利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.14】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS1022

利用課題名 / Title

金属酵素モデル錯体の電子構造と磁性の研究

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)-

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)量子・電子制御により革新的な機能を発現するマテリアル/Materials using quantum and electronic control to perform innovative functions

キーワード / Keywords

鉄ポルフィリン, 高酸化状態, 反応性


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

藤井 浩

所属名 / Affiliation

奈良女子大学研究院自然科学系

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-228:紫外・可視・近赤外分光光度計
MS-233:高磁場NMR(600MHz溶液)
MS-237:高磁場NMR(600MHz溶液)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

生体内の金属酵素は、活性部位の金属イオンを利用して優れた反応を可能にしている。これは、これら酵素がそれぞれの機能に応じてさまざまな反応中間体をとるためと考えられている。これらの電子構造や磁性を分子レベルで解明すること、またそれらをどのように制御しているのかを解明することは、自然の仕組みを解明するだけでなく、新しい機能を持ったマテリアルの開発に欠かすことができない知見を与える。本課題では、分子科学研究所のESR装置を用いて、酵素反応中間体モデル錯体の電子構造を精密に解明することを行った。

実験 / Experimental

分子科学研究所機器センターにおいて金属酵素モデル錯体のEPR測定、NMR測定、X線構造解析を行った。ESRは、主にBruker EMX Plusを用いて測定した。ESRサンプルは、測定直前に分子科学研究所において調製した。液体ヘリウムを用いて、4KにおけるESRスペクトルを測定した。NMRは、JEOL-ECA-600とJEOL-ECZL-600を用いて測定を行った。サンプルの純度や濃度は、吸収スペクトルで確認した。

結果と考察 / Results and Discussion

高原子価オキソ錯体のプロトンによる不均化反応に関する研究をEPRを用いて行った。鉄オキソ錯体にプロトンを添加すると、鉄4価オキソポルフィリンラジカル錯体に由来する信号と鉄3価錯体に由来する信号を検出することができた。これは、鉄オキソ錯体がプロトン触媒により不均化反応を起こしていることを示す結果が得られた。次にマンガンオキソ錯体とプロトンとの反応を行った。プロトン添加後も出発物質と類似する位置に信号が観測された。この結果は、反応が起こっていないのか、あるいは新たな錯体へと変化したのかを今後別の分光法で研究する必要があると考える。また、シトクロムP450の活性部位のモデル錯体を合成した。合成した錯体から生成する高原子価オキソ錯体のEPR測定を行ったが、著しい信号が得られなかった。この結果も今後さらに検討する必要があると考える。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations
その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

EPR、NMR、分光光度計の測定のサポートをしていただいた藤原基靖氏、伊木志成子氏、上田 正氏、長尾春代氏に感謝いたします。
受賞等
第73回錯体化学討論会 優秀ポスター賞 上田 果穂 2023年11月11日 学生が行うポスター発表の中で特に優秀な発表に対して授与される。対象の研究は、本課題で測定を行った結果を一部含む。
【2022年度論文】
Yuri Katogi, Characterization and Reactivity of an Incredibly Reactive Intermediate in the Protonation Reaction of Dioxo-Manganese(V) Porphyrin with Acid, ACS Catalysis, 13, 4842-4852(2023).
Kanae Yanai, Electric field effect of positive and negative charges of substituents on electronic structure and reactivity of oxoiron(IV) porphyrin πcation radical complex, Journal of Inorganic Biochemistry, 244, 112208(2023).


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Kanae Yanai, Electric field effect of positive and negative charges of substituents on electronic structure and reactivity of oxoiron(IV) porphyrin π-cation radical complex, Journal of Inorganic Biochemistry, 244, 112208(2023).
    DOI: 10.1016/j.jinorgbio.2023.112208
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. マンガン5価モノオキソポルフィリン錯体の合成と反応性に関する研究 岡本 彩乃、本田 祐樹、藤井 浩 第73回錯体化学討論会、2023年9月26日、茨城大学(水戸) ポスター発表
  2. 鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体が触媒するスルフィドの酸化反応機構の研究 上田 果穂、本田 祐樹、藤井 浩 第73回錯体化学討論会、2023年9月26日、茨城大学(水戸) 口頭発表
  3. 鉄4価オキソポルフィリンπカチオンラジカル錯体が触媒するスルフィドの酸化反応機構の研究 上田 果穂、本田 祐樹、藤井 浩 第73回酸化反応討論会、2023年11月10日、名古屋大学(名古屋) ポスター発表
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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