライトの磁性は極めて低い。これまでに希土類イオンをイオン交換により導入したL型ゼオライトについて磁気特性を調査したところ、磁気的相転移が観察されず、常磁性であることが明らかとなった。 またその希土類を導入したゼオライトの懸濁液を磁場中でスリップキャストすることによって配向性を持つゼオライト膜を得ることに成功している(参考文献1)。本申請課題では、これまでと異なるゼオライト種を用い、さらにイオン交換する金属イオンの濃度やイオン交換条件を変えながら作製したゼオライト粒子の磁気特性を調査し、その低磁場配向挙動について検討した。
実験 / Experimental
(自機関で実施の実験)
本検討ではゼオライトとしてCHA型ゼオライト粉末、ZSM-5型ゼオライト粉末を用いた。イオン交換する金属イオンとしては遷移金属イオン(Co2+)、希土類金属イオン(Ho3+)を用いた。金属イオン交換ゼオライトは各金属イオン含有水溶液にゼオライト粉末を加え、室温~200℃、24時間反応することで作製した。その後、固液分離、洗浄、乾燥を行うことでイオン交換粉末を得た。得られた粉末を超純水に分散させ、分級処理により懸濁液を得た。この懸濁液をφ10のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)基板上に400 µL滴下し、ネオジム磁石を用いた磁場中でスリップキャストを行うことで成形体を作製した。このとき、磁場はスリップキャスト方向に対して垂直または水平に印加した。イオン交換率の検討にはイオンクロマトグラフィーを用い、試料の結晶性および配向性はX線回折(XRD)を用いて評価した。
(支援機関で実施の実験)
作製した金属イオン交換ゼオライトの磁気特性は、分子科学研究所機器センター超電導量子干渉計(SQUID:Quantum Design MPMS-XL7)を用いて評価した。
結果と考察 / Results and Discussion
作製したイオン交換ゼオライトに対するイオンクロマトグラフより、イオン交換率は約30%であった。また粉末X線回折よりイオン交換後もCHA型、ZSM-5型それぞれの骨格構造を維持されていることを確認した。SQUID分析よりCo2+およびHo3+を導入したCHA型ゼオライト、ZSM-5型ゼオライトについて磁性を示すことが確認された。また磁化の温度依存性を調べたところ、磁気的な相転移を示す変化が観察されなかったことから、常磁性体であることがわかった。実験例として磁化が確認されたHo3+導入CHA型ゼオライト(Ho-CHA)の懸濁液を調製し、ネオジム磁石を用いた磁場中スリップキャストにより成形体を作製した。磁場中で作製した成形体および出発粉末のXRDパターンを図1に示す。磁場を印加しながら作製された成形体と粉末のXRDパターンと比較すると、磁場の印加方向によっても大きく異なることがわかる。磁場中で作製された成形体のXRDパターンに注目するとHo-CHA型ゼオライトは<110>の結晶軸が磁場印加の方向に沿って配列するような磁場配向挙動を示すことがわかった。本申請課題による検討で、L型ゼオライト以外のゼオライト種においても構造内に磁性を示す金属イオンを導入する事で低磁場配向が可能であることが明らかになった。またその他の検討として、イオン交換を行う際の反応温度や金属イオン濃度を変化させると磁化率が変化する事を確認している。今後は導入する金属イオンの種類やイオン交換率をさらに検討し、固体NMR等を用いスピンエレクトロニクスの観点より、その磁化率と磁場配向性の関係を明らかにしたいと考えている。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
Fig.1 XRD patterns of (a) Ho-CHA powder and powder-compacted films prepared with a 0.9 T magnetic field applied (b) parallel and (c) perpendicular to slip casting direction of suspensions.
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)
・参考文献(1)
T. Tabata et al.,Dalton Transactions 51, (2022)9601-9605.
・謝辞
本申請課題における分析機器の利用に際しては、分子科学研究所機器センター 藤原 基靖主任技術員、宮島 瑞樹技術員、伊木 志成子特任専門員のご支援を賜りました。深く感謝いたします。
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 金川隼也、池田皓希、志田賢二、永井杏奈、松田元秀“イオン交換を用いたCHA型ゼオライトの低磁場配向”日本セラミックス協会2024年年会,令和6年3月15日
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件