利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.10】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS1029

利用課題名 / Title

アドバンスドESR法による植物性食品による環境計測

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions(副 / Sub)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies

キーワード / Keywords

植物性食品, 緑茶, Electron Spin Transient Nutation


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

古川 貢

所属名 / Affiliation

新潟大学研究推進機構

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

佐藤栞,沼倉聖冬葉

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-214:電子スピン共鳴(E680)
MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-216:電子スピン共鳴(E500)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

植物性食品における品種・産地偽装は大きな問題であり,この問題を防ぐために品種識別・産地判別が重要な技術である.本課題では,植物性食品における,品種識別・産地判別を同時にかつ手軽に行える方法論を分子科学的観点から解明・確立し,高品質な植物性食品を安定供給できる環境を整備することが目的である.現在までに,植物性食品のESR測定研究として,cw X-band ESR測定によりMn(II),Fe(III),フリーラジカルに帰属された信号が観測されているが,その観測された種の起源などの詳細については明らかにされていない.そこで,pHの異なる茶葉粉末抽出液を試料として,cw-ESRおよびパルスESRによるElectron Spin Transient Nutation(ESTN)測定を行い,茶葉抽出液中に含有されるMnの電子状態解明を試みた.

実験 / Experimental

 X-band cw-ESRスペクトル,Q-band ESTNスペクトルは,ESR分光計Bruker E500,EMX,および,Bruker E680を使用した.国立環境研究所の環境標準試料の茶葉を用い,国際規格(ISO3103)に従い茶葉抽出液を抽出した.茶葉抽出液は,石英管に入れたのちに凍結脱気して封管した.

結果と考察 / Results and Discussion

得られた茶葉抽出液のcw-ESR(図1)およびESTNスペクトル(図2(a))を示した.cw-ESRスペクトルを見ると,pH1におけるMnに由来する信号強度が増大していることが見て取れる.この結果は,pH低下に従い,Mn抽出量が増大することが明らかになった.
pH7におけるESTNスペクトルを見ると,Mn(II),Mn(IV),H核とのESEEM(Electron Spin Echo Envelop Modulation)信号が観測された.pH1においても得られた信号は同様であり,Mn核はH核と相互作用しており,カテキン類にキレートされた状態と矛盾の無い結果が得られた.Mn(Ⅱ)(S = 5/2)の信号はwn / w1 = 3付近に,Mn(Ⅳ) (S = 3/2)の信号はwn / w1 = 2付近に観測された.同様にpH1.1,3.0でも測定し,wn / w1 = 3.5におけるESTNスペクトルを図2(b)に示した.Mn(Ⅱ)の割合はpH3.0,7.2よりもpH1.1で多いことが見て取れる.つまり,Mn(Ⅳ)/Mn(Ⅱ)の比をpHにより制御できると考えられる.茶葉抽出液で得られたESRスペクトルは,金属イオンにキレートしたカテキンに帰属されると言われており,キレート能がpHに依存していることを示唆する結果を得た.

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1. 茶葉抽出液のESRスペクトル.



図2. 茶葉抽出液の(a)2次元ESTNスペクトル(pH7)と(b) wn / w1 = 3.5のESTNスペクトル.


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 藤田倖平,古川貢,“植物性食品における微量金属イオンのアドバンスドESR法による解析” ESRフォーラム研究会,令和5年7月15日.
  2. 沼倉聖冬葉,藤田倖平,古川貢,“植物性食品における高周波パルスESR研究” 電子スピンサイエンス学会年会,令和5年11月2日.
  3. 沼倉聖冬葉,古川貢,“ESRによる茶葉抽出液における微量金属のpH依存性研究” UGCE連携教育研究センター 第14回シンポジウム,令和6年3月12日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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