利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.05.17】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS1021

利用課題名 / Title

ESRイメージングによる低エネルギーX線照射で生成するアラニンラジカル分布の測定

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

アラニンラジカル,軟X線照射,ラジカル分布


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

中川 清子

所属名 / Affiliation

東京都立産業技術研究センター 計測分析技術グループ

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes
ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes
利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-217:電子スピン共鳴(E580)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

 アラニンに放射線照射すると、安定ラジカルが生成することが知られており、ガンマ線や高エネルギーX線などの透過性の高い放射線の線量評価に利用されている。一方、軟X線やイオンビームは、物質への透過力が弱く、狭い領域にエネルギーを付与する(高LET)ため、ラジカル種も局所的に高密度で生成すると考えられる。2021~2022年度に、ARIM事業の協力研究を利用してパルスESR測定でスピン・スピン緩和時間を評価したところ、X線のエネルギーが低いほど、スピン・スピン緩和時間が短くなり、ラジカルが高濃度で生成する傾向にある事がわかった。2023年度は、ESRイメージングにより、X線のエネルギーや照射線量によって、ラジカルの分布がどのように変化するかを調べ、パルスESRやCW-ESRによる結果と比較検討し、X線のエネルギー付与とラジカル生成の関係を評価した。

実験 / Experimental

 アラニンペレット線量計(直径:5 mm, 高さ:3 mm, Far West Technology 製)に高エネルギー加速器研究開発機構のフォトンファクトリーで、単色X線を照射した。X線のエネルギーは、浸透深さとイメージングの距離分解能を考慮して、7, 5, 4 keVの三水準とした。また、各X線エネルギーに対し、線量による分布の変化を調べるため、360 Gyおよび1.8 kGyの二水準とした。また、4 keVのX線照射では、単位線量あたりのラジカル生成量に明確な線量依存性があることが分かっているため、720 Gy照射も加えた三水準とした。  照射した試料を分子研に持ち込み、磁場勾配:50 Gauss/cm, 距離分解能:250 µmの条件で測定を行った。得られた測定データから、イメージ画像を再構築する際に、イメージサイズをピクセルサイズの10倍に設定し、25 µm間隔で画像データを構築・評価した。

結果と考察 / Results and Discussion

 7 keVのX線を1.8 kGy照射した試料のイメージング画像は、図1のように得られた。太矢印が、X線の照射方向を示す。青色部分がラジカルの存在しない領域、緑色の境界が照射表面で、ラジカル濃度が高い赤色部分は、試料の内側にあることがわかる。試料表面からの深度に対するラジカル濃度分布(ピークを1.0で規格化)は図2のように得られ、照射X線のエネルギーや線量の違いによるラジカル濃度分布を可視化することに成功した。得られた結果はCW-ESRおよびパルスESRの結果をよく説明しており、論文に纏めることができた。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1 ESRイメージング画像



図2 X線侵入深度に対するラジカル濃度分布


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

 イメージング用ユニットは、名古屋大学・石川研究室所有であるため、分子研・名古屋大学との共同研究として、ESRイメージング装置を施設利用した。


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
  1. Seiko Nakagawa, High linear energy transfer (LET) nature of alanine radical yield by soft X-ray irradiations studied by electron spin resonance (ESR) applications, Radiation Physics and Chemistry, 214, 111304(2024).
    DOI: 10.1016/j.radphyschem.2023.111304
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 中川清子、他7名,“軟X線照射によるアラニンラジカル生成のX線エネルギーおよび線量依存性”第66回放射線化学討論会,令和5年9月28日.
  2. 中川清子、他7名,“軟X線照射で生成するアラニンラジカルのESRイメージング”第62回スピンサイエンス学会年会,令和5年11月2日.
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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