【公開日：2024.07.25】【最終更新日：2024.06.24】
課題データ / Project Data
課題番号 / Project Issue Number
23MS1037
利用課題名 / Title
溶液中で自発的に積層する有機色素の合成とその積層様式の解明
利用した実施機関 / Support Institute
自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS
機関外・機関内の利用 / External or Internal Use
外部利用/External Use
技術領域 / Technology Area
【横断技術領域 / Cross-Technology Area】（主 / Main）物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis（副 / Sub）計測・分析/Advanced Characterization
【重要技術領域 / Important Technology Area】（主 / Main）革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル/Materials enabling innovative energy conversion（副 / Sub）高度なデバイス機能の発現を可能とするマテリアル/Materials allowing high-level device functions to be performed
キーワード / Keywords
自発的積層, 有機色素, 積層様式,太陽電池/ Solar cell,X線回折/ X-ray diffraction
利用者と利用形態 / User and Support Type
利用者名（課題申請者）/ User Name (Project Applicant)
植田 一正
所属名 / Affiliation
静岡大学学術院工学領域
共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
岡野 芳則
利用形態 / Support Type
（主 / Main）機器利用/Equipment Utilization（副 / Sub）-
利用した主な設備 / Equipment Used in This Project
報告書データ / Report
概要（目的・用途・実施内容）/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)
溶液中で自発的に積層する有機色素とその比較化合物を合成し、分子配列と希薄溶液中の吸収スペクトルの相関を考察した。目的化合物と比較化合物の希薄溶液中の吸収スペクトルの測定より、両化合物とも可視光領域にπ共役部位に特徴的な吸収を持つことを確認した。一方、近赤外光領域では、目的化合物のみに弱い吸収が観測された。可視光領域の吸収と同程度の近赤外光領域の吸収の発現には、π共役部位の積層数を増やす必要があることが示唆された。
実験 / Experimental
溶液中で自発的に積層する有機色素とその比較化合物の合成は申請者の所属する静岡大学工学部で行った。それらの分子配列の解明は分子科学研究所機器センターの「単結晶X線回折装置 微小結晶Rigaku HyPix-AFC」を用いて行った。目的化合物とその比較化合物の希薄溶液中の吸収スペクトルの測定は静岡大学共同利用機器センターの「UV-Vis分光光度計 JASCO V-670」を用いて行った。
結果と考察 / Results and Discussion
自発的に積層する有機色素は、2つのπ共役部位がπ電子雲の厚みだけ離れて連結された構造を有する。この色素は、連結部位からπ共役部位を拡張することにより合成した。1枚のπ共役部位が連結部位と連結した構造の色素も、比較化合物として目的化合物と同様に連結部位からπ共役部位を拡張することにより合成した。
これらの単結晶X線構造解析を試みたところ、比較化合物の分子配列が明らかになった。比較化合物は一次元カラム構造を形成しており、カラム内では、反転対称性を保ちながら積層していることが明らかとなった。この結果より、目的化合物でも反転対称性を保ちながら積層していると推測できる。
希薄溶液の吸収スペクトルの測定から、次のことが明らかになった。比較化合物では、π共役部位に特徴的な可視光領域の大きな吸光度の極大吸収が観測されたが、近赤外光領域には、極大吸収はほとんど観測されなかった。一方、目的化合物でも、比較化合物と同様のπ共役部位に特徴的な可視光領域の大きな吸光度の極大吸収が観測され、さらに、小さな吸光度ながらも、近赤外光領域に極大吸収が観測された。近赤外領域の極大吸収の吸光度を可視光領域の吸収と同程度にするためには、π共役部位の積層数を増やす必要があることが示唆された。
今回、溶液中で自発的に積層する有機色素の合成を行い、比較化合物の分子配列からその積層様式を推測し、近赤外光領域の吸収と分子配列の相関を検討した。得られた結果より、今回実現したπ共役部位の積層だけでは、近赤外光領域に大きな吸収を実現することが難しいことが明らかになった。今後、π共役部位の積層数が増大する分子設計を行い、その分子の合成を展開する。
図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項（参考文献・謝辞等） / Remarks(References and Acknowledgements)
成果発表・成果利用 / Publication and Patents
論文・プロシーディング（DOIのあるもの） / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
- 「2,5-ジ(1,3-ジチオール-2-イリデン)-1,3-ジチオラン-4-チオン誘導体の固体中での分子配列とその 光物性」植田他、日本化学会第104春季年会(2024)、2024年3月18日。
特許 / Patents
特許出願件数 / Number of Patent Applications：0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents：0件