利用報告書 / User's Reports


【公開日:2024.07.25】【最終更新日:2024.06.03】

課題データ / Project Data

課題番号 / Project Issue Number

23MS1007

利用課題名 / Title

多周波EPR法を用いた光合成反応過程の解析

利用した実施機関 / Support Institute

自然科学研究機構 分子科学研究所 / IMS

機関外・機関内の利用 / External or Internal Use

外部利用/External Use

技術領域 / Technology Area

【横断技術領域 / Cross-Technology Area】(主 / Main)物質・材料合成プロセス/Molecule & Material Synthesis(副 / Sub)計測・分析/Advanced Characterization

【重要技術領域 / Important Technology Area】(主 / Main)マテリアルの高度循環のための技術/Advanced materials recycling technologies(副 / Sub)-

キーワード / Keywords

光化学系Ⅱ, 光合成, マンガンクラスター, EPR, ESEEM


利用者と利用形態 / User and Support Type

利用者名(課題申請者)/ User Name (Project Applicant)

三野 広幸

所属名 / Affiliation

東海国立大学機構名古屋大学大学院理学研究科

共同利用者氏名 / Names of Collaborators in Other Institutes Than Hub and Spoke Institutes

小崎慎也,中村直彦

ARIM実施機関支援担当者 / Names of Collaborators in The Hub and Spoke Institutes

藤原 基靖

利用形態 / Support Type

(主 / Main)機器利用/Equipment Utilization(副 / Sub)-


利用した主な設備 / Equipment Used in This Project

MS-214:電子スピン共鳴(E680)
MS-215:電子スピン共鳴(EMX)
MS-216:電子スピン共鳴(E500)


報告書データ / Report

概要(目的・用途・実施内容)/ Abstract (Aim, Use Applications and Contents)

マンガンクラスターで行われる光合成酸素発生は4光子、5つの中間状態(S0 からS4)の絡む反応である。マンガンクラスターには異性体が存在し、S2状態では主に2つの信号g =2 低スピン状態とg =4.1高スピン状態のEPR信号が検出される。g =4.1信号の情報は非常に少ない。これはg = 4.1信号に超微細構造が観測されず、パルス法による測定も難しいことによる。高スピン状態の解釈は酸素発生機構の解釈の重要な鍵である。2023年度研究では、2022度に引き続き、Q-bandパルスEPR法によりS = 5/2高スピン状態の信号(X-bandではg =4.1)を検出し解析した。 最近 S =7/2をもつ中間体が発見され、S2-S3 状態の中間遷移状態と考えられるが、この信号についてもQ-bandでの測定に成功し、研究を進めた。

実験 / Experimental

光化学系Ⅱタンパク質複合体はホウレンソウより抽出した。測定は分子科学研究所のBrukerE500およびBrukerE680, Bruker EMXを用いて極低温から室温にかけて測定を行った

結果と考察 / Results and Discussion

2023年度、パルスQ-bandによりS =5/2高スピン(X-bandではg=4.1)の測定に成功した。X-bandにおいてg =4.1に観測された信号はQ-bandでは主にg =3,10を中心とした信号として観測された。さらに単一の遷移ではなく多くの遷移に分解することができた。並行して行った量子化学計算との比較を行ったところ、S =5/2高スピン状態はclosed cubaneと呼ばれる構造であり、シアノバクテリアのX-線構造解析では見つかっていない構造であることがわかった。実験結果はJ.Phys.ChemB誌に受理された[1]。この実験結果は量子化学計算を用いた解析においても定量的によい一致を得ることができた[2]。最近、S =5/2高スピン状態とは全く異なるS=7/2をもつ高スピン状態の信号を発見している。S=5/2状態の生理学的役割が不明なのに対しS =7/2はS2中間状態からS3中間状態への遷移の中間状態と考えられる。S=7/2 状態についてもQ-bandパルスESR法において測定し成功しており、引き続き2024年度の研究課題として解析を行いたい。

図・表・数式 / Figures, Tables and Equations


図1:Q-band パルスEPR法でとらえたマンガンクラスター S = 5/2 (g=4 X-band) S2中間状態の(A) スピン格子緩和時間の温度変化と(B) Orbach過程plot.   ここで求められた励起状態をマンガンクラスターの量子化学計算での計算結果と比較しモデルの判別を行った[1]。


その他・特記事項(参考文献・謝辞等) / Remarks(References and Acknowledgements)

参考文献  [1] Kosaki,S., and Mino,H.,"Molecular Structure Related to an S = 5/2 High-Spin S2 State Manganese Cluster of Photosystem II Investigated by Q-Band Pulse EPR Spectroscopy" , J. Phys.Chem. B (2023) 127, 29, 6441–6448.
 [2] Saito,K.Nishii,S.,Asada,M., Mino,H. and Ishikita H. ”Insights into the protonation state and spin structure for the g=2 multiline EPR signal of the oxygen-evolving complex”PNAS nexus (2023) 2(8): pgad244.
 [3] 三野広幸, 小崎慎也,中島芳樹, 沈建仁,多周波EPRでとらえた酸素発生系高スピンS2状態の配位環境,日本植物生理学会年会, 東北大学, 2023年3月10-17日  [4]  小崎慎也,三野広幸,Q-band パルス電子常磁性共鳴(EPR)法による光化学系Ⅱ マンガンクラスターのS2 High Spin状態の構造の解明, 生物物理学会中部支部会, 名古屋大学, 2023年3月31日


成果発表・成果利用 / Publication and Patents

論文・プロシーディング(DOIのあるもの) / DOI (Publication and Proceedings)
口頭発表、ポスター発表および、その他の論文 / Oral Presentations etc.
  1. 小崎慎也,三野広幸,Q-band パルス電子常磁性共鳴(EPR)法による光化学系Ⅱ マンガンクラスターのS2 High Spin状態の構造, 第61回生物物理学会年会, 名古屋大学, 2023年11月14-16日
特許 / Patents

特許出願件数 / Number of Patent Applications:0件
特許登録件数 / Number of Registered Patents:0件

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